また後日の事です。祖父母が孫娘達の喧騒に気付いた頃、蛍さんの父は自分の娘が諸行無常や孤独について語ったという事を、自分の母に自慢げに話すのでした。はしかい(賢い)子だろうと目を細める息子に、
「まぁ、あんなに小さくて諸行無常をね…」
と、祖母は『この子はまぁ、何て親馬鹿になった事。』と、孤独は如何であれ『これは何かの間違いが起こっているに違いない。』等と彼女は判断すると、はいはいと、表面にこやかな笑顔を浮かべながらも、ジロジロと息子の顔を観察するのでした。まぁ、あの子をここへ呼んでおいでと息子に言い付けると、どれと、茜の件もあるし蛍にも言い分を聞こうじゃないかと彼女は考えるのでした。
「お祖母ちゃん、なあに?私に話しって。」
蛍さんは父に祖母の所へ行くように言われると早速にやって来ました。父は何やら笑顔で彼女に、「お祖母ちゃんがお前に話が有るそうだ。」と言ったのでした。加えて、「きっとご褒美がもらえるぞ。」と付け加えたものですから、蛍さんは何だろうと期待に胸を膨らませていました。思わず手が先に出てしまいます。
「ああ、うん…?」
祖母は蛍さんの広げた紅葉の様な掌を見て、何だろうと思いましたが、それはまた後で解明しようと、先に茜さんの件から話しを始めました。
「お前茜ちゃんとこの前遊んだ時ねぇ、」と彼女は始めました。皆が留守の時だよ。そう言われて、「ああ」と蛍さんは何日か前の事を思い出しました。
「茜ちゃんとまま事した時だね。」
と、蛍さんは答えます。『まま事か』と祖母は思います、「ああそうだよ、まま事した時だけどね、」ちょっと一呼吸おいて祖母は続けました。「お前手に何を持っていたんだい?。」「手に?、何も。」と蛍さんは答えます。『何も、か。』祖母は思いました。