「嫌ですよぅ、お父さん。」
まぁ、そんな事を言う人が、と、世の中には色んな人がいますからね、と、祖母はほんのりと微笑んで夫の妻への猜疑心を解くのでした。
『少なくとも、孫の前でそんな事を言うお馬鹿だと思っているのかしら。』
この私の事を、と、妻は少々夫の馬鹿さ加減に呆れていると、
「いや、お前さんはそんな馬鹿な女性じゃないね。」
失言、失言、悪かったと、妻の顔色を読んだ夫は言うのでした。そして確かに内心そうだなと夫は思い、では、どの嫁がそんな事をあの子に吹き込んだんだろうねと呟くと、怒った顔付きで考え出しました。
「あんたさん、あんたさん、嫁以外にも世間というものがありますよ。」
祖母は夫に注意を促すのでした。あの子は最近外遊びが多いですからね、どこぞの他人の家の姉さんにでも聞いたんでしょうよ。と、祖母は騒乱の元を家内から外へと追い出すのでした。
「上手いねぇ、この問題を外へ追い出すとは、」そう祖父は祖母に言うと、「私はこれを年端のいかない子供の前で言った嫁の方を家から追いだした方がいいと思うがねぇ。」と言って言葉を切るのでした。