Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(232)

2018-10-20 09:29:26 | 日記

 「お祖母ちゃん、私の事信じてくれるの?。」

蛍さんは驚いて思わずまじまじと祖母の顔を見上げました。祖母はああそうだよと言います。

「お前は何も持って無かったからね、家にもスルメは無かったんだ。」

 外から帰って来た時、お前はスルメどころか何も手に持って無かったよ。お祖母ちゃんは見てたからねと、祖母は真面目な顔をして蛍さんに話すのでした。

「茜もスルメなんか持って無かったんだろう。あの子も家に来る時、手に何も持って無かったよ。」

服にポケットはあったけど、スルメが入っていればすぐに分かったさ、臭いもしなかったしね。祖母は思い出すように蛍さんに話して聞かせました。祖母はきちんと孫たちの様子を把握していたのでした。それでと祖母は蛍さんに問い掛けました。

「まま事遊びをした時の事を詳しく話してごらん。」

 そこで蛍さんは話しだしました。あれこれと、茜さんが最初に始めたのだと、順を追って時間の流れ通りその通りに話して行きます。祖母には何故茜さんがスルメを話に持ち出したのかが不明なのでした。

「何で茜はスルメなんか言い出したんだろうねぇ。」

彼女は呟きました。その独り言を聞いた蛍さんは、お祖母ちゃんは何か分からなくて困っているのだと感じました。私も一緒に考えてあげようと思いました。スルメを言った時の茜さんの様子、その前に起こった出来事を思い出してみます。


土筆(231)

2018-10-20 09:18:42 | 日記

 多分蛍の言う通りなのだ、この子は手に何も持っていなかったのだろう。と祖母は結論を出しました。何しろ、その時家には何処にもスルメなど無かったのですから。祖母は知っていました。

 外から帰って来た時の蛍さんは手にスルメなど持ってい無かったのです。また、その時彼女が来ていた服にもスカートにもポケットはついていませんでした。その時の孫の状態や家の状態を、祖母はよく把握して覚えていたのです。孫が何か持っていたとしても隠しようはありませんでした。元々孫に聞かなくても彼女は真実はそうだろうと思っていましたが、蛍さんに念のため確認してから、孫娘達の事の真相を究明しようと思ったのです。

 「何処からスルメが来たのかしら?」

考える内に、ついぽろっと一人事を漏らしてしまった祖母です。蛍さんはハッとすると、又スルメの件かと、思わず嫌な顔を祖母に向けました。祖母が何か言い出す前にと思い彼女は口を切りました。

「お祖母ちゃん、スルメなんかホーちゃん持って無いから。」

祖母はああと、ふと我に返ると、スルメの言葉を口にしてしまった事を悟り後悔しました。

 彼女は問題になっている物の名前を言わずに真相を究明しようとしていたのでした。口から出てしまったものは仕様が無い。彼女は思い直すと、孫に言いました。

「それは分かっているよ。お前は何も手に持ってい無かったからね。」

祖母のこの言葉に蛍さんはとても驚きました。何しろ、自分の言う事を信じてくれない父に、スルメが如何、持っていただろう、等あれこれ散々言われて嫌な思いをし、大泣きした後の蛍さんです。祖母もその事で自分を責める為に話しをし出したのだろうと彼女は思っていました。