そうか、祖父母が頼んだのかと思うと、蛍さんはやはり祖父母は自分の祖父母なんだなぁと嬉しく思います。彼女の内にはほっとした安堵感が広がり、祖父母に対しての穏やかな信頼感が増すのでした。
唯、この時の蛍さんは茜さんと遊びたいという気持ちにはなれませんでした。
「大丈夫、1人でも平気だから。」
と蛍さんは茜さんに言うと、帰ってもいいわよと言い出すのでした。しかし茜さんにとっても頼んで行ったのは自分の祖父母です。勝手に帰ると言う訳には行きません。
「駄目よ、ホーちゃんまだ小さいんだから、1人で家にいちゃいけないわ。」
と、一緒にお留守番しようねと言うのでした。それから茜さんは言いました。ホーちゃん、お家のこんな所で1人で座って何してたの?きょろきょろと茜さんが見渡す場所には、遊び道具など一切ないのでした。ポツンと部屋の中央に近い所で蛍さんはしゃがみ込んでいたのです。問われた蛍さんは答えました。
「孤独を噛みしめていたのよ。」
孤独?茜さんには聞いた事のない言葉でした。何しろ彼女には兄が2人いて、母にしても何時も家にいて一緒です。隣の家は祖父母の家であり、外に出ればすぐに親戚、遊び相手も近隣に多くいました。彼女は今まで1人になったことなど無いのでした。当然、孤独など感じた事が無いのでした。そんな言葉を言う人間も彼女の側にはかつて誰もいなかったのです。