「尿前の関」⇒「臍(へそ)」、などということを長谷川さんが言っているわけ
ではないのですが、まずこの文を読んで下さい。
≪まず、『おくのほそ道』 全体が太平洋側と日本海側の二つに分かれて
いる。境は東北山中の尿前の関です。≫
そして、≪このうち太平洋側はみちのくの入口である白河の関までとみち
のくに分かれます。 (略) 一方、日本海側は越後の市振の関までとその先
に分かれます。白河、尿前、市振という昔の関で四つに分かれる。≫
① 江戸ー白河の関(太平洋側) ② 白河ー尿前の関(→内陸)
③ 尿前ー市振の関(内陸→) ④ 市振ー大垣(日本海側)
昔の関が実際の旅のうえでも節目になっていると同時に「おくのほそ道」
の文学としての構成上、重要な節目になっているという指摘です。
「kaeruのおくのほそ道」旅程では、尿前の関を後にしたところで、太平
洋側から日本海側へ、難所 ・山刀伐峠(なたぎりとうげ)を越えなければ
なりません。多分アプリ上のkaeruが歩いている場所は、その辺ではない
でしょうか。その峠を越えれば尾花沢に入ることができます。
「おくのほそ道」ではその尾花沢で裕福な紅花商人宅に十泊することに
なります。ここで まゆはきを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花
を詠んでいます。
「まゆはき=眉掃き」は化粧道具、まゆはきの形を思わせるように紅の
花が咲いている、の句意。下のTV画面は紅花とまゆはき(白)です。
長谷川さんの本に戻ります。
≪ここで詠んだ句を平泉、尿前の関の句に並べると、
五月雨の降りのこしてや光堂
蚤虱馬の尿する枕もと
まゆはきを俤にして紅粉の花
蚤虱の句があるからこそ五月雨の光堂はほのかに輝き、紅の花はいっそう
華やぐ。≫
芭蕉の俳句の世界が立体的に浮き上がってくる感じがします。