「家」 @ 鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

英国車の誘惑(6)

2008-03-05 18:42:34 | クルマ

英国車の誘惑(3)で、私の好きな英国車についての特徴を挙げた。それらはいずれも動力性能やボディ剛性などカタログ的スペックに関するものではなく、あくまで感覚的なものだった。しかしそうした特徴を、現代の英国車が今後も持ち続けるべきなのだろうか。それら特徴は、私を含む多くの英国車ファンの単なる懐古趣味に過ぎないのではないだろうか。

一昨日フォルクスワーゲンがポルシェの完全な子会社となることが決まった。この場合はたまたまドイツのメーカーによる同国メーカーの買収だが、自動車産業のグローバルな再編はこれからもどんどん進む。そんな中で英国ブランドが、英国というひとつの国の過去のクルマの特徴を温存し、それを自社ブランドのクルマのスタイルに強烈に織り込み続けることが出来るだろうか。

話は変わるがトヨタはクルマづくりがすごく上手な会社である。クルマの各部分について日本人ドライバーの好みの最大公約数みたいなものを良くまとめて、その集合体ともいえるクルマを作り出す。だから出来上がったクルマは世界的にもよく売れるが、そのクルマに強烈な個性を多く見ることは出来ない。

話がまた変わる。ごく最近モデルを一新して展示会を盛んにやっている英国ブランドのクルマが、ジャガーXFである。このクルマの画像を初めて見た時に私が思ったことは「トヨタのレクサス最新モデルにそっくり!」であった。結局英国車ブランドも「売れていくら」のものであり、市場を無視出来ず、グローバルな流れからも離れられない。ジャガーはランド・ローバーと同じくフォードから間もなくインドのタタ・グループに売却される。そのことで、どうも気楽になったらしく、イアン・カラム(ジャガー社のデザイン部門のヘッド)は先月英国フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューに答え、過去にデトロイトから「英国的レトロ趣味とも言うべきデザインの押し付けがあった」と認めてしまっている。つまり英国人を代表するクルマ・デザイナーも、多くの人が「クラシカルで心地よい英国的趣味」と形容するようなクルマを、必ずしも作ろうとしているわけではないのだ。そうであるとすれば、英国ブランドのクルマ達の将来は、私のような人間にとってますます暗い。

デザイン的問題だけではない。すでに書いたロンドン市長ケン・リヴィングストンのそれのように、C(排気ガス)への嫌悪感が今後ますます高まるとすれば、英国ブランドの代表格、スポーティーなアストン・マーチンも、華麗な4WDのレンジ・ローバーも、乗って楽しい大きなガソリン車はほとんど死に絶えてしまう。

背が高く重量が嵩む4WDを嫌悪する傾向はすでに高まっている。そんな4WDに反対するTシャツも英米では売られ始めている。こうしたクルマも都心からは何年かかけて消えて行く運命にあるのかもしれない。前々回挙げた毛皮のコートが消えたという例と同様だ。今の禁煙の傾向と同じだとも言える。それぞれの時代に支配的なモノの考え方は、ファッションと同様に急に変化し、ものすごいスピードで走り出すことがある。

先日BBCのTVニュースでも、ロンドンの厳しい排気ガス規制の話題にからめ、ポルシェ・カイエンやレンジ・ローバーがロンドン市街を走る映像が繰り返し流されていた。画像はCマークのついたロンドン中心部の道路である。Congestion Charge(排ガス税)を徴収されるゾーン標示である(排ガスが同様に深刻な23区内でも、こうしたものはまだ見かけない)。こんなところでずっとレンジ・ローバーに乗り続けるための、経済的負担と周囲の視線を受けることの心理的負担は重い。

日本でも、背の高い4WDを23区内で乗りまわすことが「恥ずかしい」とみなされる日がいきなり来るかもしれないのである。ハイブリッドやディーゼル、あるいはエタノール。これらの増勢は必至である。加えてエンジンや車体のダウンサイジングも進むだろう。私のようなクルマ好きにとっては、なんともつまらなくなって行く感じがするのだが、一方で致し方ないことだとも思っている。
コメント (2)
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