ロンドン市長ケン・リヴィングストンがやたらとがんばっている。ロンドンは排気ガス税を市内を走るクルマに課しているが、その税額が年内にアップされそうだ。リヴィングストン市長は今年再選されそうだが、もし再選されれば10月には税額がアップするだろう。最高額はなんと1日1台25ポンド。週に5日ロンドン市内にクルマを乗り入れる人なら、年に6000ポンドは支払わねばならないことになる。なんと、法貨で120~130万円だ。
尤も25ポンドを払わされることになるのは、排気ガスがひどいRoad Tax Band G(225g/km超)のクルマのドライバーである。ちょっと古い3000cc以上のクルマなら、この領域に入るだろう。壊滅的影響を受けそうな自動車メーカーは怒っている。いかにも環境に悪そうなクルマばかりつくるポルシェは強く抗議している。間もなくフォードから身売りされる英国ブランドのレンジ・ローバーは「死にそうだ」とため息をつく。いずれも大排気量のクルマを生産しているブランドだ。
意外なことにBMWはその変化に乗じているかに見える。BMW1シリーズのディーゼル・エンジンは先ほどのRoad Tax BandでAあるいはBに入る。排気ガスが120g/km以下であり、税の支払いを免除されるのだ。トヨタのプリウスもそうだ。
リヴィングストン市長のような人を、ほんの一部の急進的環境保護派と侮ってはいけない。おそらく今後世界はその方向に動くであろう。外見が大きく、大排気量のクルマを運転することを「教養がない」「恥ずかしい」と見る時代がいきなり来るような気がする。80年代後半に先進国で、お金持ちの象徴だった毛皮のコートが急速に消えたのと同様だ。
ハイブリッド化も進むだろうし、ディーゼル・エンジンの割合が増えるだろう。日本はハイブリッド・エンジンの開発では遅れていないが、ディーゼル・エンジンの開発では、長い間居眠り状態であったと言える。燃焼効率が良くCO2の排出は少ないが、有害物質を多く出すこのエンジンの改善をサボったのである。ディーゼル・エンジンでは、欧州車の方がかなり進んでいる。