6月12日に放送(今月3日に再放送)された、NHKスペシャル「あなたの寿命は延ばせる 発見!長寿遺伝子」。
『週刊新潮』の今週号に、この番組に関する特集記事が掲載された。
題して、
「NHKが絶賛で売り切れ!不老長寿のサプリメントは本物か」
この中で、私もコメントしています。
記事はまず番組内容を紹介・・・・
2000年に、「サーチュイン遺伝子」と呼ばれる長寿遺伝子が発見された。
ただ、これを稼働させるには、厳しいカロリー制限が必要。
そこで、手軽に長寿遺伝子を働かせる物質として、赤ブドウの皮などから抽出される「レスベラトロール」が注目を集める。
しかし、「レスベラトロール」は、薬として売り出すには至っていない。
その代わり、この成分を含んだサプリが市販されており、アメリカでは大人気。
番組の中では、アメリカ人女性が、サプリを愛用しているからカロリー制限などしない、と語っていた。
で、6月に、このNスペが放送されてから、日本国内でもレスベラトロールのサプリがバカ売れしているというのだ。
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しかし、記事の後半には、長寿医学の専門家たちの厳しいコメントが並んでいる。
「残念ながらレスベラトロールを摂取して哺乳動物の寿命が延びたという実験データを私は見たことがありません」
「まだまだ動物実験レベル」
「レスベラトロールは女性ホルモンのような作用があるとされ、子宮ガンや乳ガンの方が服用すると病状を悪化させる可能性もある」
「アメリカではレスベラトロールのブームはもう沈静化している。理由はヒトへの効果がはっきりしないから」等々。
NHKのコメントは、「レスベラトロールを含む錠剤は、あくまでも医薬品ではなく、サプリメントであって、効果が証明されていないことは番組の中できちんとお伝えしています」(広報局)
そして、私のコメントとまとめの一文・・・・
だが、上智大学の碓井広義教授(メディア論)が言う。
「老化防止は皆が気になること。この番組はレスベラトロールのサプリでOKという印象しか残らないのが問題ですよ」
確かに、今から思えば青汁のCMみたいな「NHKスペシャル」だったのである。
(週刊新潮 2011.07.21号)
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番組の終盤、CGのヴァーチャル・スタジオに司会の萩本欽一さんがいて、その足元から空中へと坂道が伸びている。
“長寿への道”らしい。
この坂道を、長寿遺伝子を働かせるためにカロリー制限をしている人たちが、実に辛そうに登っていく。
そこに、エスカレーターが現れる。
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みんな、こちらでスイスイと天上へ。
辛そうだった「カロリー制限組」も、次々と乗り換えていく。
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“レスベラトロールの薬”を使った場合は、楽をして長寿へと至る、ということを表現しているらしい。
しかし、その直前まで、例のアメリカ人女性が「カロリー制限なんてしたら食べる楽しみがなくなってしまうわ」とか、「私はレスベラトロール(のサプリ)を信じて飲み続ける生き方を選ぶことにしたのよ」といった話をするのを聞いていたのだ。
視聴者は、“レスベラトロールのサプリ”でエスカレーター(楽して長寿)、と思ってしまうだろう。
そう誤解されても仕方ないように作られているからだ。
医療とか、健康とか、命とかにかかわる内容のNスペとしては、やはり“ゆるい出来”の1本だったと言わざるを得ないわけです。