碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「和田家の男たち」ホームドラマで鋭い“メディア批評”

2021年12月02日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

テレ朝「和田家の男たち」

ホームドラマに織り込まれた

鋭い“メディア批評”



金曜ナイトドラマ「和田家の男たち」(テレビ朝日系)が、ぐっと面白くなってきた。

和田寛(段田安則)は新聞社の元社長。息子の秀平(佐々木蔵之介)は報道番組プロデューサー。そして秀平とは血のつながらない父子である優(相葉雅紀)はネットニュースの記者をしている。

新聞、テレビ、ネットと、和田家の男たちのキャリアはメディアの歴史そのものだ。おのおのの考え方も視点も異なるが、最近まで、この設定が十分に生かされていなかった。しかし、先週の第6話で物語が深化したのだ。

食品グループ代表の山路有美(かとうかず子)が失踪し、メディアは若い夫に疑惑の目を向ける。秀平も上司から、この件を取り上げろと迫られるが、独自ネタがない限り自分の番組ではやらないと宣言。こんなテレビマンがいてほしいものだ。

一方、優は記事の見出しを改ざんされたために大炎上。「ビューさえ稼げば何でもあり」の姿勢に疑問を抱く。

その後、町中華の取材中に出会ったのが、女店主の妹である山路有美だ。彼女は、体調を崩して倒れた姉を助け、夫を気遣う優に心を開く。指名された優が書いたインタビュー記事は結果的に大スクープとなった。「取材者への信頼」が生んだ金星だ。

相葉たちの好演を支える脚本は大石静、田中眞一ら。ホームドラマに織り込んだ“メディア批評”が、見る側を刺激する。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.12.01)