2021.12.25
神田沙也加さん交際相手、
前山剛久への誹謗中傷
「叩きのエンタメ化」懸念
聖子の紅白出場で荒れるのか
女優・神田沙也加さん(享年35)が18日、宿泊していた札幌市内のホテルで急逝したショックがいまだ残る中、沙也加さんと真剣交際していたことを明かした俳優・前山剛久(30)に対するインスタグラムやツイッターなどでの非難、誹謗中傷の投稿が相次いだ。
こうしたネット上での過剰反応は何故、沸き起こって来て、どう対処するべきなのか。また、記事の配信時点で、母の松田聖子がNHK「紅白歌合戦」に出場する可能性が高まっているとの報道もある。
出場した場合に懸念されることを、元上智大学文学部新聞学科教授でメディア文化評論家の碓井広義氏に聞いた。【AERAdot.編集部・上田耕司】
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ツイッターを見てみると、前山さんに対し今後を応援する声も多い一方で、誹謗中傷も数多く混じり、渾然一体化している。
沙也加さんの遺作となったミュージカル「マイ・フェア・レディ」で共演していた前山さん自身のインスタグラムには誹謗中傷のコメントが相次ぎ、コメント欄を閉鎖した。
何故、こうした投稿が後を絶たないのか。その心理を碓井氏は、こうひも解く。
「ネットでは、誰かを叩くことが、娯楽もしくは遊びになっているんですね。だから、いつも標的となる人物を探している。そして、エンタメ化していく。誹謗中傷することが爽快なわけです」
どこかで聞いたり、見たり、読んだりしたことをベースにし、叩いていく。
「前山さんを悪者に設定し、叩くことで、自分は正義の人、強い人のように思えるわけです。悪者をやっつけている自分に対する自己評価が爆上がりする。何でもできるという神のごとくの全能感と日常生活ではなかなか得られない快感を味わえるという心理があります」
■芸能人が標的になりやすいワケ
悪者に設定するのは実は誰でもいいが、何もないのに選んでも叩く者同士で共有化できない。自分の”叩き”がネットで拡散しない。ゆえに、必然的に芸能人や有名人、事件の当事者に標的が向かいやすくなる。
「匿名での書き込みというシステムに乗っかって、安全地帯にいながら、溜飲を下げているつもりになる。一種のゲーム感覚かもしれません」
だが、ネットでの書き込みであっても「報道と同じだ」と、碓井氏は指摘し、こう続ける。
「デジタルの時代は、横並びで等価。メディアと書き込みの上下関係がなくなってきています。だから、報道と同じような責任が生じてもおかしくない。実際、そのような裁判所の判決も下っています。自分が発した言葉が自分にブーメランのように返って来る。場合によっては、法的責任も引き受けなければならなくなる。匿名であっても、技術的に誰が書き込んだかを特定できるようにもなってきました。でも、(書き込む人は)ネットに書き込んだくらいで自分が罰せられるとも思っていない。その辺の認識の甘さというのがありますね」
神田沙也加さんと前山さんのケースでは、どうなのか。
「沙也加さんのホテルの部屋には手紙が残されていたと報じられていますが、その文面は沙也加さんと前山さんとの関係において、沙也加さんの側から書かれたものです。それをもって、前山さんを悪者にしていくというのは違うのではないかと思います。恋愛というのは本当に当事者同士にしかわからないもので、たとえ親や親友でもわからないものですから」
■「批判」と「非難」と「誹謗中傷」
小室眞子さんと夫の小室圭さんの10月26日の結婚記者会見でも「誹謗中傷」という言葉が出て、議論が巻き起こった。
眞子さんは「一方的な憶測が流れるたびに、誤った情報がなぜか間違いのない事実であるかのように取り上げられ、いわれのない物語となって広がっていくことに恐怖心を覚えるとともに、辛く悲しい思いをいたしました」と語った。
夫の小室圭さんは「誹謗中傷が続いたことにより、眞子さんが心身に不調をきたしたことを、とても悲しく思います」と、「誹謗中傷」という言葉を使った。
碓井氏は「批判」と「非難」と「誹謗中傷」は、それぞれ意味が違うと言う。
「『批判』は字のごとく、対象を批評して判定すること。『非難』は誰かがしでかした失敗や間違いをベースに、責めたり、咎めたりすること。『批判』も『非難』も一応の根拠があります。ところが『誹謗中傷』は事実に基づかない、根拠のないことであっても、傷つけたくて書き込んでいるので、当事者が読んだら死にたくなるかもしれない。そんなことを言いたい放題いうのは罪深過ぎる」
■聖子「紅白出場」で荒れる可能性
沙也加さんの家族や知人にまで誹謗中傷は広がっている。母の松田聖子は、執筆時点では大晦日のNHK「紅白歌合戦」への出場の可否が明らかにされていない。NHKサイドは「聖子さんサイドのお気持ちを最大限に尊重していく方針」としているが、出場する可能性が高いとも報じられる。民放関係者はこう見る。
「今年の紅白は、出場歌手が弱いと言われています。50回連続で出場していた五木ひろしさんや桑田佳祐さんも出ないし、高齢者が楽しめそうにない。松田聖子さんがもし、出場するとしたら、それは目玉になりますよ。だからNHKとしても、何とか出演してもらいたいというのが本音では」
もし、出場するとしたら何の曲を歌うのか、ということもネット上では話題になっている。
「聖子さんは、沙也加さんが亡くなった当日18日夜のクリスマスディナーショーをやり切っているんですよ。娘への思いを胸に歌うのでしょうね。生の聖子さんを見たいというムードが高まっています。ただし、瞬間視聴率は意外や、聖子さん以外の出場歌手が高いということはあるかもしれません。そんなことを含めて紅白の話題が加速する。生の聖子さんを見たいと、紅白ばかりではなく、来年以降の聖子さんのディナーショーなども客で一杯になると思いますよ」(前出・民放関係者)
前出の碓井氏はこう話す。
「聖子さんが紅白に出たら出たで、彼女の一挙手一投足をやり玉に挙げ、叩く人たちが現れるでしょう。ネットが荒れる可能性は含まれています。とはいえ、ネット社会は罪深いですが、今さらネットのない時代にも戻れません」
結局、生き残った者が責められるのは世の常なのか。その上で、こう警鐘を鳴らす。
「投稿を書いて、ポーンとキーボードを押す前にちょっと一拍置こうよと言いたい。あなたが投げつけようとしている言葉を、そのままあなたが受けたとしたらどんな気持ちになるか、ということは考えてもらいたいですね」
(AERAdot. 2021.12.24)
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