碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「最近のドラマ」について解説

2012年08月10日 | メディアでのコメント・論評

先日、「週刊現代」から取材を受け、<最近のドラマ>について解説
しました。

その一部は、発売中の最新号(8月18・25日号)、その特集記事で
読むことができます。

タイトルは、週現スペシャル『おごれるフジは久しからず。リスクをとったテレ朝が勝った。 テレビ視聴率「大逆転」の舞台裏』


ただ、せっかくなので(笑)、取材時に行った”解説全体”を、記録として残しておきます。


最近のドラマをめぐって

この7月にスタートした連続ドラマは総じて低調。「ロンドン五輪には敵わないから、お休みモードか?」と思いたくなるぐらい。平均視聴率が20%どころか15%を超えたドラマは1本もありません。

多部未華子や榮倉奈々らが主演女優に起用されていますが、このクラスにゴールデンの連ドラを背負わせるのはまだ厳しい。芸能界全体の問題でもありますが、かつての鈴木保奈美や山口智子のように一枚看板でドラマを支えられる主演女優がいなくなってしまいました。

そうなるとストーリーを練りに練り、誰が主演しても面白いような物語をつくらなければいけませんが、どのドラマもそうなっていない。ドラマは脚本が何より大事なのに、近年のドラマ制作者は口うるさい大家や実力者の起用を避けています。

何でも言うことを聞く若い脚本家のほうが組んでいて楽だし、便利ですから。大家はセリフ1つ変えさせてもらうにも大変ですが、若手なら自由に直せる。大家と論争になると、ときには負けてしまいますからね。

若手は「直せというなら仕方ない」とすぐ直し、制作者にはありがたい存在ですが、そこに作り手同士のせめぎ合いは生まれません。脚本づくりやドラマ制作がファーストフード化してしまった気がします。ドラマの不調は便利な脚本家を使い続けたツケなのではないでしょうか。

当たるドラマがなかなかないですから、無難な刑事ドラマがずらり並んでしまうのですが、大人の視聴に耐え得る質が保たれているのはテレ朝の「遺留捜査」 (主演・上川隆也)ぐらい。あとは子供向けです。刑事ドラマはしっかり制作しないと単なるドタバタ劇になりがちで、子供向けになってしまうんですよ。

7月スタートのドラマは作り手には申し訳ないけれど、番宣資料を読んだだけで見た気分になってしまう。底が割れている。ドアを開けたら、すぐ出口があったような気分です。

今、連ドラの争いで注目されているのはフジとTBSがぶつかる月曜午後9時台ですが、両作品ともあまあまり評価できません。視聴率も振るいません。まず向井理が主演するTBSの「サマーレスキュー」。山の診療所を舞台にした物語で、制作者たちは医療ドラマの新機軸と意気込んでいるのでしょう。実際、北アルプスにはモデルになったような山岳診療所もありますから。

しかしドラマ化してみると、同じ山で毎週、病人やケガ人が出るのはおかしい。こんなことが制作する前から分からなかったのでしょうか。しかも向井は敏腕外科医の設定ですが、診療所にはなんの設備もないのですから、腕の振るいようがない。象徴的だったのは第1話。夕方、大ケガをした人が診療所に運ばたのですが、向井が何をしたかというと、手を握りながら一晩中、名前を呼んであげていただけなんですよ。

結局、夜明けと同時にケガ人はヘリで大病院に搬送されました。そうするしかないですから。これを見て「毎週これで大丈夫なのか」と気が重くなりました。第1話にして後の展開が見えてしまった。ケガ人の部分の描き方も弱いから、見る側は感情移入できない。何も出来ない医師と素性がよく分からないケガ人を見せられるのですから、これでは視聴者が付きません。

フジの「ビューティフルレイン」にも驚きました。医師が、芦田愛菜ちゃんの父親である豊川悦司に「あなたは若年性アルツハイマー症だ」と告げる。この病気には前期から後期まであり、最後は目の前にいる相手が誰だか分からなくなると説明します。さらに有効なクスリはないと伝える。豊川は絶望のどん底に叩き落とされるのですが、実際のアルツハイマー症の治療現場で、こんな救いのない言い方なんてしませんよ。

ドラマの都合だけで、豊川親子は第1話から、これ以上ないような不幸を背負わされたのですが、実際の患者は60万人から70万人もいて、その数倍の家族がいる。表現や作り方が無神経すぎます。ドラマはフィクションとはいえ、何をやってもいいはずはありません。

「サマーレスキュー」にもつながる話ですが、制作者が鈍感になっています。「細部に神は宿る」ではありませんが、ドラマで大きな嘘をつく場合、細部はリアリズムを真剣に追い求めなくてはなりません。

「ビューティフルレイン」の場合、そもそも愛菜ちゃんには母親がいなくて、豊川も零細企業の工員で経済的に恵まれていない。最初から、かわいそうなんです。そんな親子が、これから回を追うごとに不幸になっていく。それを視聴者に見せていく神経が理解できません。ただ、やはり視聴者も共感しないようで、視聴率は平均で10%前後。視聴者が制作者の傲慢さを見抜いているんだと思います。

ドラマの制作者には志が要ります。動機付けなく、「視聴率を獲ろう」「話題作にしよう」ではうまくいく筈がありません。「ここで視聴者を泣かせよう」なんて不遜なことを考えないほうがいい。

大多亮氏はあれだけ場数を踏み、ヒット作を生んだのですから、ヒットの方程式のようなものを体得しているのかも知れません。ただ、後に続く若い人たちが安直に方程式だけ真似ようとするのは、視聴者を冒涜する行為で、共感は得られないでしょう。大多氏にも悩みや葛藤はあったはずです。それなのに後進が「この筋書きにこういう展開を組み込めば当たる」などと安易に考えるべきではありません。

ではドラマは今後どうするべきなのか。関西テレビが10月からの連ドラの演出に映画監督の是枝裕和氏を起用しますが、これも1つの方向でしょう。これまでは原則的に局内の人間が演出に当たりましたが、これからは違う血を入れれば刺激になると思います。

もう1つ。昨年テレビ東京で放送された連ドラ「鈴木先生」(主演長谷川博己)のような製作委員会方式の導入。連ドラではまだ少ない試みでした。映画のように出資者を集めて、製作委員会を立ち上げる。テレビ放送からDVD化、オンデマンドなど、2次利用、3次利用までを含むトータルで利益が出ることを目指す。それなら重いテーマやとんがった作品、なにより制作者が本当につくりたい連ドラがやれる可能性が広がります。収益は出資者で分ければよく、スポンサーの顔色をうかがう必要もない。小手先の視聴率にも走らずに済みます。

最近のテレビマンは、「もう昔のような視聴率は獲れない。ネットとゲームがあるんだから」と口にしますが、それは白旗を揚げる行為と同じで、それを言っては本当におしまいなんです。ネットの理由にするのは言い訳に過ぎません。「家政婦のミタ」が驚異的視聴率をマークした説明がつかない。まだテレビはお化け番組を生む余地があるんです。まだ可能性のすべてを展開しているとは思えません。

民放は約60年間、スポンサーからお金をいただき、タダで視聴者に番組を見てもらっていましたが、今の若い人はタダでもつまらない番組は見ません。ネットなどがあるんですから。逆に面白いコンテンツなら少しぐらいお金を払ってでも見てくれるんです。これが以前との大きな違いです。番組のオンデマンドも広がっていくでしょう。それを意識した番組づくりも必要になります。

「家政婦のミタ」は欠点もあるドラマでしたが、うまいアイディア商品でした。あれほどまでに当たったのは、ツイッターやフェイスブックなどSNSの影響があったからだと思います。「あれ見た?ちょっと面白いよ」という声がSNSで一気に広がっていった。最後のころには学生たちがSNSで「今夜はミタだから飲み会中止」などとやり取りしていた。あのドラマを見ることがイベント化していました。

次の展開が分からないゲームのようなドラマに、ゲーム慣れている若者がすんなり視聴者として参加した。最近の大学生は普段、連ドラなんて見ないんですよ。ただ「ミタ」の場合は次の展開を自分で予想し、その上でドラマを見ていた。参加型だったんです。




250万アクセスに、感謝です

2012年08月10日 | テレビ・ラジオ・メディア

この「碓井広義ブログ」のトータル閲覧数が、250万件に達しました。

お読み下さった皆さん、ありがとうございます。

昨年6月の100万、11月に150万、今年3月で200万、そして今日
250万。

ますます実感のない大きな数字ですが(笑)、例によって、びっくり
です。

今後も、これまで同様、テレビを中心としたメディアのこと、本、映画、大学等々、楽しみながら記していきますので、どうぞよろしく、お願い
いたします。


オリンピックのテレビ観戦

2012年08月09日 | 「東京新聞」に連載したコラム

東京新聞に連載しているコラム「言いたい放談」。

今回は、やはり寝不足でも見ている(笑)、オリンピック中継について書きました。


テレビ観戦の夏

私自身の記憶にある一番古いオリンピックの映像は、小学校四年生の時に見た昭和三九(一九六四)年の東京大会だ。三波春夫の「東京五輪音頭」は今でもソラで歌える。次のメキシコ大会はカラーテレビで見た。

それ以降のオリンピックは正確な順番も言えないが、それでも毎回テレビの前にいた。そして、今回のロンドンもデジタルテレビの大画面にくぎ付けだ。

とはいえ、二〇一二年の今、すでに私はオリンピックについてさまざまなことを知っている。それは単なるスポーツの祭典ではない。テレビをはじめとするメディアによって劇的に演出された“メディアスポーツ”である。マーケティング戦略が駆使された “世界最大のイベント”だ。

また、トップクラスの選手にもドーピングなど薬物に依存する者がいる。そして“平和の祭典”であるはずのオリンピック開催中も、世界各地の紛争や戦闘は止むことがない。

しかし、それらを承知の上でも、四年に一度という舞台に世界中から選手が集まり、全身で走り、投げ、跳び、泳ぎ、舞う姿は、見る者に何かを訴えるチカラをもっている。

「人はオリンピックに何を見ようとするのか。たぶん、私はスポーツにおける<偉大な瞬間>に遭遇したいと望んでいるのだ」(『冠』)という沢木耕太郎さんの感慨は、私たちの胸の内にもある。
     
(東京新聞 2012.08.08)

『報道ステーション』制作会社をめぐる特集記事

2012年08月08日 | テレビ・ラジオ・メディア

今日発売された「週刊新潮」(8月16・23日夏季特大号)の特集記事に驚いた。

見出しに、<「テレビ朝日」看板番組の裏の顔 『報道ステーション』は闇金融に手を染めた>とあるではないか。

おいおい、ヘタをすれば番組が吹っ飛ぶぞ(笑)。

で、読んでみると、番組自体が制作費でヤミ金融を行っているわけじゃなく(当たり前か)、「古舘プロジェクト」社長の佐藤孝さんに関する話でした。

「古舘プロジェクト」は、古舘伊知郎さんのマネジメント会社であり、『報道ステーション』の制作にも携わっている会社だ。

私が知った頃の「古舘プロジェクト」は、古舘さんが数人の構成作家さんの面倒をみている、といった感じの小さな事務所だったけど、記事を読むと、今や「70人を抱える大手制作会社」になっているんですねえ。

『報道ステーション』の売上げだけで、年間20億円だそうだ(笑)。

記事は、佐藤さんが、数千万円単位で(時には億単位。すごいなあ)他人にお金を貸している(もちろん利子あり)行為は、「ヤミ金融」に当たるのではないか、というものでした。


で、古舘プロジェクトは、さっそく自社のWEBサイトに、以下のような告知を掲載しています・・・・


8月8日発売の週刊新潮(8/16・23)の記事について

(株)古舘プロジェクト

8月8日発売の週刊新潮において、「報道ステーションは闇金融に手を染めた」との表題で、 当社代表取締役佐藤孝に関する記事が掲載されております。

しかしながら、そもそも、上記記事の内容は、「報道ステーション」と何ら関係ない 佐藤個人の事柄であるだけでなく、憶測を交えたものとなっており、実際、佐藤には、 記事のような異性関係がないことはもちろん、闇金融を行ったという事実も、 また、佐藤が暴力団と関係した事実もありません。

このように「報道ステーション」と何ら関係のない、しかも事実に反する記事を記載した新潮社に対しては、 同じ報道に関わる者、表現の自由を享受する表現者として極めて遺憾、残念であると感じるとともに、 当社としましては、今後も、客観的資料に基づいた活動を旨とし、 報道に関わる者としての職責を果たすべく、努力を重ねる所存でございます。



・・・・今年の4~6月期、テレビ朝日は1959年の開局以来初めてとなる視聴率「4冠」を達成した。

これには、安定した数字の「報道ステーション」も大いに貢献している。

さてさて、”看板番組”に関連するこの記事。

テレ朝としては、今後、何らかの動きがあるのか、ないのか。

無視、かな?(笑)


それにしても、なぜ今、このタイミングで、この内容の記事が出てきたのか。

そのこと自体が、とても興味深いです。

TBS「黒の女教師」の榮倉奈々先生

2012年08月08日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載中の番組時評「TV見るべきものは!!」

今週は、TBSの連ドラ「黒の女教師」を取り上げました。
                                  

榮倉奈々 美脚を封印するパンツ姿が残念

千代田線・赤坂駅からTBS局舎へと向かうエスカレーター脇に、「黒の女教師」の巨大ポスターが貼ってある。主演の榮倉奈々は黒のミニスカート。軽く組んだ長い美脚が実に見事だ。

ただし、残念ながらこのドラマの中の榮倉はパンツ姿が多い。毎回、ラストの見せ場で披露するのが「愚か者!」の“決めゼリフ”と、制裁の“回し蹴り”だからだ。

昼間は「普通の先生」だが、実は学校内の悪や問題を解決する「スーパー教師」。しかも課外授業の名目で金銭も要求する。

榮倉はこのえたいの知れない女教師を熱演している。だが、さすがに「女王の教室」(日テレ)の天海祐希のような迫力はない。そこで小林聡美や市川実日子など同僚とのチームプレーとした。このあたりの設定も悪くない。

しかし、ひとつ不満がある。ターゲットの悪を暴いていく過程と、最後の“お裁き”の場面で警察の力を借りることだ。これはちょっと安易ではないか。

榮倉たちの“課外授業”自体がかなり非合法なものだ。それでも結果的に生徒たちを救うことになるから許されている。そんなダークヒロインが肝心なところで警察など頼るべきではない。

このドラマには「鈴木先生」(テレ東)の土屋太鳳、映画「愛と誠」の大野いとなど、若手実力派が生徒役で参加している。美脚の榮倉先生も負けてはいられないのだ。

(日刊ゲンダイ 2012.08.07)

サントリーの「エスプレッソーダ」にトライ

2012年08月08日 | 日々雑感

コンビニで、新商品を見つけると、必ず手にとってみる。

食品の場合は、とりあえず購入して試してみます。

もちろん、当たりもあれば、逆もあって(笑)。


今日のトライは、サントリー「エスプレッソーダ」

「“スカッとコク深い”働く大人の新・スパークリングブレイク」がブランドコンセプト。

「エスプレッソのようなコクや苦みと、炭酸の刺激を両立したことが大きな特徴」だそうです。

ネーミング通り、エスプレッソとソーダの組み合わせ。

さあ、当たりだったでしょうか、それとも(笑)。

フジテレビ「女子マラソン中継とCM」について解説

2012年08月07日 | メディアでのコメント・論評

J-CASTニュースの取材を受け、フジテレビの「女子マラソン中継とCM」について解説しました。


「CMの合間に競技やってるみたい」
フジの女子マラソン中継に視聴者イライラ

フジテレビが放送したロンドン五輪の女子マラソンの中継で、コマーシャル(CM)が多すぎるのではないかと疑問の声がわきあがった。

レースの前半ではCMが入ったため、日本人選手が一時先頭に立とうと仕掛けた瞬間が生で見られないこともあった。「CMの合間にマラソンをやっているみたいだ」――。インターネット上ではこう揶揄する声が上がっている。

日本人選手の「見せ場」がCMで見られず

女子のマラソン競技は、日本時間2012年8月5日の19時にスタートした。最初にCMが入ったのは19時8分ごろで、以後5~10分ごとに約2分間のCMが流れるというパターン続く。19時46分過ぎのCMあけの映像では、先頭集団のランナーたちが既に給水を終えた後で、実際の給水の場面をすぐに録画で流して補っていた。

その2分後、またもCMに切り替わる。中継に戻ると、それまで集団の中で埋もれ気味だった日本人選手のひとり、尾崎好美選手がグループの先頭に立っていた。このレースで尾崎選手は19位に終わっており、見せ場らしい見せ場はこの時ぐらいしかなかった。視聴者は、強豪ランナーひしめく中で尾崎選手がどのように仕掛けたのか、その瞬間を見逃すこととなってしまった。

レースも後半に入った20時36分ごろ、ケニアの3選手とエチオピアの2選手を追走していた中国の選手が徐々に遅れ出したタイミングでCMに入った。中継に戻るとキャスターが、「5人を追いかける後ろの選手の姿が、ほとんど見えなくなり始めています」と告げた。CM中に、後続がかなり引き離されてしまったのだ。カメラがとらえるのも5人のランナーだけに変わっていた。

頻繁に流れていたCMは、21時2分~4分を最後にピタリと止まった。レース終盤の息詰まる展開が途切れないように、という配慮からか、放送が終了する21時51分ごろまでは一切入らなかったのだ。2時間51分の放送時間の中で、CMに費やされたのは約28分、割合にして16%を占めた。最初の2時間だけをとれば、22%程度に跳ね上がる。

番組を見ていた人は、視聴中から「CMが多すぎる」との苦情をツイッターやインターネット掲示板に書き込んでいた。「肝心の、刻一刻と移り変わる状況がさっぱりわからない」という。CMのないNHKで中継してほしいとの声や、番組に業を煮やして途中でラジオに移行した人もいた。

莫大な放映権料を回収するため「細切れ販売」?

日本民間放送連盟の「放送基準」では、18時から23時までの間の連続した3時間半を指す「プライムタイム」の標準的なCM時間量が規定されているが、「スポーツ番組および特別行事番組については各放送局の定めるところによる」となっている。五輪のマラソンはこれに該当し、フジテレビ独自の「基準」でCMを流して差支えないようだ。

ロンドン五輪はフジテレビ以外の民放各局でも放映されているが、CMはどのような扱いだろうか。例えば8月3日、TBSがバレーボール女子の日本―ロシア戦を中継した。第1セット開始から約20分間はCMなし。日本が16対13とリードを奪ってタイムアウトに入ると初めて1分程度のCMが流れた。それから約14分後、ロシアが逆転で第1セットをものにしてから次のCMといった具合だ。同日、テレビ東京で放映された卓球女子団体1回戦では、日米両チームが入場してから福原愛選手が第1ゲームで勝利するまでの約12分間、やはりCMはなかった。

上智大学文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)はJ-CASTニュースの取材に、「フジテレビのマラソン中継でのCMは、明らかに多かったと思います」と話す。その裏には放映権料の問題があるようだ。

碓井教授によると、NHKと民放各社による放送機構「ジャパンコンソーシアム」が国際オリンピック委員会(IOC)から、2010年のバンクーバー冬季五輪とロンドン五輪の放映権を「セット」で購入したが、支払った額は約325億円に上るという。高騰の一途をたどる金額は近年問題視されているが、テレビ局としては「買わないわけにはいきません」(碓井教授)。

巨額の費用を回収するため、テレビ局はスポンサーにCMを売ることになる。だが不況が続く国内で、気前よく大金を出せる企業は多くない。そこで、できるだけ多くのスポンサーを探して「細切れ販売」したのではないかと碓井教授は考える。スポンサーが増えれば、番組中に流れるCM数もそれに比例する。

マラソンはスタートからゴールまで切れ目がなく、競技中にタイミングを見計らってCMを入れざるをえない。クライマックスをノンストップで見せようと、前半に集中的に流したのかもしれないが、今大会不振だった日本人選手が何とか健闘していたのが、その前半だったことも「災い」した。

とは言え「フジはほかにも五輪番組はあるはず。CMを入れにくいマラソンであれだけ流すのは、バランスを欠いていたのではないでしょうか」と碓井教授は疑問を呈する。


実際に今回のマラソン中継は、フジテレビで放送している別のスポーツ特番よりCMが多かったのだろうか。事情を確かめるためJ-CASTニュースはフジテレビ広報に質問を送付したころ、FAXで回答が寄せられた。

それによると、「CM量は通常のスポーツ中継と比べ特段多いということはございません」との説明だ。視聴者から問い合わせや苦情は寄せられたかとの問いには、「応援メッセージなど頂戴しましたが、その中に『CMが多い』というご意見もございました」とこたえた。また、レース終盤にCMを入れない配慮をしたかとの質問に対しては「生中継のスポーツ番組では、競技の展開、進行を見ながらタイミングを計りCMを送出しております」とのことだった。

(J-CASTニュース 2012.08.06)


今月の「碓井広義の放送時評」(2012年8月)

2012年08月07日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、真っ最中の「オリンピック」について書きました。


メディアビジネスとしてのオリンピック
横並びテレビ報道に疑問

7月27日(日本時間28日)に開幕したロンドン五輪。連日のテレビ観戦で寝不足という人も多いだろう。私たちがテレビやネットでの中継を見られるのは、NHKと民放各社で組織する放送機構「ジャパンコンソーシアム」が放映権料を支払っているからだ。その金額は2年前のバンクーバー冬季五輪と今回のロンドン五輪で計325億円。一つの国でこれだけの金額が発生するオリンピックは、メディアを使った巨大ビジネスの場でもある。

ロス大会が転機

オリンピックは1984年のロサンゼルス大会がひとつのターニングポイントだった。その運営は長く赤字が続いていたが、ロスでは黒字になったのだ。それまでは運営費の高騰が開催国や開催都市の重荷になっていた。今では信じられないが、開催を希望する都市も減少。オリンピックの存続自体に危機感を覚えた当時のサマランチ会長と国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピックの「商業化路線」を進めた。オフィシャルスポンサー制度と高額の放映権料が、ついにロスでの黒字をもたらす。

放映権料膨大に

ロスの二つ前となるモントリオール大会の、アメリカ国内での放映権料は2500万ドル。ひとつ前のモスクワ大会では8500万ドルだ。それがロス大会になると2億2500万ドルに跳ね上がった。ちなみに2008年の北京大会でアメリカのテレビ局が支払った放映権料は8億9800万ドル(当時の約900億円)である。

五輪放映権の値段や条件は、IOCと世界各国の放送局との直接交渉で決められる。バンクーバーと今回のロンドンで、IOCが得た放映権料の総額は約38億ドル(約3000億円)。それまでの約1.5倍だ。オリンピックが途方もないメディアコンテンツになっていることが分かる。

もちろん背後にどれだけ大きなビジネスが動いていようと、オリンピックが生身の選手たちによる熱戦で成り立っていることに変わりはない。また彼らが与えてくれる感動も本物だ。ただ、高額で仕入れた試合中継がスポンサーに売りさばかれ、テレビは横並びの五輪一色となる。その一方で、社会の動きが十分に報道されなくなることに注意したい。

たとえば毎週末に国会前で行われている脱原発デモ。回を重ねるごとに参加者は増え続け、先月29日のそれは主催者側発表で「20万人」の大規模なものとなった。しかし、デモの全体像をきちんと見せてくれるテレビ報道はほとんどない。この時期、視聴者に伝えるべきは五輪のメダル獲得数だけではないはずだ。

(北海道新聞 2012.08.06)


今週の「読んで(書評を)書いた本」 2012.08.06

2012年08月06日 | 書評した本たち

内藤陳さんの往年の名著『読まずに死ねるか!』(集英社 1983)。

この本を、ぱらぱらとめくっていたら、案の定、冒険小説が読みたくなった。




まずは、陳さんが『読まずに・・』の中で“おススメ”している、「古今の名作冒険小説」の中から4冊。

ふだん、どうしても新刊が中心だし、夏休みらしい本を読みたいなあ、と思っていたのだが、「冒険小説の名作」ってのは、いいアイデアかもしれない。



ライアル、ヒギンズ、マクリーン、そしてバグリイ。

相手にとって不足なしです(笑)。



今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。
 

貴田 庄 
『高峰秀子 人として女優として』 朝日新聞出版

豊崎由美 
『ガタスタ屋の衿持』 本の雑誌社

堀江あき子:編 
『怪獣博士!大伴昌司「大図解」画報』 河出書房新社

ボナ植木 
『魔術師たちと蠱惑のテーブル』 ランダムハウスジャパン


・・・・ボナ植木さんは、あのマジックの「ナポレオンズ」の、長身でメガネの人です(笑)。


* 上記の本の書評は、
  発売中の『週刊新潮』(8月9日号)
  に掲載されています。



予想以上に楽しめた『崖っぷちの男』

2012年08月06日 | 映画・ビデオ・映像

映画『崖っぷちの男』を観てきた。

「アバター」のサム・ワーシントン主演で、ある計画のため飛び降り自殺をしようと見せかける男と、その男と対峙する女性刑事の駆け引きを描いたサスペンス。

30億円のダイヤモンドを強奪した罪で収監された元刑事のニックが脱獄。ニューヨーク・ルーズベルトホテル高層階から身を乗り出し飛び降りようとする。

制止しようと説得する警察に対しニックは、最近の任務に失敗して後がない女性刑事リディアを唯一の交渉役として指名するが……。

監督はドキュメンタリー出身で本作が長編デビュー作のアスガー・レス。



ホテルの建物の外壁というか、窓下に設けられたほんの狭いスペース。

そこに男がひとり、立っている。

下の道路から見上げた人が、飛び降り自殺の志願者だと思うのも無理はない。

でも、そうじゃない。

男には、明確な目的があったのだ。


ストーリー展開には、本当は無理な部分もあるんだけど(笑)、観ている最中は気にならない。

いわゆるスターさんはいないけど、その分、ドキュメンタリー・タッチが冴える。

役者たちも適役で、予想以上に楽しめた。

ちょっと得した気分。

あまり期待しないで観たのが良かったみたい。

それにしても、この『崖っぷちの男』っていうタイトル、何とかならなかったのかな。

原題「Man on a Ledge(棚の上の男)」のままじゃ、もっとわかんないか(笑)。


バドミントン女子ダブルスの決勝

2012年08月05日 | テレビ・ラジオ・メディア

生中継、最後まで見てしまった。

バドミントン女子ダブルスの決勝。

いやあ、すごい試合だった。

ひたすら、ラリー。

我慢、我慢。

粘って、粘って。

強い相手に対しても、ひるまず、諦めず。

抜群のコンビネーションで挑み続けた2人に拍手だ。

本当に価値ある銀メダル。

おめでとう!

オープンキャンパスで進学相談

2012年08月05日 | 大学

4日(土)はオープンキャンパス最終日。

文学部は個別の進学相談会。






私も、高校生たちと直接向き合った。

あちこちの大学、本学の他学部、同じ文学部の他学科(笑)とも、十分に比較して選択してください、とアドバイス。

みんな真剣な、いい表情をしていました。

がんばれ、高校3年生。




ズシン!と来る「ダークナイト ライジング」

2012年08月04日 | 映画・ビデオ・映像

クリストファー・ノーラン監督「ダークナイト ライジング」を観た。

いやはや、これほど、ズシン!と来るとは。

164分の上映時間もダテじゃない(笑)。

社会、そして人間のあり方を問う、いくつもの“暗喩”。

その世界観、物語構成、映像感覚、いずれも秀逸。

ここまでくると、アメコミとか、バットマンとか、元の素材を超えた何かになっています(笑)。

映画ならでは、映画じゃなきゃ、という“体験”でありました。

オープンキャンパス2012「体験授業」その③

2012年08月03日 | 大学

「体験授業」をサポートしてくれたのは、碓井ゼミの2・3年生メンバー。

スタジオワークも任せて安心、の精鋭部隊です。

彼らが着用しているのは、「碓井ゼミ公式オリジナルTシャツ」(笑)。

この日に間に合わせて、学生たちが作成しました。

次に着るのは夏合宿かな?

みんな、おつかれさま!















       背中に「USUI LABO」の文字が



オープンキャンパス2012「体験授業」その②

2012年08月03日 | 大学

「体験授業」では、ミニ・レクチャーの後、参加者をテレビセンターに
案内し、スタジオと副調整室(サブ)を見学してもらいました。

カメラに触れてもらったり、“出演者”をやってもらったり。

本当に短い時間でしたが、文系には珍しい「実習科目」の雰囲気を
感じてもらえたのであれば、嬉しいです。