碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

広瀬アリスの体当たり演技が光った「佐知とマユ」

2015年03月25日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今回は、創作テレビドラマ大賞「佐知とマユ」(NHK)について書きました。


創作テレビドラマ大賞「佐知とマユ」
広瀬アリスの体当たり演技が印象的だった

日本放送作家協会主催「創作テレビドラマ大賞」は、新人脚本家の登龍門の一つだ。17日にNHKで放送された「佐知とマユ」は2013年の大賞受賞作。

作者の足立紳はその後、安藤サクラ主演の映画「百円の恋」を手掛けるなど活躍中だ。

ヒロインは20歳の佐知(門脇麦)。5歳の時、母親に捨てられた。絵を描くことが好きだが、スーパーマーケットのバイトで生計を立てている。

ある日、常連客であるマユ(広瀬アリス)が部屋に転がり込んでくる。17歳の彼女もまた親の顔を知らなかった。奇妙な同居生活が始まるが、やがてマユの妊娠が発覚する。

1時間の単発ドラマは優れた短編小説のようなものでなくてはならない。たとえ短くても確かな物語世界が構築されていること。登場人物たちに、見る側が感情移入できる存在感があることなどが条件となる。

このドラマでは佐知とマユの関係だけでなく、佐知と15年ぶりに再会する母親(冨田靖子)の関係、そしてマユと生まれてくる新たな命との関係などが重なり合い、影響し合いながら物語が展開されていく。しかも、現実社会の苦味をしっかり織り込んである。

また、既に演技力に定評のある門脇麦はもちろん、広瀬アリス(広瀬すずの姉)も印象的だ。もがきながら生きる“見た目ギャル”を、まさに体当たりで演じていた。

(日刊ゲンダイ 2015.03.25)



【気まぐれ写真館】 花冷えの街

2015年03月24日 | 気まぐれ写真館

今期ドラマ、続々と最終回

2015年03月23日 | テレビ・ラジオ・メディア


今期の連続ドラマが、続々と最終回を迎えています。

先週だけでも、「銭の戦争」「まっしろ」「○○妻」「問題のあるレストラン」「ウロボロス」「セカンド・ラブ」「流星ワゴン」などの最終回を見ました。

それぞれの決着というか、着地の仕方が興味深かったです。

ラストの部分では、「それから*年」とか、「*ヶ月後」という形にしたものが、何本もありました。

最終的には、「問題のあるレストラン」(フジテレビ)、そして「流星ワゴン」(TBS)が、トータルで充実していたように思います。

敢闘賞が、「銭の戦争」(フジテレビ)、「○○妻」(日本テレビ)、「ウロボロス」(TBS)などでしょうか。

もちろん個人的な評価なので、いわゆる数字(視聴率)とはリンクしていないかもしれません。

ストーリー、役者(演技)、演出と、ドラマの大事な要素が、単独でなく総合力で、どこまで行けたのか。

来期もまた、1本でも多くの、わくわくさせるドラマが出現して欲しいものです。


週刊新潮で、“女優・篠田麻里子”についてコメント

2015年03月22日 | メディアでのコメント・論評



「篠田麻里子」女優枠に参戦だから
「大島優子」「前田敦子」の期末査定

傀儡子(くぐつし)に操られた少女たちも、いつか大人の女性へと成長する。AKB48を卒業した前田敦子(23)と大島優子(26)の2人が、芸能界での生き残りに選んだのは女優業だった。そこに“マリコ様”こと篠田麻里子(29)が参戦するが、三つ巴の戦いは誰が勝者の美酒に酔い、誰が敗者の苦汁を嘗めるのか。

3人のうち一番早く女優へ転身したのは、前田だった。ドラマ制作会社の幹部によれば、すでに実績を残しているという。

「AKB卒業後の3年間で、前田が出演したのは映画7本、ドラマ8本。当初は興行成績も視聴率も数字を残せず、演技力も学芸会並みでした。それが最近はメキメキ力をつけているのです。今年1月公開の『さよなら歌舞伎町』では、主役の彼女が恋人に言った“ねぇ、しよう”というセリフに衝撃を受けたし、売れないミュージシャンが葛藤する心情も上手く演じ切れていたと思います」

学芸会並みの演技を卒業する背景には、日々の努力があったという。テレビ局社員がこう明かす。

「彼女は演技の勉強のために、オフの日には一日中映画のDVDを観ています。また、評論家から“滑舌が悪くて、セリフが聞き取りづらい”と指摘されると、ボイストレーナーの元に通って発声を改善している。もともと努力家ですから、地道に努力を積み重ねていけば演技派女優として評価される日が来るかもしれません」

一方、AKB時代、前田とセンターを争った大島の評価もうなぎ上りだ。芸能事務所社長が言うには、

「大島さんは芸能界デビューが8歳で、これまで映画15本、ドラマ41本に出演している“中堅女優”。昨年11月公開の『紙の月』では、主役の宮沢りえさんを破滅の道に誘う同僚役の演技が認められて、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞しました。SMAPの木村拓哉さんなどの大物に好かれているから、今後も大作に出演する機会が巡ってくるはずです」

■セリフは棒読み

来年1月公開予定の園子温監督『秘密の姉妹~シスターズ~』で、前田と大島は銀幕で共演するが、それに先駆けて、同じく園子温監督の映画『リアル鬼ごっこ』が今年7月に公開される。そこで篠田は3人いる主役の1人を演じるというのだが、

「映画初出演の彼女が、主役なんて信じられません」

と、驚きを隠さないのは、ドラマ制作会社幹部だ。

「篠田さんはAKBを卒業した後の昨年夏、天童荒太さん原作のドラマ『家族狩り』に脇役で出演していましたが、酷い演技でした。セリフは棒読みだし、立ち居振る舞いも素人丸出しだった。キャスティングミスだと思います」

さらに、上智大学の碓井広義教授もこう指摘する。

「映画はドラマより演技力が求められるのに、彼女が主役というのは不安要素が大きい。制作サイドは、客寄せパンダの役割を期待しているのでしょうが……」


期待を込めても、期末査定は篠田が最下位。これではセンターに立つどころか、生き残りも危うい?

(週刊新潮 2015.03.19号)

書評本: 猪瀬直樹 『救出』ほか

2015年03月21日 | 書評した本たち



猪瀬直樹さんのノンフィクション最新刊を読みました。

2011年3月11日から翌日にかけて、気仙沼市での出来事が書かれています。

文章だからこその臨場感というものがあり、読む側の“想像力”との合わせ技で倍化されます。

この本も、そんな一冊でした。


以下、週刊新潮に書いた書評です。



猪瀬直樹 
『救出~3.11気仙沼 公民館に取り残された446人』
河出書房新社 1728円


東日本大震災から4年。決して短い年月ではないが、被災した方々の物心両面の痛手は癒えないまま、被災地以外での記憶の風化が著しい。

本書の舞台は、地震と津波に襲われた当時の宮城県気仙沼市だ。浸水して孤立した上、火の手が迫った公民館に、446人の被災者が取り残された。そこには大人だけでなく、保育所の園児71人がいた。

震災の特徴の一つは、津波によって道路が寸断され、火のついたがれきが漂い、誰がどこへ逃げているか、連絡が取れないことだ。公民館に集まった人たちも同様だった。家族の安否どころか、自分たちの存在と状況を外部に伝えることも難しい。また伝わっても必ず救助されるとは限らない。それほどの大災害だった。

著者は当事者たちへの丹念な取材を行い、この日、誰がどこで、どのように震災と遭遇し、公民館で何があったのかを浮き彫りにしていく。緊急避難における行動は、いわば葛藤の連続だ。右か左か、どこへ逃げるのか、一瞬の判断が明暗を分けることもある。それは消防士も、町工場の社長も、幼い子供たちの命を預かる保育士たちも同様だ。

最終的に公民館の避難者たちは、翌日、東京消防庁のヘリによって救助される。それまでの一昼夜、彼らは自身の不安を抑え、互いに声を掛け合い、知恵を出し合って助けを待った。読後、「希望」という言葉が絵空事ではなく浮かんでくる。

しかし、なぜ東京消防庁のヘリだったのか。そこには奇跡的ともいえる情報のリレーと、想像力をフルに働かせた人たちの的確な判断、そして迅速な対応があった。当時、東京都の副知事だった著者もまた大きく関与している。

後に都知事を辞した際、著者は「政治家としてアマチュアだった」と述べた。本書は「ノンフィクション作家としてのプロ」が書いた、災害と生存をめぐる緊迫の記録であり、信じるべき個の力への讃歌である。


勝谷誠彦 『バカが隣に住んでいる』 
扶桑社 1404円


「週刊SPA!」に連載中の時評コラム、2011年から昨年分までをまとめた最新刊。震災、政権交代、日中・日韓関係、集団的自衛権、特定秘密保護法などをめぐり、反論や異論覚悟の自己責任で論じまくる姿勢が痛快だ。バカを見分けるための参考書である。


森 達也 『すべての戦争は自衛意識から始まる』
ダイヤモンド社 1728円


著者が繰り返し警告するのは、自衛意識が戦争を引き起こすというメカニズム。その意識が高揚して大義となれば、戦争はもう目の前にあると。加速化する同調社会の中で、「僕は胸を張って自虐する。加害の記憶は大切だ」と言い切る著者の存在はますます貴重だ。


田中小実昌『くりかえすけど』
幻戯書房 3456円


直木賞作家だった著者が、74歳で亡くなってから15年が過ぎた。単行本未収録作品集である本書には、戦争そして戦後の体験をベースとした物語を中心に10編が並ぶ。その飄々とした語り口と味わいは、俳優・殿山泰司との交遊を描いた「トノさん」でも変わらない。

(週刊新潮 2015.03.19号)


あと2回!今週の「金曜オトナイト」は渡部陽一さんと・・・

2015年03月20日 | 金曜オトナイト

BSジャパン
「大竹まことの金曜オトナイト」

2015年3月20日(金)
夜11時30分~深夜0時00分

【ゲスト】
渡部陽一さん(戦場カメラマン)



渡部さんは、本当に、あのゆったりペースで話をする方でした(笑)


<番組内容>
「13歳で結婚 14歳で出産 恋は、まだ知らない」
早すぎる結婚を強制されるネパールの少女たち。
貧困と慣習に苦しめられる開発途上国の現状!

◆文化情報コーナー◆
渡部陽一オススメ映画
実話をもとにしたスリリングな脱獄劇!
「ミッドナイト・エクスプレス」

<出演者>
レギュラー:大竹まこと、山口もえ、碓井広義(上智大学教授)
進行:繁田美貴(テレビ東京アナウンサー)
ゲスト:渡部陽一



今週の「もえちゃん」


【気まぐれ写真館】 ミッドタウン界隈

2015年03月20日 | 気まぐれ写真館

週刊文春で、「クロ現」やらせ報道疑惑についてコメント

2015年03月19日 | メディアでのコメント・論評

NHK「クローズアップ現代」やらせ報道を告発する


発売中の「週刊文春」最新号に、NHK「クローズアップ現代」の“やらせ報道”に関する独占スクープが掲載されました。

問題になっているのは、昨年5月14日に放送された「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」。

記事には、番組内で出家詐欺のブローカーとして紹介された出演者の、「記者に“ブローカー役”を依頼されて、架空の人物を演じた」という内容の証言が載っています。

告発されたNHKの記者氏は、「やらせじゃない」と否定しているようです。

また、NHKの森永公紀理事は、「週刊文春」が発売された18日、放送総局長会見で「現在、取材のプロセスを確認しているが、今の時点ではやらせがあったとは考えていない」と話したそうです。

果たして真相はいかに!?

ちなみに、私も、この記事の中でコメントしています。

ネットに上がっている記事の文章は、いわば要約が多いので、少し長いですが、本誌の記事全体を読んでみることをオススメします。



「週刊文春」2015.03.26号

震災の映像をめぐる、佳作ドキュメンタリー

2015年03月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイで連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、3月11日に放送された、NHKスペシャル「"あの日の映像"と生きる」を取り上げました。


NHKスペシャル
 "あの日の映像"と生きる

膨大な記録を貴重な“記憶”としてどう生かすか


東日本大震災から4年。もう4年なのか、それともまだ4年なのか。その印象は被災地とそれ以外の地域で大きく異なる。

特にテレビなどメディアを通じて震災と向き合ってきた人たちの中で、風化が急速に進んでいる。

今年も3月11日を中心に、いわゆる震災関連番組が何本も流された。何があったのかを忘れないために、また今どうなっているのかを知るためにも必要な取り組みだ。

先週11日に放送された、NHKスペシャル「"あの日の映像"と生きる」。当時撮影された津波の映像が、それを撮った人、映った人、そして見た人にどんな影響を及ぼしているのかを伝えていた。

たとえば陸前高田市の男性は、カメラを回していた自分が、映っている老人を助けられなかったことを後悔していた。だが、その老人の息子は、父親の生前最後の様子を知ることで、精神的に救われたと語っている。

また瓦礫と共に流された夫婦は、自分たちが映っている映像を見ることで、“生かされた”意味を考えたと言う。現在は学校などに出向き、その凄絶な体験を語るボランティア活動を続けている。

思えば東日本大震災は、メディアだけでなく、住民のデジカメや携帯電話によって膨大な映像が撮影された災害だった。それらを記録として残すだけでなく、貴重な“記憶”として生かしていくことが必要なのだ。

(日刊ゲンダイ 2015.03.18)


「金曜オトナイト」最終回まで、あと2回! 現在カウントダウン中

2015年03月17日 | 金曜オトナイト








【気まぐれ写真館】 天王洲界隈

2015年03月16日 | 気まぐれ写真館

映画『イミテーション・ゲーム』は“多面体”の人間ドラマ

2015年03月15日 | 映画・ビデオ・映像



13日に公開されたばかりの映画『イミテーション・ゲーム~エニグマと天才数学者の秘密』を観てきました。

アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞など計8部門でノミネートされ、最終的には脚色賞を受賞した話題作です。


第2次世界大戦時、ドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマ。劣勢だったイギリスの勝利に貢献し、その後コンピュータの概念を創造し「人工知能の父」と呼ばれた英雄にもかかわらず、戦後悲劇の運命をたどったチューリングを、ベネディクト・カンバーバッチが熱演する。監督は『ヘッドハンター』などのモルテン・ティルドゥム。キーラ・ナイトレイをはじめ、『イノセント・ガーデン』などのマシュー・グード、『裏切りのサーカス』などのマーク・ストロングら実力派が共演。

第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが……。



観る前、この映画はミステリー、もしくは戦争サスペンスだとばかり思っていました。

もちろん、そういう要素はありますが、それだけじゃなかった!

伝記映画であり、プロジェクト(仕事)映画であり、社会派映画であり、心理映画でもあるという、いわば多面体の人間ドラマなのです。

エニグマのことは何となく知っていましたが、解読したチューリングについては天才数学者とか、コンピュータの原型であるチューリングマシンの開発者といった程度の知識しかなく、おかげで一層興味深く観ることができました。

いやあ、天才も大変なんだなあ。

また、その天才がエニグマ解読の偉業を達成した後、まさに戦後に起きる悲劇。

チューリングを演じるカンバーバッチは、主演男優賞ノミネートも納得の“紙一重”の部分を見事に体現していました。

キーラ・ナイトレイも良かった。


そうそう、チューリングに関心をもった方に、こういう本はどうでしょう?




かつて北海道の千歳科学技術大学で同僚として過ごし、現在もまた、上智大学で同僚となっている、理工学部の高岡詠子准教授。

その高岡先生の著書『チューリングの計算理論入門』(講談社ブルーバックス)です。

人間にとって「計算」とは何か、機械に「計算」をさせるとはどんなことか、といった具合に、コンピュータへとつながっていく試行錯誤が、わかりやすく書かれています。

計算機科学のエキスパートである高岡先生の“チューリング愛”が詰まった1冊。

オススメいたします。


東京新聞で、“問題発言”常習者とメディアの関係について解説

2015年03月14日 | メディアでのコメント・論評



13日付けの「東京新聞」で、“問題発言常習者”とメディアの関係について解説しました。


元首相、NHK会長・・・問題発言の常習者
キャラで許していいの?
鈍感、冷笑・・・マスメディアに責任

元首相にNHKトップ、有名作家・・・。地位も名誉もある人の問題発言が目立っている。何度も連発されると、いちいち突っ込むのがバカらしくなってくるが、それぞれ影響力があるだけに、「ああいうキャラクターだから仕方がない」では済まされない。(三沢典丈)

鳩山由紀夫元首相は十日、ロシアがウクライナから一方的に併合したクリミア半島入りした。十一日には現地で記者会見し、「憲法に従い、クリミア住民の意思を反映していた」と、併合を容認する考えを示した。日本政府の意向に反する言動は、日本の外交に影響を及ぼしかねない。

鳩山氏は、そのとっぴな言動から「宇宙人」とからかわれてきた。首相在任中に直面した沖縄の米軍普天間飛行場移設問題では、移設先について「最低でも県外」とぶち上げたものの、結局は名護市辺野古に転換。米紙から「ルービー(間抜け)」と評された。

政治評論家の浅川博忠氏は「元総理としての自覚がなさすぎる。祖父の鳩山一郎元首相ゆかりの人が『あの人には困った』とこぼしていた」とあきれ顔だ。

問題発言の常習者といえば、やはり籾井勝人NHK会長だろう。昨年一月の就任会見で、慰安婦について「どこの国にもあった」と発言。先月の定例記者会見では、慰安婦関連の番組について「政府のスタンスがよく見えない中で放送するのが本当に妥当かを、慎重に考えなければ」と政府の姿勢におもねった。

アパルトヘイト(人種隔離)を容認するかのようなコラムが批判を浴びた作家の曽野綾子氏の差別的発言は枚挙にいとまがない。二〇〇九年のコラムで「『基地の町』で午前一時過ぎに基地の近くを出歩く女性は、性的商売をしていると思われても仕方がない」、一三年の雑誌の寄稿では、セクハラ、マタハラの改善を訴える企業の女性社員に向かって「出産したらお辞めなさい」といった具合だ。

新聞やテレビは、この手の問題発言に鈍感だ。籾井氏を当初こそ指弾したものの、ここ数ヶ月は通り一遍の報道にとどまっている。曽野氏のアパルトヘイトコラムは、海外メディアが先んじて問題視した。振り返れば、「三国人」などの問題発言を繰り返した石原慎太郎氏にも甘かった。こんなことでいいのか。

コラムニストの小田嶋隆氏は「石原氏や曽野氏のような『ぶっちゃけキャラ』を『無神経だけど正直者』と、支持する層は年配者を中心に一定数いる。ネットで本音主義がまかり通り、差別語が飛び交う今、彼らの需要は高まっている。マスメディアは、それを知っているから批判しない」とみる。「だが、コラムで問題があったなら、連載を終わらせるなど毅然とした措置を取るべきだ」

上智大の碓井広義教授(メディア論)も「マスメディアは彼らを『困ったちゃん』とみなし、『いつものことだから』と冷笑、無視する。その結果、問題発言を取り上げず、取り上げても批判しない」と指摘した上で、ジャーナリズムに警鐘を鳴らす。

「メディアが伝えなかったことは、一般市民には『なかったこと』になるし、批判されないと、彼らは自分の言動が肯定されたと思い込む。やはり彼らの言動を批判的に取り上げ、その背後にある本質的な問題をきちんと解説するのがメディア本来の役割。そうしないとジャーナリズムに対する信頼感を損ねかねない」


(東京新聞 2015.03.13)


・・・・“問題発言”の常習者としては、鳩山元首相や籾井会長などの他に、橋下徹・大阪市長も加えた方がいいかもしれません。



今週の「金曜オトナイト」は、あのシティボーイズがそろい踏み!

2015年03月13日 | 金曜オトナイト



BSジャパン
「大竹まことの金曜オトナイト」

2015年3月13日(金)
夜11時30分~深夜0時00分

【ゲスト】
きたろうさん
斉木しげるさん




<番組内容>
大竹まことが司会を務め、政治から最新エンタメ、男女のあれこれまで様々なトピックを紹介するオトナのための情報バラエティ『大竹まことの金曜オトナイト』(BSジャパン、毎週金曜23:30~24:00)3月13日(金)の放送に、大竹とともにコントユニット「シティボーイズ」を組んでいる、きたろうと斉木しげるがゲストとして登場することがわかった。

13日で放送100回を迎える本番組に、今や3人揃ってテレビに出演することが珍しくなっている「シティボーイズ」が久しぶりに勢揃いし、フリートークなのかコントなのかわからないトークを繰り広げる。さらに、きたろうと斉木が、大竹の隠れた一面を暴露する。

また、「シティボーイズ」結成から36年が経った今、「若いやつらに目にもの見せてやろう!」と大竹が豪語し、16年ぶりに3人で出演する舞台「シティボーイズ ファイナル Part.1『燃えるゴミ』」が6月19日(金)から29日(月)に東京・東京グローブ座にて開催される。今回、この舞台のタイトルにもなっている“ファイナル”の意味を「シティボーイズ」の3人が明かす。(テレビドガッチより)

<出演者>
レギュラー:大竹まこと、山口もえ、碓井広義(上智大学教授)
進行:繁田美貴(テレビ東京アナウンサー)
ゲスト:きたろう、斉木しげる




今週は、なんと放送100回目に当たります。

しかも、カウントダウンは進み、最終回まで、あと3回。

さらに、13日の金曜日!

で、ゲストはきたろうさん、そして斉木しげるさんです。

そう、「シティボーイズ」のそろい踏みなのだ。

スタジオの雰囲気はいつものようであり、どこか違うようでもあり・・・。

そしてカメラが回ってからも、さっきまでの雑談と変わったような、変わらないような(笑)。

でも、話している内容は、フツーのテレビじゃ流れないものばかりです。

いやあ、生ける伝説「シティボーイズ」、恐るべし。



今週の「繁田美貴アナウンサー」

書評本:『独特老人』ほか

2015年03月13日 | 書評した本たち



「独居老人」ではない。

「特養老人」でもない。

「独特老人」である。

とんでもないジイサマたちが語る、とんでもなく面白い話のオンパレード。


以下、週刊新潮に書いた書評です。

後藤繁雄・編著 『独特老人』
ちくま文庫 1620円

著者によれば、独特とは独りで特別、光速で回転する独楽のような人。奇、狂、偏の三つが揃った人物だ。

本書に並ぶのは、森敦にはじまる28人。なぜか女性はいない。そして水木しげる、鶴見俊輔など4人を除く全員がすでに世を去っている。しかし彼らの言葉はもちろん、その“在りかた”自体が今も刺激的だ。

作家の埴谷雄高は「今までの全人類史を御破算にするくらいのつもりで誰かやらないとだめなんですよ」と言って、『死霊』を書き続けた。

棋士の升田幸三は「勝負というのは、まず負けないこと。第一は勝つことじゃない」の信念を終生変えることはなかった。

破格にして前衛、自由で風狂な男たちの肖像である。


山本朋史 
『ボケてたまるか!~62歳記者認知症早期治療実体験ルポ』

朝日新聞出版 1296円    

雑誌記者である著者が突然、軽度認知障害と診断される。取り組んだのは早期治療としての認知力アップトレーニングだ。個人として自費で診療を受けながら、雑誌の連載で報告を続けてきた。独特のユーモアと緊張感にあふれた、「症状を遅らせる」挑戦の一部始終だ。


最相葉月 『れる られる』
岩波書店 2052円

シリーズ「ここで生きる」の一冊。『絶対音感』などのノンフィクション作品で知られる著者の連作エッセイ集だ。人はいかにして生まれ、誰に支えられ、なぜその生を断ち切るのか。六つの「動詞」を起点に、世界のあちらとこちら、その境目を探っていく。

(週刊新潮 2015.03.12号)