日刊ゲンダイで連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、深夜番組「おーくぼんぼん」(TBS系)について書きました。
「おーくぼんぼん」(TBS系)
現代女性の「性」に関する
サンプリング調査になっている
うたい文句は「オンナの欲望を満たす番組」だ。大久保佳代子と山里亮太が司会を務める「おーくぼんぼん」(TBS系)である。
放送が金曜深夜24時50分というユル~イ時間帯であることを生かし、結構キワドイ話を笑いながら展開している。
最近のテーマを挙げてみても、「変態」「女の格差」「オンナの抱かれたい夜」とかなり刺激的。
変態イベントに潜入し、格差姉妹への密着取材を行い、性欲解消法としてのアロマ・マッサージを紹介するなど、徹底して女性の関心に応える内容になっている。
もう一つ、この番組のウリと言えるのが、「欲望ディレクター」と称する女性の制作者陣である。レポーターを立てるのではなく、彼女たち自身が何でも体験してみせる。
これは予算を抑えるためだけではない。女性視聴者と同じ立ち位置と目線で伝えるのが狙いだ。時には見ている側がテレてしまうほど、アケスケに自らの性生活や欲望について明かしていくことで共感を呼んでいる。
さらにこの番組で驚かされるのは、毎回のテーマにまつわる街頭インタビューだ。若い女性たちが「生理中は欲求不満」「好きな人との妄想に走る」などと笑顔で答えていく。
その率直な告白は、期せずして現代女性の性意識と性行動に関するサンプリング調査になっており、世の男性諸氏にも大いに参考になるはずだ。
(日刊ゲンダイ 2015.03.11)
日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。
今回は、ソフトバンクモバイル「白戸家」の新作を取り上げました。
ソフトバンクモバイル
白戸家「お父さん回想する編」
白戸家「お父さん回想する編」
高校時代の両親 絶妙な役者起用
映画『スター・ウォーズ エピソードⅣ/新たなる希望』を、有楽町の日劇で見たのは全米公開翌年の1978年。
それから約20年後に作られたのが『エピソードⅠ/ファントム・メナス』だ。後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの少年時代を描いた、後日談ならぬ衝撃の“前日談”だった。
このCMで驚いたのは、お父さん(声・北大路欣也さん)とお母さん(樋口可南子さん)が高校の同級生で、当時の“見た目”は染谷将太さんと広瀬すずさんだったことだ。特に今年の目玉、超新星アイドルである広瀬さんの起用はお見事。
また、染谷さんが上戸彩さんにそっくりな保健室の先生(上戸さんの二役)にトキメクのも、後年のお父さんを彷彿とさせて苦笑いだ。
今後、染谷さんと広瀬さん、二人の高校時代を舞台に、回想の枠を超えた前日談の物語が展開されてもおかしくない。いや、ぜひ見てみたいものだ。
(日経MJ 2015.03.09)
大阪都構想批判に苛立った
「橋下維新」の「放送介入」動かぬ証拠
「橋下維新」の「放送介入」動かぬ証拠
「グレートリセット」。かねて橋下徹大阪市長(45)は「大改革」を行うと宣言してきたが、言論の自由まで改革、いや改憲するつもりらしい。大阪都構想の是非を巡る住民投票が5月17日に予定されている最中、旗色が悪いと焦っているのか、「橋下維新」はついに「放送介入」に乗り出したのだ。
まずは都構想の現状を、
「朝日新聞と朝日放送が2月7、8日に行った大阪市民への世論調査では、都構想に賛成が35%だったのに対して、反対は44%に達しました」
と、『橋下徹、改革者か壊し屋か』の著書がある在阪ジャーナリストの𠮷富有治氏が解説する。
「反対派には投票に行くつもりがないという人も多く、その分を差し引いて考える必要がありますが、橋下市長にとって苦しい状況には変わりない。いずれにしても、住民投票に先立つ4月12日の大阪府議会で維新が勝てなければ、都構想は事実上、頓挫する可能性が考えられます」
こうして世論に批判的な声があるなか、橋下氏が目下、最大の「ターゲット」としているのが、内閣官房参与を務める京大大学院教授の藤井聡氏(46)だ。
1月27日、藤井氏が都構想における「議論の問題点」を指摘すると、橋下氏は彼を「バカ」「こチンピラ」と罵倒。挙句、橋下維新はメディアに2通の文書を送り付けたのだ。
「藤井を使うな」
一つ目の2月12日付の文書には、
<藤井氏が、各メディアに出演することは、放送法四条における放送の中立・公平性に反する>
こう記されていて、続く同月16日付のものには、
<先日、皆様に藤井聡に関するお願いを送付させて頂き・・・・>
と、藤井氏を呼び捨てにした上で、
<藤井氏が、維新の会、大阪都構想に中立なわけがなく、番組内で虚偽の中立宣言をした藤井氏を出演させる放送局の責任は重大>
とある。要はテレビ局に対して「藤井を使うな」と圧力を掛けているに等しく、これぞ言論封殺と言わざるを得まい。
文書の差出人である同党の松野頼久幹事長は、
「維新の党は行政上の権限を持っておりませんので、圧力というご指摘には該当しない」
こう弁明するのだが、上智大の碓井広義教授(メディア論)は呆れる。
「放送法四条が規定している『公平』とは、意見が対立するテーマの場合、両論を報道すべきという意味です。圧力を掛けて一方の論者を出演させるなというのは、放送法の趣旨を明らかに誤って解釈しています」
最後に、橋下維新の標的となっている藤井氏が憂う。
「橋下氏のような市長や公党顧問といった公権力者が暴挙に出れば、容易く言論の自由は侵されてしまいます。大阪の放送メディアは今、市長の取材拒否等が怖くて自由な報道ができなくなっている。市長側にどれだけ不当な振る舞いがあっても、『いつものことだから』と、取り上げない。結果、言論封殺がさらに助長されています」
こうした橋下維新の「やり口」を許すのか否か――。
住民投票では有権者の良識、すなわちプライド高き大阪の民の「威信」も問われることになりそうだ。
(週刊新潮、2015年3月12日号)
本広克行監督の『幕が上がる』を見てきました。
劇作家・平田オリザが2012年に発表した処女小説を、人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の主演で映画化。静岡県にある県立富士ケ丘高等学校。演劇部所属の高橋さおりは、まもなく演劇部最後の一年を迎えようとしていた。個性的な部員たちとともに、年に一度の大会で地区予選突破を目標に掲げたさおりだったが、東京の大学で演劇をやっていたという美人の新任教師・吉岡先生に後押しされ、全国大会を目指すことになる。「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督がメガホンをとり、演劇に打ち込む高校生たちの青春を描いた。吉岡先生役で「小さいおうち」の黒木華、演劇部顧問の溝口先生役でムロツヨシらが共演。脚本を「桐島、部活やめるってよ」の喜安浩平が手がけた。
で、いきなり結論ですが、これは青春映画の、堂々の秀作です。
個人的にラッキーだったのは、原作は読んでいましたが、映画に関しては何の予備知識も先入観もなく、しかも「ももいろクローバーZ」についても詳しくないままに見たことです。
確かに、アイドルグループが主演の映画ですが、既成概念としての“アイドル映画”の範疇に、いい意味で納まりきらない出来の良さ(レベルの高さ)がありました。
原作は3年前に出版されたものですが、当然ながら小説そのままの映画化ではありません。
喜安浩平さんの脚本は、静岡という舞台だけでなく、「ももクロ」のメンバーに合わせる形で、登場人物のキャラクター設定などを巧みに変えてあります。
それだけに、ヘンに浮いたセリフもなく、等身大の彼女たちと、物語の中の演劇少女たちが、見事にシンクロしていました。
欲を言えば、平田さんの小説には“読む演劇教室”みたいな要素があり、その部分は映画でも、もう少し見たかったのですが、まあ、それはないものねだりということで。
何となく演劇部で、何となく芝居を続けてきたヒロイン(百田夏菜子、好演)をはじめ、「ももクロ」の面々が演じる演劇部員たちが、徐々に変化していく様子が丁寧に描かれています。
高校時代って、1年間でも、ぐっと成長する時期で、いや、時々刻々と変わっていく時期で、だからこそ儚くもあります。
その儚くて貴重な時間が、演劇を通過することで可視化されている、という感じでしょうか。
“高校部活系”映画としては、『ウオーターボーイズ』や『ピンポン』などの運動部や、『スイングガール』の吹奏楽部などがありましたが、「演劇」というのはそれらとも特質や方向性が異なり、その違いもまたこの映画を輝かせていました。
「ももクロ」だからとか、「アイドル映画」だからとか、「踊る大捜査線」の監督だからとか、その他諸々の予断を抜きにして、劇場で見てみることをオススメします。
そうそう、「ももクロ」以外のキャストの中では、黒木華が圧倒的にいい。
元“大学演劇の女王”で、高校の新任美術教師という役どころですが、この人が画面に出てくると空気が変わります。
それから、これは蛇足ですが、笑福亭鶴瓶だの、松崎しげるだのといった“ちょこっとだけ出ていただいた有名人”みたいなキャスティングは、本当に邪魔!
もう少しで映画全体の好印象をぶち壊すところでした。要注意です。
書店の「リブロ池袋本店」が、7月末までに閉店となるそうです。
移転先は未定とのこと。
かつて堤清二さん率いるセゾングループが元気な頃、リブロは独自のカラーをもった魅力的な書店でした。
最盛期は、やはり「セゾン文化」が華やかだった80年代後半でしょうか。
最近も、大型の「ジュンク堂書店」などに押されているイメージがありましたが、それでも閉店となると寂しいですね。
「週刊新潮」での書評本、以下の3冊です。
加藤康男 『昭和天皇 七つの謎』
WAC 1728円
「昭和天皇実録」の公開で、むしろ謎は増幅したと著者は言う。本書では7つの視点から実像に迫っている。皇太子裕仁親王の妃選びをめぐる「宮中某重大事件」。太平洋戦争の開戦直前、御前会議で昭和天皇が詠んだ歌に隠された秘密。歴史の深部に分け入った力作だ。
細野 透『謎深き庭 龍安寺石庭』
淡交社 1944円
京都・龍安寺の石庭。白砂に15の石が配されているだけなのに、見る人の心を捉えて離さない。魅力の背景にはいくつもの謎がある。テーマは何か。5つの石組と15の石は何を意味するのか。そして構図の秘密とは。建築&住宅ジャーナリストの著者が55の推理で迫る。
夢枕 獏 『秘伝「書く」技術』
集英社インターナショナル 1188円
37年間に300冊の本を書いてきた作家が明かす創作の技術だ。書きたいテーマを小説に昇華させる方法、物語作りのポイント、さらに継続するためのヒントが並ぶ。書くことに興味のある人、何かを続けたい人、そして著者の作品を一層楽しみたい人にも有効だ。
(週刊新潮 2015.03.05号)
日本民間放送連盟(民放連)の機関紙「民間放送」に連載している「メディア時評」。
今回は、「健康・医療番組」について考えてみました。
花盛りの「健康・医療番組」
見せ方に妙味、不安増幅に留意を
見せ方に妙味、不安増幅に留意を
プロデューサー時代に、「健康クイズ」(フジテレビ系)という番組を手がけたことがある。80年代半ばのことだ。タイトルにクイズとあるが、得点争いを見せたいわけではなく、あくまでも健康情報の提供が狙いだった。
毎回、「腰痛対策」や「風邪予防」といったテーマを決めて、各部門の専門医に事前取材を行う。そこで聞いた内容を整理し、問題を作成する。スタジオでは回答者たちと医師の質疑応答に重点を置き、取り上げた分野における最新情報を伝えることを目指した。民放では、これ以外に健康情報番組がほとんどなかったからだ。
あれから30年。最近は、いわゆる「健康・医療番組」が花盛りだ。ゴールデンタイムに放送しているものだけでも、「駆け込みドクター!運命を変える健康診断」(TBS系)、「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」(テレビ朝日系)、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系)などがある。いずれも視聴率は好調だ。
では、健康・医療番組がなぜ視聴者から支持されているのか。まず、現在こうした番組の主な視聴者が中高年層であることだ。この世代の大きな関心事は、経済と健康である。ある程度の年齢に達したら、あまりお金の心配をすることなく過ごしたいと誰もが思う。さらに家族を含む他者に迷惑がかからぬよう、健康でありたいと考える。各番組は、見事に視聴者の欲求に応える内容となっている。
次に、視聴の背景には日進月歩の健康・医療情報を手軽に得たいという思いがある。もちろん書店に行けば、一抱えでは収まらない数の健康・医療本が並んでいる。選択に迷うほど情報が氾濫しているからこそ、有益な最新情報を選んで伝えてくれる、一種のキュレーターの役割をテレビに託したいというわけだ。
番組の作りにも工夫が凝らされている。テーマは健康であり医療であるとはいえ、どうしても病気を扱うことになる。そのままだと重くて暗い印象を与えてしまう。そこで見せ方の妙が必要になってくる。
あまり深刻にならないための配慮として、軽い笑いを散りばめ、広い意味でのエンターテインメントにしているものが多い。健康・医療情報は知りたいが、深刻な気分になりたくはない。こうした視聴者の気分に寄り添う形で、番組が作られている。
そんな健康・医療番組での“当たり企画”に、タレントが実験台となって行う健康チェックがある。実際に病院で健康診断を受けてもらい、その結果を公表するのだ。
たとえば2月2日放送の「主治医が見つかる診療所」では、人間ドックに行ってきた複数のタレントをスタジオに集め、診断結果を元に順位付けした「深刻度」をその場で本人に伝えていた。
「第3位のAさんは、すでに脳梗塞を発症しています」「第1位のBさんは、脳動脈瘤と脳血管の腫瘍が見つかりました」といった具合だ。本人の超音波エコーの映像や、MRIで輪切りにされた脳の画像も駆使して詳細な説明が行われていた。
出演者の許諾を得ているとはいえ、病気は究極の個人情報である。早期発見や予防を理由に個人のプライバシーを暴くかのような印象を与えることも事実だ。
一方で、健康診断自体はドキュメントであり、そこには具体性があり、説得力をもっている。視聴者は自分に引き寄せて、「思い当たること」を考えたり、逆に「安心感」を得たりもするのだ。
こうした「健康診断企画」が支持される背景には、見逃せない側面もありそうだ。人間には他人の「小さな不幸」を垣間見ることで、自分の優位性を確認したいという感情が少なからずあるように思う。制作者はそんな「他人の不幸は蜜の味」に迎合していないか、煽っていないかについて、常に自覚的であるべきだろう。
もう一つ、制作上で留意して欲しいことがある。広い範囲の視聴者を獲得しようとする余り、必要以上に「テレビを見ているアナタも該当するかもしれません」という語り口になる傾向だ。注意喚起という名目のオーバーな脅かしは視聴者にとって影響が大きい。
健康・医療番組が放送された直後、医師に対して「テレビで見たのですが・・・」という形で相談する患者が増えるそうだ。病気ではないかという不安や、受けている治療に対する疑念の増幅。番組が伝えた情報によって現実に人が動くことの怖さもまた、制作側はより意識することが必要だ。
(民間放送 2015.02.23号)
BSジャパン
「大竹まことの金曜オトナイト」
2015年3月6日(金)
夜11時30分~深夜0時00分
【ゲスト】
金泉俊輔さん(週刊SPA!編集長)
浜田敬子さん(AERA編集長)
「大竹まことの金曜オトナイト」
2015年3月6日(金)
夜11時30分~深夜0時00分
【ゲスト】
金泉俊輔さん(週刊SPA!編集長)
浜田敬子さん(AERA編集長)
<番組内容>
ネットと紙媒体の闘いと共存メディアにとっての表現の自由とは?
2人の編集長が語る雑誌の現在と未来!
<出演者>
レギュラー:大竹まこと、山口もえ、碓井広義(上智大学教授)
進行:繁田美貴(テレビ東京アナウンサー)
ゲスト:金泉俊輔(週刊SPA!編集長)、浜田敬子(AERA編集長)
・・・・最終回まで、あと4回!
タイプの異なる週刊誌、「週刊SPA!」と「AERA」の両編集長が登場です。
お二人とも実にシャープで明快。
雑誌フリークの私としては、うかがってみたことが多々あり、あっという間の30分でした。
ぜひ、ご覧ください!
今週の「もえちゃん」
映画『ベイマックス』を見ました。
孤独な少年と心優しいロボットの絆や冒険を描き、第87回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞したディズニーアニメ。西洋と東洋の文化がマッチし、最先端技術分野の先駆者たちが数多く住んでいるサンフランソウキョウ。そこに暮らしている14歳の天才児ヒロは、たった一人の肉親であった兄のタダシを亡くしてしまう。深い悲しみに沈む彼だったが、その前にタダシが開発したロボット、ベイマックスが現れる。苦しんでいる人々を回復させるためのケアロボット・ベイマックスの優しさに触れて生気がよみがえってきたヒロは、タダシの死に不審なものを感じて真相を追い求めようと動き出す。
いやあ、予想以上に良かったです(笑)。
ベイマックスの造形も、ヒロたち人間の顔も、見る前は「どうかなあ」と心配していたのですが、始まってみれば、すぐに馴染んで。
いつの間にか、ベイマックスに“表情”を見出していることに驚きます。
つい、「ウチにも、いたらいいかも」なんて思ったり。
ベースにあるのは“兄弟愛”でしょうか。
ヒロとタダシの兄弟愛、ヒロとベイマックスの異種間兄弟愛(?)。
確かに、『アナ雪』のボーイズ版っぽい。
ジャパニーズ・カルチャーへのオマージュもふんだんで、ちょっと嬉しくなります。
今年は、ソフトバンクが売り出すヒト型ロボット「ペッパー」のこともあり、ソニーの「AIBO」以来のロボット・ブームが来る、かもしれません。
日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、「学校のカイダン」(日本テレビ系)を取り上げました。
「学校のカイダン」(日本テレビ系)
超新星・広瀬すずを見るためのドラマだ
超新星・広瀬すずを見るためのドラマだ
「学校のカイダン」(日本テレビ系)が終盤に入り盛り上がってきた。
名門高校に編入したツバメ(広瀬すず)だが、内実は一部の生徒が支配するトンデモ校だった。
彼らの策略で生徒会長にされた彼女をサポートするのが謎の青年・雫井彗(神木隆之介)だ。ツバメに学校改革のヒントと、説得力のあるスピーチ(演説)を伝授していく。
まず、ヒロインの武器が言葉(演説)で、背後にスピーチライターがいるという設定が新機軸だ。毎回、熱い演説によって周囲の気持ちを動かしていく。
先週も生徒を抑圧する教師(生瀬勝久)に向かって、「どうせ無理、なんて言葉はいつでも学べる。だったら無理じゃない可能性を教えて欲しい!」と訴えていた。
一方、舞台が学校なのに授業や部活といった日常シーンが皆無で全体が虚っぽいとか、神木の演じるキャラが「リーガルハイ」の堺雅人に似ているとか、ツッコミ所はあるかもしれない。
しかし、これは広瀬すずを見るためのドラマだ。これまでモデル業が中心で、本格的なドラマ出演は今回が初。新人戦としては上々の出来だろう。
やや鈍くさいが、何事にも一生懸命な美少女役。笑顔も困った時の表情も生き生きとしている。
想定していた能年玲奈の代役だそうだが、「第二の能年」ではなく、今年の目玉、超新星としての広瀬すずがここにいる。
(日刊ゲンダイ 2015.03.03)
北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。
今回は、NHKのドラマと、日本テレビ・札幌テレビ制作のドキュメンタリーについて書きました。
原発再稼働 矛盾を問う
そこに暮らす人たちの「地元」とは?
そこに暮らす人たちの「地元」とは?
過疎と高齢化が進み、社会的な共同生活を維持することが困難になった地域が全国各地で増えている。それが「限界集落」だ。
2月28日に最終回を迎えた、NHK土曜ドラマ「限界集落株式会社」。その舞台である山村もギリギリの状態だった。ある者は病に倒れ、またある者は村を去る。そんな地元に帰ってきたのが、かつて有機農業の夢に破れて逃げ出した大内正登(反町隆史)だ。
もう一人、突然現れたのが経営コンサルタントの多岐川優(谷原章介)である。村人たちに「やり方次第で農業は儲かる」と説き、後押しする。もちろん簡単に成功はしないが、地元で働き、暮らすことへの可能性を示す。
ドラマでは正登と多岐川をつなぐのが正登の娘・美穂であり、NHK「あまちゃん」に登場した地元アイドルグループ「GMT47」(GMTは地元の略)のメンバーだった松岡茉優の好演が光った。
この3人の個性と配置のバランスが功を奏して、地域活性化という一見地味なテーマが豊かなエンターテインメントになっていた。
来週、東日本大震災から4回目の3月11日を迎える。それは同時に福島第一原発の事故から4年でもあるが、今なお12万人もの避難者が不自由な生活を強いられている。
その一方で、全国各地の原発が、国の後押しで再稼働されようとしている。2月8日放送の「NNNドキュメント'15」(日本テレビ―STV)は、「再稼働元年~ここは原発の地元ですか?~」と題して、原発の“関係自治体”とは何なのかを掘り下げていた。
番組が取材したのは鹿児島県の川内原発、福井県の高浜原発、そして青森県に新設される大間原発だが、そこには共通の問題がある。
国は法律を改正して、住民が避難すべき範囲を大幅に拡大した。しかし、再稼働への同意を求められる「地元」の範囲は、福島での事故の前と変わっていないのだ。
たとえば高浜原発から4キロの位置にある京都府舞鶴市も、大間原発から23キロの函館市も国が決めた30キロの避難区域に入るが、原発の「地元」とは認められていない。
一旦事故が起きれば、市民が生命の危機にさえ直面するというのに蚊帳の外だ。そこには大きな矛盾があり、昨年、函館市が国と電源開発を相手に裁判を起こしたことも頷ける。
番組によれば、福島の12万人の避難者の大半が「地元」ではなく、「周辺」の町や村の住民だったという。私たちはこの事実をもっと重く受けとめるべきだろう。
(北海道新聞 2015.03.02)