碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

テレ東の深夜ドラマは、なぜ元気なのか?

2021年08月16日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

 

テレ東の深夜ドラマは、なぜ元気なのか?

 
今期、テレビ東京の深夜ドラマが、いつも以上に元気です。
 
帰ってきた「ヒットシリーズ」
 
まずは、帰ってきたヒットシリーズの1本目『孤独のグルメ Season9』(金曜深夜0時12分)。
 
主人公の井之頭五郎(松重豊)が、商談で訪れた町の食べ物屋に入り、一人きりで食事をする。
 
今回も、宮前平の「とんかつ しお田」をはじめ、このシンプルな内容を変えていません。
 
それでいて、「ひとり飯のプロ」としての振る舞いや言葉には、一層説得力が増しています。
 
そして、一昨年に放送されてサウナブームの火付け役となったドラマの続編が『サ道2021』(金曜深夜0時52分)です。
 
サウナ愛好家のプロ、“プロサウナー”を自任するナカタ(原田泰造)が各地の極上サウナを楽しみ、サウナ仲間(三宅弘城、磯村勇斗)に報告するのが基本スタイル。
 
こちらも、錦糸町の「黄金湯」などが登場し、定番路線に変更はありません。
 
そして、この2本の戦略的「変わらなさ加減」が、何ともうれしい。ホッとするのです。
 
聴けば見える「ポッドキャストドラマ」
 
元乃木坂46の伊藤万理華さんが主演の『お耳に合いましたら。』(木曜深夜0時30分)。
 
夜、ヒロインの高村美園(伊藤)は、ポッドキャスト番組のパーソナリティーをしています。
 
ポッドキャストはインターネットの音声配信。ネット上のラジオみたいなもので、個人が自由に発信することが可能です。
 
ただし、美園はプロとか、お仕事とかではありません。昼間の彼女は、漬物会社のマーケティング部に所属する社員です。
 
美園が自分の番組で語るのは、大好きなチェーン店のグルメ、略して“チェンメシ”。
 
自室に置いたマイクの前で、テークアウトした「富士そば」のコロッケそばや、「餃子の王将」のギョーザを食べながら、感想をまじえた実況を行うのです。
 
いや、実況をベースにした本音トークという感じですね。
 
好きなものを、好きなだけ、好きなように語り、それを誰かが聴いていてくれる幸せ。
 
人気が高まっている「音声コンテンツ」の魅力を、「映像コンテンツ」のドラマで描くという挑戦が面白いです。
 
おいしい「20代女子版 孤独のグルメ」
 
飯豊まりえさん主演『ひねくれ女のボッチ飯』(木曜深夜1時)は、いわば『孤独のグルメ』の20代女子版。
 
ただし、井之頭五郎は自分が見つけた店にふらりと入るのですが、こちらの主人公・川本つぐみ(飯豊)は違います。
 
SNSにアップされた、憧れの謎の男性が書き込む食レポを頼りに、実在の店に出かけて行くのです。
 
堪能するのは、町中華のカツカレーや大衆食堂のしょうが焼き定食など。
 
どんな料理もごく自然に、実においしそうに食べる、飯豊さんの「食べ芸」が見どころでしょう。
 
『お耳に合いましたら。』も、『ひねくれ女のボッチ飯』も、誰にも邪魔されず好きなことに特化していく楽しさに満ちているのです。
 
新機軸ドラマの「実験場」
 
上記のドラマ全部に共通するのは、「架空」の人物が、「実在」の場所や人やモノと出会い、その「実感」をドラマ仕立てでエンタメ化する構造です。
 
登場するグルメも、サウナも、チェンメシも、町の食堂も、視聴者が実際に「体験」することが可能。マイルドな「ドキュメンタリードラマ」です。
 
このフィクションとノンフィクション、虚と実の境目を行くドラマ作りは、すっかりテレビ東京の「お家芸」になってしまいました。
 
テレ東の深夜は、新機軸のドラマを開発する実験場です。
 
 

76年目の「8月15日」雨 合掌

2021年08月15日 | 日々雑感

2021.08.15


マックCM「宮崎美子」ピカピカのあの時代、空気も再現

2021年08月14日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

ピカピカのあの時代、空気も再現

マクドナルド「僕がここにいる理由」編

 

舞台は1971年、銀座の歩行者天国だ。デート中の女子中学生(宮崎美子さん!)の前に、日本に上陸したばかりのハンバーガー、しかもビッグマックが置かれる。

でも彼女は手をつけず、気まずいままデートは終わってしまった。

半世紀後、かわいい婦人(宮崎さんの2役)が、そんな思い出話を孫にしている。食べなかったのは、「だって恥ずかしいじゃない。好きな人の前で、こんなでっかいの」。

だが、じいじい(村上ショージさん)の前なら、「ぜんっぜん平気!何でだろ?」と笑う。そこで孫の少年は気づく。ビッグマックがもう少し小さかったら、自分はここにいなかったのだと。

この新作CMにはいくつもの驚きがある。まず、少女を演じて違和感のない宮崎さん。大学4年生だった80年にカメラのCMでブレークした時と同じ髪型が心憎い。

さらに、時代の再現性の高さだ。銀座1号店はもちろん、街並みや行き交う人のファッションも含め、70年代の空気に満ちている。

ずっと変わらず愛される場所。50周年にふさわしいメッセージだ。

(日経MJ「CM裏表」2021.08.09)


『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』の「再開」を心待ちにする理由

2021年08月13日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

 

『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』の

「再開」を心待ちにする理由

 

東京オリンピックが閉幕しました。
 
このオリンピックをめぐって起きた、たくさんの出来事。さまざまな意見や言説。
 
「戦いすんで日が暮れて」というより、作家の佐藤愛子さんの新著タイトルじゃありませんが、「戦いやまず日は暮れず」といった感がありますね。
 
もちろん、選手の皆さんには、「おつかれさまでした!」と言いたいです。
 
 
「たたかうペア」に拍手!
 
オリンピック開催中、バドミントンや卓球などのダブルスで、何組もの「たたかうペア」を見ました。
 
それぞれが、自分の強みを発揮するだけでなく、お互いの弱点をカバーし合いながらの勝負。
 
そこには、シングルの試合とはまた違う高揚感がありました。
 
ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ系)も、まさに「たたかうペア」の物語です。
 
思えば、ドラマや映画で主人公となるのは刑事ばかりで、ハコヅメ(交番勤務)の女性警察官の「バディーもの」という点が新鮮です。
 
ヒロインの一人は、「もう辞めよう」と思っていた新人、川合麻依(永野芽郁)。
 
そして川合が組んだ相手は、訳あって交番に飛ばされてきた刑事課の元エース、藤聖子(戸田恵梨香)です。
 
たとえば、藤は路上に倒れていた不審な男(モロ師岡)の靴底を一瞥(いちべつ)して、空き巣犯だと見破る。
 
また自殺予告を繰り返す若者にも本気で対応し、結果的に彼の命を救います。
 
さらに、女子中高生をターゲットにした連続傷害事件。川合は自分が行った事情聴取で、少女に無神経な聞き方をしていたことを深く反省していました。
 
このあたりは、泰三子(やす みこ)さんの原作漫画『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』に細かなエピソードを加えることで、被害者の微妙な心理と川合の葛藤を描き、見事でした。
 
 
「ダブルヒロインドラマ」の醍醐味
 
このドラマを見ていると、川合にとっての藤は、上司というより指導者や助言者、いわゆる「メンター」と呼ばれる存在に近い。
 
仕事だけでなく、「女子会」と称して一緒に飲むことも、しっかりメンタル面のサポートになっています。
 
藤と川合、2人の「キャラクター」と「組み合わせの妙」がこのドラマの魅力の源泉でしょう。
 
さらに、ドラマ全体が肩の力の抜けたユーモアに包まれていることが大きい。
 
川合のことを指す「ナチュラルボーン・ヘタレ」、「無名のゆるキャラ感」といった、笑えるセリフ。
 
警察署内に漂う「おっさん臭」に困った2人が、息を止めて「アヒル声」で話す抱腹絶倒のシーンなどは、脚本の根本ノンジさんのお手柄です。
 
永作博美さんと芳根京子さんによる、NHKドラマ10『半径5メートル』もそうでしたが、職場の先輩・後輩という女性ペアが活躍する秀作ドラマが目につきます。
 
しかも、この先輩・後輩の関係が、役柄を超えて女優としての2人と重なって見えてくるところが秀逸です。
 
硬軟自在の演技を見せる戸田さん。その胸を借りて、のびのびと跳ね回る永野さん。
 
徐々に成長していく後輩を通じて、先輩の生き方や魅力も見る側に伝わってくる。「ダブルヒロインドラマ」の醍醐味です。
 
今週はまだ「特別編」でしたが、永野さんの体調もよくなってきたらしいので、第5話からの再スタートを楽しみに待ちたいと思います。
 

「緊急取調室」“取り調べ不能な容疑者”こそもう一人の主役なのだが…

2021年08月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

天海祐希「緊急取調室」

“取り調べ不能な容疑者”こそ

もう一人の主役なのだが…



オリンピックが終わり、テレビに通常編成が戻ってきた。第3話までで止まっていた、天海祐希主演「緊急取調室」(テレビ朝日系)も、ようやく今週から再開となる。

思えば第4シーズンとなる今回、このドラマは開幕から攻めていた。2週連続で扱われたのはハイジャック事件。犯人は70年代の「伝説の活動家」大國塔子。しかも演じたのは桃井かおりだ。

50年も潜伏していた彼女が、なぜハイジャックなどしたのか。その真相もさることながら、見どころはやはり真壁(天海)による塔子の取り調べだ。

塔子は、「権力の手先」である真壁を歯牙にもかけない。得意の弁舌で押したり引いたりの独壇場。途中、塔子が真壁にコップの水をあびせるシーンなど、「なめんじゃないわよ、私を誰だと思ってんの!」という桃井VS天海のリアル女優対決に見えたほどだ。

この「桃井編」に比べ、岡山天音や神尾楓珠がプロボクサーを演じた第3話は、残念ながら弱い。オリンピックに合わせたスポーツネタとはいえ、犯人像や事件の中身がいかにも薄味だったのだ。

放送開始から7年。あらためてキントリの役割を振り返ると、相手は一筋縄ではいかない犯人だ。簡単に自白しない。言うことも嘘を含めて二転三転する。つまり「取り調べ不能な容疑者」こそ、もう一人の主役なのだ。

再開後は、そんな原点を踏まえた物語を見たい。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.08.11)


なぜ説明がない? 五輪閉会式「ダンス」で流れたのは、武満徹作曲のドラマ『波の盆』テーマ曲

2021年08月11日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

『波の盆』の舞台 マウイ・ラハイナ浄土院

 

 

なぜ説明がない? 

五輪閉会式「ダンス」で流れたのは、

武満徹作曲のドラマ『波の盆』テーマ曲

 

8日夜、新国立競技場で、東京オリンピックの閉会式が行われました。
 
その中盤、一瞬暗くなった会場の中央で、女性によるダンスが披露されました。
 
ダンサーは、長野県出身のアオイヤマダさん。
 
灯籠を下げた女性たちが、周囲をゆっくりと歩き、中央でアオイさんがオリジナル・ダンスを繰り広げました。
 
ダンスのバックに流れた音楽が、スペシャルドラマ『波の盆』(日本テレビ系)のテーマ曲だったので、驚きました。
 
この美しい名曲を作ったのは、世界的な作曲家である武満徹さん。きちんとした説明がなかったことが不思議です。
 
『波の盆』が放送されたのは、1983年の秋。
 
脚本は倉本聰さん。主演は笠智衆さん。音楽が武満徹さん。そして演出は実相寺昭雄監督。当時、最高の「座組み」と言っていい面々です。
 
制作は日本テレビとテレビマンユニオン。
 
私自身はアシスタント・プロデューサーとして携わっていました。準備段階から撮影はもちろん、東京コンサーツによるサウンドトラックの収録にも立ち会っています。
 
『波の盆』は、明治期にハワイ・マウイ島に渡った、日系移民1世が主人公のドラマです。
 
移民1世の山波公作(笠智衆)は、サトウキビ畑での過酷な労働に耐え、家庭と理髪店を持ち、子どもたちを育ててきました。
 
しかし1941年、日本軍の真珠湾攻撃により、その運命が大きく変わります。
 
また成人した子どもたち、つまり2世たちは、アメリカ軍の日系人部隊として、ヨーロッパ戦線などで厳しい戦いを経験しました。
 
このドラマは、公作が妻ミサ(加藤治子)を亡くして初めて体験する「お盆」、その1日に起きた物語です。
 
日本で亡くなったはずの四男・作太郎(中井貴一)の娘、つまり公作の孫だという若い女性・美沙(石田えり)が突然訪ねてきます。
 
それによって、公作の中で、自身が歩んできた激動の「過去」と「現在」が交錯していくのです。
 
この年の「芸術祭大賞」をはじめ、いくつもの賞を受賞しました。
 
名作ドラマのテーマ曲が、38年の時を超え、こうしてオリンピックの閉会式で、世界に向けて流されたことに感慨を覚えると同時に、武満さんの名前や曲名も含め、何の説明もないことに違和感をもったのでした。
 
 
『波の盆』の加藤治子さん、笠智衆さん(写真:実相寺昭雄研究会)
 
 
 

76年目の「8月9日」 合掌

2021年08月09日 | 日々雑感

2021.08.09


【気まぐれ写真館】 「東京2020オリンピック」本日閉幕!

2021年08月08日 | 気まぐれ写真館

ボランティアへの「感謝ピンバッジ」


深夜はドラマの実験場  鍵は虚実皮膜にあり

2021年08月08日 | メディアでのコメント・論評

 

 

 

碓井広義の放送時評>

深夜はドラマの実験場 

鍵は虚実皮膜にあり

 

今期、テレビ東京-TVHの深夜ドラマが元気だ。

金曜深夜のヒットシリーズ「孤独のグルメ Season9」は、主人公の井之頭五郎(松重豊)が商談に訪れた町の食べ物屋で食事をするというシンプルな内容を変えていない。それでいて、「ひとり飯のプロ」としての振る舞いや言葉には説得力が増している。

これに続くのが、一昨年に放送されてサウナブームの火付け役となったドラマの続編「サ道2021」。サウナ愛好家のプロ、“プロサウナー”を自任するナカタ(原田泰造)が各地の極上サウナを楽しみ、サウナ仲間(三宅弘城、磯村勇斗)に報告する基本スタイルに変更はない。

共通するのは、「架空」の人物が「実在」の場所へ行き、その「体験と実感」をドラマ仕立てで伝える構造だ。登場するグルメもサウナも、視聴者が実際に行くことが可能な「ドキュメンタリードラマ」である。フィクションとノンフィクションの境目を行くドラマ作りは、以下の新作でも発展的に踏襲されている。

木曜深夜の飯豊まりえ主演「ひねくれ女のボッチ飯」は、いわば「孤独のグルメ」の20代女子版。

ただし、井之頭五郎は自分が見つけた店にふらりと入るが、こちらの主人公・川本つぐみは違う。SNSにアップされた食レポを頼りに、実在の店に出かけて行き、町中華のカツカレーや大衆食堂のしょうが焼き定食などを堪能する。どんな料理もごく自然に、実においしそうに食べる、飯豊の「食べ芸」が見どころだ。

「ボッチ飯」の前は、元乃木坂46の伊藤万理華が主演する「お耳に合いましたら。」。ヒロインの高村美園がポッドキャスト番組のパーソナリティーとなる。ポッドキャストはインターネットの音声配信。ネット上のラジオみたいなもので、個人が自由に発信することが可能だ。

美園が自分の番組で語るのは大好きなチェーン店のグルメ、略して“チェンメシ”。自室に置いたマイクの前で、テークアウトした「富士そば」のコロッケそばや、「餃子の王将」のギョーザを食べながら実況を行う。

好きなものを、好きなだけ、好きなように語り、それを誰かが聴いていてくれる幸せ。若者の間で人気が高まっている「音声コンテンツ」の魅力を、「映像コンテンツ」のドラマで描くという挑戦が面白い。

深夜は新機軸のドラマを開発する実験場である。

(北海道新聞「碓井広義の放送時評」2021.08.07)


深夜はドラマの実験場  鍵は虚実皮膜にあり

2021年08月08日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

 

 

 

碓井広義の放送時評>

深夜はドラマの実験場 

鍵は虚実皮膜にあり

 

今期、テレビ東京-TVHの深夜ドラマが元気だ。

金曜深夜のヒットシリーズ「孤独のグルメ Season9」は、主人公の井之頭五郎(松重豊)が商談に訪れた町の食べ物屋で食事をするというシンプルな内容を変えていない。それでいて、「ひとり飯のプロ」としての振る舞いや言葉には説得力が増している。

これに続くのが、一昨年に放送されてサウナブームの火付け役となったドラマの続編「サ道2021」。サウナ愛好家のプロ、“プロサウナー”を自任するナカタ(原田泰造)が各地の極上サウナを楽しみ、サウナ仲間(三宅弘城、磯村勇斗)に報告する基本スタイルに変更はない。

共通するのは、「架空」の人物が「実在」の場所へ行き、その「体験と実感」をドラマ仕立てで伝える構造だ。登場するグルメもサウナも、視聴者が実際に行くことが可能な「ドキュメンタリードラマ」である。フィクションとノンフィクションの境目を行くドラマ作りは、以下の新作でも発展的に踏襲されている。

木曜深夜の飯豊まりえ主演「ひねくれ女のボッチ飯」は、いわば「孤独のグルメ」の20代女子版。

ただし、井之頭五郎は自分が見つけた店にふらりと入るが、こちらの主人公・川本つぐみは違う。SNSにアップされた食レポを頼りに、実在の店に出かけて行き、町中華のカツカレーや大衆食堂のしょうが焼き定食などを堪能する。どんな料理もごく自然に、実においしそうに食べる、飯豊の「食べ芸」が見どころだ。

「ボッチ飯」の前は、元乃木坂46の伊藤万理華が主演する「お耳に合いましたら。」。ヒロインの高村美園がポッドキャスト番組のパーソナリティーとなる。ポッドキャストはインターネットの音声配信。ネット上のラジオみたいなもので、個人が自由に発信することが可能だ。

美園が自分の番組で語るのは大好きなチェーン店のグルメ、略して“チェンメシ”。自室に置いたマイクの前で、テークアウトした「富士そば」のコロッケそばや、「餃子の王将」のギョーザを食べながら実況を行う。

好きなものを、好きなだけ、好きなように語り、それを誰かが聴いていてくれる幸せ。若者の間で人気が高まっている「音声コンテンツ」の魅力を、「映像コンテンツ」のドラマで描くという挑戦が面白い。

深夜は新機軸のドラマを開発する実験場である。

(北海道新聞「碓井広義の放送時評」2021.08.07)


【書評した本】 『演劇入門~生きることは演じること』

2021年08月08日 | 書評した本たち

 

 

 

デジタルの時代でも生き延びる「演劇」

 

鴻上尚史

『演劇入門~生きることは演じること』

集英社新書 968円

 

舞台に立つ俳優でもなく、演劇の熱心な観客でもない。そんな人も一読の価値ありだ。劇作家・鴻上尚史の新著『演劇入門 生きることは演じること』である。  

著者は言う。人間は演じる存在であり、誰もが「見る人=観客」を想像して振る舞っていると。役柄は「親」だったり、「上司」だったり、「近所の住民」だったりする。

私たちの人生は演劇そのものである。それが、アナログの典型のような演劇がデジタル時代も生き延びている理由だ。  

そして演劇の知恵や演劇的手法は、演劇人でなくとも実人生に応用することができる。たとえば俳優が目指している、「予想を裏切り、期待に応える」演技は、私たちが実生活で行うスピーチや表現の基本だ。  

また「演劇の創り方」という章では、人の気持ちを動かす秘訣が明かされる。俳優の仕事は傷つくことだ。一番隠したい恥ずかしい部分を見せることで、人の気持ちが動くと言う。

さらに演技は「セリフの決まったアドリブ」であり、プレゼンなど人前で話す際も、内容を考えると同時に観客の反応を感じ取れば、彼らの気持ちを揺り動かせる。  

スマホやSNSによって希薄になった、生身の人間関係。「つながり孤独」という言葉が象徴するように、私たちには、どこかで生身の人間を感じたいという欲求がある。  

たとえ「不要不急」と言われようと、劇場で見る演劇は、今後も身近に現実の人間の存在を感じる、貴重な機会であるはずだ。

(週刊新潮 2021年8月5日号)

 


【気まぐれ写真館】 暑さで、ガメラも屋内に・・・

2021年08月07日 | 気まぐれ写真館


76年目の「8月6日」 合掌

2021年08月06日 | 日々雑感

2021.08.06


【気まぐれ写真館】 「40℃の日」の夕景

2021年08月06日 | 気まぐれ写真館

2021.08.05


【気まぐれ写真館】 なんと、40℃!

2021年08月05日 | 気まぐれ写真館

2021.08.05