河太郎の読書日記

本とか映画とかいろいろ

無名

2006-09-05 20:07:27 | 読書(その他)
沢木耕太郎、幻冬舎文庫。
この人の本は、必ず、文庫で買っている。
唯一の例外は、全集の「オン・ザ・ボーダー」だけ買ったこと。
だから、「1号線を北上せよ」は買っていない。
この人が描くと、いろんなものが、さわやかに、さらっとしたものに見える。
さらっと、表面だけなぞってるのかもしれないけど、それでも、
父親が死んで、死体のひげを剃ったときの、何とも言えない感覚、というのは、
透き通った奥の何かを直視するのが怖いような、そういうのがよくわかって怖かった。
老人介護、自宅療養、現代では当たり前になりつつある死への儀式を、
筆者は淡々とこなす。死ってこんな風に訪れるのかあ、といった風情で。
薄情なのではない。
私は、そういう淡白さに親近感を持って、「深夜特急」に出会った大学生の頃から、
ほぼ全作品を(ただし文庫で)読んでいる。
コメント
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