宮部みゆき、講談社。
この人の書く話は細部がリアルなので、
サスペンスになるとちょっと怖い。
これは、どちらかというと初期の作品に似た、
少年が主人公の青春小説。
花菱家の長男英一と弟光(ピカ)が、初期の泥棒と双子みたいだ。
花菱家の父母が古い写真館のある土地を買い、
建屋を壊さずにそのまま住むことになった。
元の主である小暮老人はここで死亡、幽霊が出るという噂が立つ。
700ページもあるだけあって、話はけっこう広がっていく。
前半は、心霊写真探偵気取りな話が続くが、
そのうち、英一とピカの間にいた死んだ妹風子が鍵となり、
脳天気に見えた花菱家のわだかまりがあらわになる。
一方で、写真館を手配した不動産に務める垣本という女性が
無愛想なくせに自殺未遂をするもんで気にかかる、と。
人生いろいろ。
生きてたら、このくらいみんな抱えてるんだろうけど、
小説的にはややこしくなるからシンプルになりがち。
そこを詰めていくとこんな小説になるのかな。