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私が 35㍉フィルムに拘ったのは,映画撮影用の
ネガフィルムの端尺が手に入ったからでした。
… … …
フィルム(可燃性)に,父親から火に十分気をつけろと言われていました。
あるとき、父親に内緒で,庭で短いフィルムにマッチで火を点けてみました。
細長いフィルムは火だるまの蛇のように、その辺を飛び回りました。
あまりの火の勢いにびっくりした経験があります。
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京都松竹下加茂撮影所のフィルム倉庫から大火災になりました。
フィルム素材はセルロイドでニトロ・セルローズと恐ろしい名前でした。
大火災を契機に、フィルムは不燃性化に進みます。
徐々にアセテート・ベースになっていきます。
… … …
映画撮影用のネガフィルムは、市販の写真用の35㍉フィルムに比べて
少し肉厚でした。
映画はⅠ秒間に24コマ機械の中を走ります。
映画の画面は35㍉ライカ判の半分(ハーフ判,ペンサイズ)ですから
24×18㍉の画面になります。それが24コマですから、
18×24≒ 43㌢
43㌢ ≒1,5フィートになります。
このスピードに耐えるようにベースが肉厚にできていたのかもしれません。
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左がネガフィルム 右がポジフィルム
… … …
35㍉フィルムの両側に、パーフォレーションと名付けられた、
穴が空いています。
その穴の形がネガフィルムは穴の両側が少し外に膨らんでいます。
それをネガ目と言っていました。
映画館で映写用のポジフィルムのパーフォレーションは四角形です。
それをポジ目と名付けられていました。
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フィルムをダーク・バッグの中で、パトローネにフィルムを巻き込みます。
中軸にフィルムを止めるのに,絆創膏を使っていました。
セロテープはまだ市販されていなかったようです。
… … …
コダックからカラーフィルム、エクタクロームが輸入されていました。
このフィルムのパーフォレーションは「ポジ目」でした。
日本ではこの内式のカラーフィルムの現像ができませんでした。
箱の中に,タブの付いた黄色い袋が入っています。
そのタブに万年筆で
。
93 Nishida-cho,sakyoku,
Kyoto JAPAN
住所を書きます
宛先はハワイ,ホノルルの現像所です。
ここは、色彩か鮮やかに仕上がるとの噂でした。
本社,ロチェスターに送ったこともありました。
フィルムを送るときは、郵便局から有料で航空便をはり込みました。
現像後,リバーサルを紙のマウントに入れて黄色い箱が船便で 返送されます。
1ヶ月ほど忘れた頃、手元に届きますからいつの写真か戸惑います。
… … …
フィルムは現像料込みの価格でした。
アメリカの独禁法でやがて現像料は分離されます。
他の現像所で有料で処理できるようになります。
日本製のカラーフィルムも,現像料は含みません。と記されるようになりました。
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