昔、中野にクラシックという喫茶店がありました。
かなりの名物店だったのでご存知の方もいらっしゃるかも知れません。
きれいとは全く言えない店内と、ほとんど真っ暗な電気。破れた椅子。
ワンカップの空き瓶に温い水をいれて運び、マヨネーズか何かのキャップにコーヒーミルクを入れてくる半分嫌がらせみたいな感もありました。
ジュースを頼むとオレンジコンクをかなり薄めに割ってくるバブル時代に有り得ない店でした。
それでも当日コーヒー120円なのとかなりの無干渉さや独特の雰囲気もあっていつもそれなりに混雑していました。
クラシックの名の通り、店内ではクラシックのリクエストができ、竹の針のレコードプレーヤーでレコードをかけてくれました。
入口に黒板があり、いつも何曲かのリクエストがありました。
僕はバロックに興味をもっていた頃で、唸るようなマーラーを聞きながら、自分のリクエストしたバロックの小品がかかるのを暗闇でぼんやり待っていました。
多分、それなりに古いレコーディングのパイヤールが演奏するパッヘルベルのカノンがあり、柔らかく伸びやかで実にいい音でした。
当時、都内にあった音響を自慢するクラシック喫茶程の設備などなかったはずですが、とても心地いい場所でした。
カノンを聞くといつも思いだします。
今日から都内に出張です。
暑そうだなあ。