内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

お湯が出ない

2014-09-05 20:00:09 | 雑感

 九月一日の昼過ぎから家のボイラーが使えなくなった。突然のことで、いったいどうしたことかと慌てふためき、いろいろと試してみたが、どこの蛇口を開いても、数秒後にはボイラーの電源が自動的に切れてしまう。七月に入居してからずっと何の問題もなく使えていたのに、やれやれ故障かと暗い気持ちになる。翌日朝まで様子を見たが、同じことの繰り返しでお湯が出ない。仕方なしに不動産屋の担当者に連絡して、事情を説明する。取り扱い業者に自分で連絡しろと言われたので、すぐにしたが、見に来られるのは翌日朝だと言う。仕方がない。待つ。
 翌朝、巨体の若い兄さんが来てくれて、ボイラーの蓋を外していろいろ点検してくれたが原因が分からない。同僚に電話して相談しながら、さらにあれこれいじっていたが、やはり埒が明かない。二十分ほどして、呆れたような顔をして「ガスが来てないよ」と言う。点火は電気だが、湯沸かし自体はガスであることは、ボイラーの正面の蓋についた小さな窓から確認できるから、私も承知していた。しかし、どうして突然ガスが来なくなったのだろう。巨体の兄さんは建物の廊下にある各戸のガス・メーターが収納されたボックスを開けて、「あなたのうちのメーターついてないよ。九月一日に外したとこの紙に書いてある」と私に指で示す。愕然とする。「これじゃあボイラーがちゃんと機能するかどうか点検のしようもないよ」と言い残して、巨体の兄さんは帰っていった。
 七月の入居時にエネルギー・ストラスブールという会社と契約し電気が使えるようになると同時にボイラーも使えるようになったから、別にガスの契約をしなくても、ボイラーのガス使用契約もその中に含まれているのだろうかと、実は半信半疑だった。暖房もガスなのだが、寒くなってきたら契約すればいいかとほっておいたのである。台所にはガス管がそもそも来ておらず、料理にガスは使えない。最近は電磁プレートが多数派で、今でもガスを料理に使っているアパートは大幅に減少している。
 不動産屋やエネルギー・ストラスブールに連絡を取り、事情を説明すると、ガスの契約をしなければボイラーが使えないに決っているだろうと呆れられる。もちろん彼らの言うとおりである。いかに私が間抜けでも、もし入居時に電気だけではボイラーが作動しないのを目の当たりにすれば、すぐに気づいてガスの契約をしただろう。わからないのは、いったいなぜ、ガスの契約なしに約二月間何の問題もなくボイラーが使えていたのかということである。不動産屋は、おそらく前居住者がガスの契約解除を忘れていたのだろうと言う。おそらくそんなところなのかもしれない。つまり、私は約二月間ガス料金を支払わずに使用していたわけであるが、これは故意ではなく、おそらくは前居住者の落ち度であるから、私が責められる筋合いはない。
 というわけで、エネルギー・ストラスブールとガスの契約をその日のうちに交わし、開栓をお願いしたが、メーター設置と開栓作業のために係員が来るのは、なんと来週まで待たねばならず、木曜日の朝一番ということになった。つまり、まだ一週間お湯なしで生活しなくてはならないのである。当然、お風呂にも入れないし、シャワーを浴びることさえできない。
 かくして、徒歩五分のところにある市営プールには、温水シャワーを使うためにも、普段にまさる高いモチベーションとともに通っているのである。
昨日の新学期最初の教員会議の席で、こんな話をフランス人の同僚たちにすると、「銭湯に通っていた頃の日本人の生活みだいだねぇ」と揶揄されてしまった。