今日日曜日、天気予報では、朝から曇りがち所により雨となっていったが、朝八時の開門と同時にプールに入場したときには、鱗雲が棚引いてはいたものの青空も広がり、その一際高く見える空の下、一時間ほど泳ぎ、その後水泳専用のプール脇のジャクジー付きプールで体をマッサージしてから上がる。明日から半月間、点検整備のために、このプールは閉鎖になる。その間は、ちょっと遠くなるがバスに乗れば十分足らずのところにある市営プールに通おうかと思っている。そのプールはまだ行ったことがないので、明日早速下見を兼ねて行ってみるつもり。
プールから帰ってきてからは、昼前から降りだした細雨が窓外の樹々の葉を濡らすのを時々眺めながら、ぽつりぽつりと学生たちから送られてくる古代文学史のテキストの仏訳を即座に添削してはすぐに送り返すという作業を繰り返す。
その作業の手が空くと、一昨日届いたレオナルド・ダ・ヴィンチの『絵画論』を拾い読みする。ダ・ヴィンチの絵画論にはいろいろな版が各国で出版されているが、私が購入したのは、アンドレ・シャステル(1912-1999)というフランスを代表する大美術史家が、ダ・ヴィンチが残した膨大な草稿からテーマごとにまとめて編纂・仏訳したもので、初版は一九六〇年。今回購入したのは、Calmann-Lévy 社から二〇〇三年に刊行された改定増補版で、縦三十二センチ横二十五センチの大型本(総ページ数は二二四頁だが、上質紙を使用しているので本の厚さも二センチほどあり、手に持って頁をめくるには重すぎる)。ダ・ヴィンチの作品、デッサン、ノート等が精度の高いカラー印刷で多数収録されており、それを眺めているだけでも、神秘的な影を湛えた絵画作品、ついに完成されることのなかった作品のための多数の人物デッサン、途方もなく広大な関心領域と深い洞察力を示すノート・スケッチ・観察記録など、豊穣深遠なダ・ヴィンチの世界を逍遥することができる。
それに、何と言っても、ダ・ヴィンチ研究をはじめイタリア・ルネッサンス期美術についての専門家であり、犀利な知的分析能力と繊細な美的鑑識眼と有機的に連関した膨大な博識を兼ね備えた稀有の美術史家であるアンドレ・シャステルの洗練されたフランス語訳でダ・ヴィンチの絵画論が読め、しかも多数の脚注が本文のより深い理解とさらなる探究へのよき導きとなっているのであるから、これはその意味でとても贅沢な作りの本であり、48€70というのはむしろお買い得とさえ言えるかもしれない。
これからの生涯の愛蔵書の一冊となることであろう。