昨日の昼前、知り合いのパリ・ナンテール大学の哲学教授からメールが届き、ちょっと相談したいことがあるから、都合のいい時間帯に電話してくれないかとあった。ちょうど机に向かっていたので(というか、日中のほとんどを机の前で過ごすから、メールが届けばいつでも直ちに返事ができる態勢なのだが)、すぐに携帯を手にとって電話したら、先方でその速さに驚いていた。
相談というのは、今年中に消化しなければならない予算が残っているのだが、その使い道について知恵を貸してほしいということだった。
彼は二つのアイデアをもっていて、一つは、日本から二三人研究者を呼んで、シンポジウムを開くという企画。しかし、時期が九月上旬か中旬という。もう二月ちょっとしかない。なぜ九月上旬かというと、パリ・ナンテール大学は新学期の開始を九月一日から二十一日遅らせたので、その間、つまり新学年開始前なら会場確保がしやすいし、まだ学生たちが来ないから、RERもそれほど混まない。確かに、それらは利点ではあるが、例えば、我がストラスブール大学は、予定通り九月一日から新学年が始まるから、その開始直後のシンポジウムには私はとても参加できる状態ではない。それに日本から来てくれる人が見つかる保証もない。ということでこの第一案は没。
二つ目は、出版の企画。日本の哲学的テキストの翻訳集で、何かいいアイデアはないかという。実は、一昨日、イナルコの先生と別の出版企画の話をZOOMでしたところだったので、その時私が提案した、美学的テキストのアンソロジーの話を出してみた。美というテーマなら、幅広くテキストを集めることができるし、哲学プロパーばかりでなく、もっと広く協力者を募ることができるし、読者層の広がりも期待できる。そもそも私自身がこの企画に乗り気なのである。
この話には彼も乗ってきて、素案を作ってくれないかと頼まれた。それはいいのだが、今週末にはほしいという。来週には企画書を作成して、大学当局と掛け合うためだという。ちょっと急だが、すぐに作業に取り掛かり、一応十人ばかりの著者とそれぞれの候補テキストを選び終え、それぞれに簡単な説明文を添えた。
ただ、私一人ではどうしても選択に偏りが出るであろうからと、相談すべき人たちのリストも添えたし、私自身、イナルコの先生にも相談のメールを送った。他方、今年の一年生の中で最優秀の学生で、哲学部に同時に登録していて、特に美学に興味がある学生にも、率直な意見を聞かせてほしいとメールを送ったら、すぐに返事がきて、それが期待通り、私の素案を補ってくれるような内容だった。
降って湧いたような話で、実現するかどうかわからないが、もし企画が通れば、この夏休みは、一方でホメロスの叙事詩を味読しながら、近現代日本における美の考察をいくらか系統的に読むことになるだろう。