国語屋稼業の戯言

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注釈式志望理由書の書き方

2022-10-25 10:59:31 | 国語

●志望理由書などが苦手な生徒さんが多いので大学提出用の例を載せてみようと思う。中学生の方も少しは参考になるやもしれないと断言できなくはないとは言い切れない。


●過去の生徒の志望理由書を基に架空大学の志望理由書にしたものなので、どこかつじつまがあっていなかったら、申し訳ない。

●多少、日本語として不自由なところもあるが、意外と大学の先生は見逃してくれることが多い。大事なのは中身なのだろう。




【テーマ】
地域デザイン学科の本コースを志望する理由を書いてください。たとえば、××大学でどのようなことを学びたいのか。なぜ、AO入試で受験するか等について、自分自身の言葉で文章にまとめてください。


(注)
●コースや学科だけにこだわらず、××大学についても考えること。
●一般入試でない理由を考えること。
●パンフ丸写しはもちろんだめ。注意すべきは面接で何を聞かれても書いた内容について答えられるようにする覚悟が重要。



【解答例(でいいのか?)】
①私は将来、地域を活性化するため、あるいは維持するために、イベントや観光について学びたいと考え、××大学地域総合学部地域デザイン学科地域政策コースを志望しました。そして、将来は地域のために観光やイベントについて関係する仕事に就きたいと考えています。
 今、日本の多くの地域(②)が問題を抱えています。私が住んでいる〇〇では特に、少子高齢社会が進み、企業も減り、若者は〇〇の外へ向かう傾向があります。この傾向を止めるために、観光やイベントを活用し、若者が住み着く地域に〇〇をしたい(③)のです。
 観光について、ル・モンドの電子版(④)に世界観光機関の次のような言葉が紹介されていました。観光は「文化的矜持、他国人への親睦と理解、自然・文化遺産の所有意識および管理に対する責任感」(⑤)を作り出すという言葉でした。過疎が進む〇〇に私は住んでいるのですが、これらの感覚や感情を作り出すことは重要だと私は考えるのです。そのこと学ぶときに重要だと考えた(⑥)のが、総合的に地域を学ぶことでした。私は確かに経済的な効果を気にしています。人の定住に経済は影響を与えるでしょう。しかし、経済だけではありません。お金だけで人は慣れ親しんだ土地を離れるわけではないと思います。しかし、プライドを持てなかったり、その土地への責任感がなくなったりすれば、そこを離れることは増えるでしょう。(⑦)そして、先ほどの「文化的矜持」「自然・文化遺産」「親睦と理解」「責任感」という言葉が地域総合学部地域デザイン学科を構成する地域文化、地域環境、地域教育の各コースと密接に関係していると思うのです(⑧)。××大学地域総合学部地域デザイン学科で学ぶことで、私は地域政策を中心にした地域の専門家になれ、地域で観光とイベントについて考える上で重要な友達や先生方とも出会えると思い、志望したのです。
 観光以上に、イベントに注目しているのは(⑨)、ボランティア部に所属していて、イベントの重要性に気付いたからです。海づくり大会に参加したときは、多くのことに気付きました。手づくり感をあえて出し、もてなしの気持ちを表現すること、前もって存在したコンセプト「〇〇県の◆◆◆」との連携、総括として経済波及効果が7億3千3百万円だったこと、精神的な総括としての御製に「(略)集ふ人々(略)」とまとめられ、「集ふ人々」に自分が入っていることの不思議な感情、カーボン・オフセットを学ぶ機会であったことなど、多くのこと(⑩)に気付けたのです。イベントは、このような気付きを与えるものなのです。私は、もっと地域の内外に有効なイベントに参加し、将来、企画したいと思っています。
 また、観光とは、迎え入れる方にとっては、日常になることはあっても、来られる方には非日常であり、イベントという非日常のできごとと共通点は多い(⑪)ので、両方を意識して学んでいくと、地域について多くの発見ができ、地域に有効なことが考えられると思います。
 そのためには、××大学で学びたいことがたくさんあります(⑫)。
 地域総合学入門、統計学基礎、地域産業論、フィールドワーク基礎などの基礎科目で地域についての基本を学び、その上で地域組織論、総合観光論、地域産業連関分析演習などの専門科目を理解することで、NPOや企業、地方公共団体などの活動について深く学び、自分で調査する方法を学び、自分なりの地域での「観光・イベント」について考えをまとめ、私の住んでいる〇〇東部での「観光・イベント」について、現地での調査も含めた卒業研究をしたいと考えています(⑬)。
 今回、AO入試を選んだ(⑭)のは、このような考え方をしている私らしさを直接、試験してもらえる機会だと捉えたからです。この入試を通して私はより成長し、自分の将来への考えを発展させたいのです。「地域再生を担う実践力を持つ人材の育成及び地域再生活動の推進」を行っている××大学地域総合学部地域デザイン学科なら、私も成長し、また協力(⑮)できることもあると思います。
 以上のような理由で私は××大学地域総合学部地域デザイン学科地域政策コースを志望しました。




【注釈】
①冒頭に主張をまとめておくとよい。まとめるときにはキーワード(「観光」など)を意識しよう。
②「××大学」とは、地域名なんだが、××というローカルな存在と捉えていないことをアピールしている大学である(パンフレットを読めばわかる)。全国区を目指している大学なのだ。
③第一段落より限定的になっていて、若者の定住という問題意識を表現できている。
④フランスの新聞。日本語の電子版はhttp://www.diplo.jp/。アメリカでも日本でもない視点の持ち主に思える。国際感覚は英語ができなくてもアピールできるのだ。
⑤引用と自分の言葉を明確にわけよう。長すぎる引用は自分の意見が減るのでいけないが、引用は知性を感じさせることもできるので重要である。
⑥「重要だと考える」が二度続いて下手な日本語(他にもあるけれど)だが、逆に言うと大学の先生は内容を重視しているせいか、この文章でこの生徒は合格している。きれいな日本語に越したことはないのだけれど。
⑦先の引用文を生かしていることに注目してほしい。また、経済面、プライド、責任感など多面的に物事を考えていることをアピールできている。1、2年生はこのように多面的に考えることがAO入試では重要なので、単純に思考するくせを止めるようにしよう。
⑧地域政策、総合政策、観光などを学べる大学は多い。しかし、××大学だけを志望していることを説明するために、××大学ならではの魅力を説明しなくてはいけない。ここではコース編成の特徴を利用している。なぜ、他の大学ではだめなのかを面接でも説明できるようにしておこう。そのためには大学の特性をつかむことだ。
⑨観光の一点突破には問題がある。極端な話、観光学部に行けと言われかねない。観光と関連するキーワードであるイベントで話題を展開し、それを避けている。
⑩自分の経験を活用していることに注目してほしい。それも全国大会に出たというレベルではなく、普通の高校生でもできそうなことばかりである。普通の高校生と違うとすれば「多くのこと」に気づけたことである。数字や御製の引用をみて、自分にできるか不安に思った生徒もいるかもしれないが、自分のやったことをネットで検索すれば、これくらいの情報は出てくる。
⑪首尾一貫性がないと注意されたことがある生徒は、あげた事項が関連しているかを確認し、それを表現する。
⑫論理性を持った文章にするためには、接続表現が重要であるが、接続詞にとらわれてはならない。文や段落で接続表現をすることもある。前の内容をまとめたり、後の展開を予告したりするのが、接続表現なのである。うまく活用しよう。
⑬大学で学びたいことを書くときに一番参考になるのは、科目名である。その際、その科目の内容をHPのシラバスなどで確認するのは言うまでもない。その科目が自分の主張と一致していることが極めて重要になる。
⑭仮に書かなくてもよい場合でも、なぜ一般入試でなく、AO・推薦入試を選んだかを説明できるようにしておこう。「一般入試では合格できないからです」なんて、もってのほか。
⑮学ぶというのは、受身になりがちである。受身の大学生なぞ偏差値=一般入試で選んだほうがいいに決まっている。君が大学に何ができるかを考え、アピールしよう。



志望理由書関連では

注釈付自己推薦書の書き方

志望理由書ー経験の作り方ー(もしくはでっち上げ方)

↑上↑の両記事も参照のこと。

 

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