国語屋稼業の戯言

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笑ひ話を楽しまん! 満月と稚児〔完結〕「ば」・「けり」・単語暗記のコツ

2023-03-13 11:08:53 | 国語

【現代語訳】

八月十五日の夜の月を迎えて、たくさんの僧が集まった(そうだ)。稚児も一緒に、月を眺めていたところ、大きい稚児「今日の月くらいの餅を抱えてゆっくりと食べたら、楽しいだろう」とささやいたときに小さい稚児が「なるほど、大きさはあれくらいで良いが、厚さが分からないと」と言った(そうだ)

【改変済古文】

八月十五日の月を迎へ、坊主(ばうず)あまた集まりけり。児(ちご)もまじはり、眺めゐけるに、大児の「今日(けふ)の月ほどの餅(もち)をかゝへて、そろそろと食はば面白からむ」とささやきけるときに小児「げに、大きさはあれほどでも良きが、厚さを知らねば」など言ひけり。

 

【解説】

「あまた=数多=たくさん」あたりまでは解説したと思う。古文が苦手な人は実は「まじはり=まじわり」でこける。漢字で書けば「交わり」である。これでもいまいちという高校生は確実にいる。そういう生徒さんでも「交際」は知っているし、「外交」は聞いたことがある。その「交」である。あえて辞書は引かないでおこう。ここでわかることは漢字の訓読みを増やそうということである。そして、「人と交わる(人と交際すること)」などの慣用句などを増やすことである。

 さて、古文単語ということについても軽く触れておこう。今回は「セット」化をすることと語呂合わせである。セット化というのは類語やら反対語を一緒に覚えようということである。また、後述するが短文に複数の重要単語に入れておくという手もある。語呂合わせと言うのは駄洒落や語感で意味を覚えるきっかけにしようということである。例えば

 

そこら

ここら   たくさん  「ショコラ、ココア、あまかった」もう「たくさん」だ!

あまた

 

という感じである。300~400語を覚えるとして、これだけで1%が終わってしまった。あっけないな。

語呂合わせは全体の10%程度、セット化は自力(単語集を活用。初めからそういう単語集もあるけど)で50~100セットくらい作れると良いなあ。

 

大児の「今日(けふ)の月ほどの餅(もち)をかゝへて、そろそろと食はば面白からむ」とささやきけるときに

(大きい稚児が「今日の月くらいの餅を抱えてゆっくりと食べたら、楽しいだろうなあ」とささやいたときに)

 

「大児の」の「の」は「が」。現代でもあるでしょ、「君の言うことはもっともだ」の「の」は「が(主語を表す言葉)」の意味だよね。「君が言うことはもっともだ」と言えるもんね。逆に古文では「が」を「の」と訳すことが多い。国歌「君が代」の「が」は「の」という意味なのね。古文では読むにしても、文法問題にしても「の」は大事だと予言しておこう。

ここでは「食はば」が重要。

 

 ~a+ば  なら・たら・れば

 

[~a]というのはア段ね。「あかさたなはまやらわ」な。ローマ字で書くイメージの方が覚えやすい。それに「ば」が付くと仮定表現になる。「れば」が入っているのがポイント。正確に言うと「未然形+ば」なんだが、未然形という言葉はまだ早いな。

 

また、「む」も大事。いろいろなバージョン(「けむ」とか「らむ」とか)があるので

 

 文末の「む(ん)」は「だろう・よう・う」

 

 とまあ、今はざっくり考えておこう。大事なのは「ん=む=だろう」の部分。古文では「ん」は打ち消しでないのが原則である。このシリーズの見出しが「楽しまん」となっているのは「ん」は打ち消しじゃないよアピール。「楽しまん」は「楽しもう」と訳す。題名も含めていろいろと考えているのよ。

 あ。「そろそろ=ゆっくりと」が気になる人いる? これは「そろそろいこうか」が「急いでいこうか」の反対だという現代語から推測する。まあ、1単語くらい気にすんなとも言える。

 

「げに、大きさはあれほどでも良きが、厚さを知らねば」など言ひけり。

(「なるほど、大きさはあれくらいで良いが、厚さが分からないと」と言った(そうだ)。)

 

「げに」が重要単語。「げに=なるほど・本当に」で相手の発言に同意するときに使うの。文脈把握で大事。君たちも会話で使うのもいいかも同意する時に「げにぃ」と言うの。こうして実際に使っていくと古文単語が減るぞ。

さてここで大事なのは

 

「ね+ば」は「ないので・ないから・ないと」

 

正確には「未然形+ね+ば」であるが、今はざっくりと。

もうひとつ大事な事項が

 

「~e+ば」は「ので・から・と・(た)ところ」

 

正確には「已然形+ば」となる。何が大変かと言うと「~e+ば」は先ほど、少々触れたが仮定表現ではないということ。「文見れば、くちをし」は「手紙を見ると、残念だ」という意味になる。「れ=re」ということを理解してくだされ。

で、だ。

これもセット化の一種。「文=手紙・書籍・漢文」という単語と「くちをし(口惜し)=残念だ・つまらない」となる。重要文法事項として「~e+ば」も入っている。こういうのを自力で作れると、古文の達人になれる。古文の偏差値35以下の私が偏差値80近くになったのだから、間違いない。

【 」 】の直後に「など」があるね。

 

会話の末尾の直後には「と・とて・など」がくる

 

のである。かぎかっこが付いていない文章もあるので覚えておこう。ここで訳文の「た(そうだ)」が気になった人は偉い!「(そうだ)」と言われても困るよな。

 

「けり」は伝聞過去(たそうだ)の意味がある

 

単に「た」と訳すときが多いが、理解してほしい。伝聞と言うと理科の実験で紫色になるものとは一切関係なく(それはでんぷんだ!)、体験していない過去を指す。物語は体験した過去ではないので「けり」がつかわれることが多いのだ。

ちなみに詠嘆(だなあ)と訳すこともあるが、それは

 

会話文中・和歌内の「けり」は詠嘆(だなあ)

 

となるのである。これはちょっと高度だがついでに覚えておこう。少なくとも見ておこう。というか、見せたな、今。

 

この2回は古文の知識が多すぎたかな。まあ、次回はもっと笑える文章を平安っぽく改変してみるつもり。あくまでも「つもり」。

 

 


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