kotoba日記                     小久保圭介

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ハレとケ

2017年05月16日 | 生活
街の中を
長い行列が通ってゆく
それはデモであったり
山車であったりする

交通規制が敷かれ
警察官がメガホンを持って
ダッシュする

こんなハレに出くわすと
日常の生活が
わずかに色を変える
そして行列が過ぎ
自動車が通常に走り
警察車両も見えなくなると
わたしたちは
お昼ご飯のことを考えたり
生活の糧を得るために
黙々と労働する
ケは退屈ではあるけれど
ケが充実していないと
ハレのありがたみは薄くなる

今では
ハレが多すぎて
毎日がハレだ
あほちゃうか



桜井さんの言葉

2017年05月16日 | 生活
もう二十年も前のこと
桜井さんという人に
労働場で言われたことを
ふいに思い出した

おそらく
わたしは
桜井さんに
これこれこーで落ち込んでるんですよ
と言ったのだろう
桜井さんは
「小久保君、明日という日があるではないか」

答えたのだ
ニコニコして

そうだ
明日という日があるのだ
と今日も思った
二十年前と同じように

まっすぐな
希望への道しるべ
濁りのない
嘘ではない
伝道

桜井さんの励ましとやさしさは
未だ
わたしの中で生きている


   
   明日という日があるではないか




凡庸過ぎる言葉だけれど
誰も時に忘れる言葉

いつか
桜井さんのように
わたしも誰かに
言ってあげたい
それが相手に響くような
タイミングと
相性でもって
御恩送りを
したい

「明日という日があるではないか」

桜井さんは二十年後の今
どうしているのだろう
もうずいぶん
お歳を召しているはずだ
わたしのことも
覚えているかも怪しい

それでも桜井さん
あなたの何気ない言葉は
二十年の時を経て

ここに胸に宿って
響いています

ありがとうございました



悦に入ろう

2017年05月15日 | 生活
目の前を
無音のパトカーが通る
信号待ちで
助手席に乗っている
警官の表情のいちいちまで
見入る

ボディに
「運転は心のゆとりと思いやり」
と書いてある

「運転」を他の用語に置きかえて
10分ぐらいは
言葉で遊べる
いけない言葉を連想すれば
ますます悦に入る

ブラックパロディは楽しい

いけない単語を思い浮かべて

「○○は心のゆとりと思いやり」

で遊んでみましょう

2017年05月14日 | 生活
鍵をなくした
合鍵があるので
冷静だ

友人に電話して
鍵をなくしてしまったと言うと
車の中を探してもらった
そして
行った店に連絡して
わざわざ取りにいってくれた

鍵をなくした
と言って30分後
鍵は手に戻った
どうやら
喫茶店の椅子の間に
こぼれてしまったみたい

こぼれてしまったのは
鍵だけじゃない
いままで
たくさんこぼした
そしてすぐに忘れた




2017年05月12日 | 生活
時に
悪夢が続くなら
寝る場所を
変えることは
効果的だ

うそのように
夢の柄が一変し
良い夢とまではいかないけれど
まともな夢にもどって 一息

安心する場所がある
また不安になる場所がある
それを瞬時に見極めることの
大切さ

とどまってはいけない
居心地の悪い場所に
そそくさと
退散しなければいけない
兎にも角にも
そこから
一刻も早く
他の場所に
移らねばならない




ひこうき雲

2017年05月08日 | 生活
ひこうき雲
まっすぐな

古いビルと
新しいビルの
架け橋

まだ
言葉にできない
思いというものがある
ずっと
言葉にできないかもしれない

日々の楽しいことに
身をおいてさえいれば
すっかり
忘れることだって
できる

それでも
時々
思い出す



ヨモギ

2017年05月07日 | 生活
わたしたちは
野に出て
野草を見た
野花を見た
さわって
花の名前や
草の名前を言ってみる

わたしたちは
野に出て
川辺に降りて
砂を歩き
誰かが作った
階段を降りた
すぐ前に
大きな川面が
波立っていて
水の中にある
丸木が
藻で茶色になっているのを
見て
凄いね
と言ってみたりした

空は青く
風が吹いている
ヨモギだよ
と言うので
これがヨモギなのだ
と思う

どんどん歩いて
気持ちいい
気持ちいい
と言う
わたしたち
永遠の一瞬の草を
踏み
野を外れ
coffeeを飲んだ

彼らは手を繋ぎ
永遠の夫婦のようになって
その二つの背中が語る
たくさんの物語の中で
わたしは時に通行人になり
時に重要人になったりする

わたしたち
時を経て
この野に出て
野草を探し
野花を探す
ヨモギだよ
と言うので
これがヨモギなのだと
思った





雨が降る前に

2017年05月06日 | 生活
雨が降ってくる前に
図書館へ行こう

雨が降ってくる前に
うどん屋へ行こう

雨が降ってくる前に
食材を買おう

雨が降ってくる前に
野菜も買おう

雨が降る前に
干した布団をしまおう

雨が降るというので
空を見たけど
なかなか雨は降ってこず
少し降って
すぐに晴れ

なんだ
ほんの数滴じゃないかと
緑が悔しそうに
言うものだから
ホースでたくさん
水をまいた

よろこんだのは
緑じゃない
わたしだ




祝いの大阪

2017年05月04日 | 生活
大阪
鶴橋の
茶色のトタン屋根を過ぎ
電車は難波に着く

見過ぎた新緑の
野外音楽堂から
歌声が聞こえて

ゴリゴリするベースの音が
聞きたくて
大阪に来た

日陰を好んで座り
リズムに合わせ
小さく体を揺らす人がいる

天晴(あっぱれ)
天晴(あっぱれ)

すべて
春の陽ざしにおおわれて
悲しみなんか
まるでなかったみたいに
わたしたち
見過ぎた
新緑の中で
お弁当を食べ
水を飲み
人が歌う姿や

人が奏でる楽器の所作や

じっと聞いては
拍手する

ここは
祝いの大阪
最後には
放射線で切り裂かれた
DNAの風車が
平和のマークに変わっていたと
言う
まるで
苦しみなんかなかったように
悲しみなんかなかったように
さみしさなんかなかったように
風車は回る
人力で




市場の住人

2017年05月03日 | 生活
底抜けに明るい声が
市場に鳴る
手拍子をしたり
踊ったり
声をかけ合い
市場に鳴る
活気にあふれ
生活のマイナスは
すべて
プラスに転化される
市場の住人たちは
その日
その時だけの
旬を売る
響く声
鳴る音

体が
底抜けに明るい声で
振動して
旬を売る市場は
常に祭り

夜中はひっそりとして
朝になると
響く
生きる声
生きる歌
汗を流し
笑いが飛び交い
きらめきの連続に
足踏みの音が
重なって
さらに
音は大きくなって
極彩色の
祭りは
わたしの
体に響く
鳴る









さわやか

2017年05月02日 | 生活
さわやか
さわやかが
五月ですよ
と言う

さわやか
さわやかが
一瞬のきらめきですから
大事にしてください
と言う

さわやか
さわやかが
風を吹かせて
新緑をゆらし
もっと見てくださいね
きれいな言葉にしてくださいね
と言う

さわやか
さわやかが
春ですよ
朝ですよ
あなたの懐かしい
朝は
わたしですよ
と言う

さわやか
さわやかが
景に漂い
光になって
眩しいでしょう
と言って
笑う

さわやかは
ずっとわたしに
話しかけ
きれいな言葉で
話しかけ
この世の
始まりですよ
と言って
風になって
手を振った

さわやか
さわやかが
声に出さずに
じゃあまたね

口の形で言ったあと
空になった

残ったのは
さわやかがした
葉のゆらぎ
光の黄色に
空の愛








イーゼル

2017年05月01日 | 生活
アクリルで描いてみようかな
そう言うので
もらった古いイーゼルと
黄ばんだ画用紙をあげた
絵具やパレット、筆は捨ててしまった


イーゼルを渡す
画用紙も
「ダイソーでアクリル絵の具、売ってるらしいよ」

以前は画材店で買った
時代は変わった

数点の絵だけ
押し入れに残し

絵は出る
正直な今の気持ちが
そう言われて
描いてみた
そうだった

イーゼルのキャンバスに向かって
絵を描いていた頃
窓から
大きな桃の畑が
雪で真っ白になった
机に向かって
原稿用紙に
ペンで詩も書いていた

あの一年
わたし
絵と詩を書いていた
窓の外は桃の木が
たくさんあった

あの時の机で
今も書きものをする時があり
三鷹で買った一万円の
座り机
今でも
大事な家具

この机で
たくさんの小説も書き
拳で
どん
と叩いたことだってある


その机は
西日に照らされ
新聞とキーボードとマウスと
5冊の本が積んである

イーゼルを
差しあげます
今度は
彼が
絵を描く番だから