国が購入した新型コロナウイルス感染症の高額な飲み薬560万人分のうち、約430万人分が未使用のまま残ったことが5月11日、分かった。
約77%に当たる。
消費期限を迎えたものから廃棄される見通し。
国の公表資料などを基に算出した。政府関係者は「治療法が肇立されていない段階では早期に薬を確保する必要があった」と説明している。
厚生労働省によると、薬の一般流通が始まった上、感染症法上の位置付けが5類に移行し、緊急時を除いて国の購入分を出荷できなくなった。
五十嵐・東京大特任准教授は、感染動向の予測が難しい中どれだけ確保するか「見極めは難しい」と指摘。
「薬が不足した場合は健康リスクが生じ、多すぎた場合は金銭的損失がある。
それぞれどこまで許容するか、次の感染症に向けて議論が必要だ」と話している。
厚労省によると、塩野義製薬のソコーバは2022年11月に緊急承認される前に100万人分を約束し、緊急承認後さらに100万人分を追加、計200万人分を購入した。
2021年12月に国内で使用可能になったMSDのラゲブリオは160万人分、2022年2月のファイザーのパキロビッドは20O万人分を確保。
購入額は明らかにしていない。
公表資料などを基に計算すると、2024年3月末時点でソコーバ約177万
人分、ラゲブリオ約78万人分、パキロビッド約175万人分が残った。
現在の1人分の薬価はソコーバ約5万2千円、ラゲブリオ約9万4千
円、パキロビッド約9万9千円のため、単純計算すると未使用分は計3千億円超に相当する。
ラゲブリオは半分以上が出荷されたが、ソコーバは承認時期が遅く当初購入分も使い切っていない。
パキロビッドは他の薬との飲み合わせに注意が必要で、使用量が想定より少なかった。
新型コロナワクチンでは計約9億3千万回分を契約。
一部キャンセルするなどしたが、廃棄量は計約2億4千万回分に上った。
厚労省は今年4月の衆院決算行政監視委員会で「(廃棄分の総額の概算は)計約6653億円になる」と説明。
会計検査院は確保量の算定根拠が不丁分だと指摘していた。