集団的自衛権行使を含み、今年3月施行される安全保障関連法を初めて全面的に反映させる自衛隊最高レベルの作戦計画策定に当たり、防衛省内で制服組自衛官を中心とする統合幕僚監部が、背広組防衛官僚が中心の内部部局(内局)に権限の大幅移譲を要求していることが2月21日、複数の防衛省・自衛隊関係者の証言で分かった。
内局は拒否、調整が続いている。
昨年6月の改正防衛省設置法成立で防衛省は、防衛官僚が自衛官より優位な立場から大臣を補佐する仕組みだった「文官統制」制度を全廃、内局と統幕、陸海空の各幕僚監部が対等の立場になった。
統幕の要求が認められれば、防衛省内での力関係は逆転し、軍事専門家である制服組主導となる可能性もあり、危惧する声は多い。
関係者の話を総合すると、争点となっているのは、「統合防衛及び警備基本計画」で、特定秘密に指定されている。
5年先までの計画を3年ごとに全面改定、さらに毎年見直して修正している。
同作戦計画に最新の情勢見積もりを加味した上で、統幕が日常的に陸海空3自衛隊を運用(作戦指揮)している。
次の作戦計画策定では、昨年4月に改定された新日米防衛協力指針(ガイドライン)と、安全保障関連法の内容が初めて全面的に反映される。
作戦計画策定までには3段階があり、これまでは(1)内局運用企画局が基本的な方針を定めた大臣指針を決定、(2)その指針に基づき統幕が作戦計画を作成、(3)運用企画局が大臣に承認を求めるという役割分担だった。
しかし、統幕側は、内局運用企画局が昨年廃止され、自衛隊の運用(作戦指揮)が統幕に一元化されたことを受け「(作戦)計画もすべて統幕の権限だ」と主張、(1)と(3)の権限も譲るよう内局側に要求した。
一方、内局側は「運用(作戦指揮)と(作戦)計画は違う」と主張。
その上で、防衛省設置法の8条は、「防衛・警備に関することの基本と調整」や「自衛隊の行動に関する事務の基本」を内局の所掌事務と規定しているとした。
さらに、内局が総合調整機能を有していることを根拠に、(1)と(3)は運用企画局の機能の一部を継承した内局防衛政策局が引き続き担うべきだ、と統幕側に反論している。