新年度に入って3ヵ月余り「配属ガチャ」の文字が交流サイト(SNS)で飛び交っている。
新卒社員が配属先の当たりはずれを、開けてみなければ中身が分からないカプセル玩具にたとえた隠語だ。
はずれを引いたと感じた社員が心身の不調を訴えて早期に退職することもあり、職種別採用によって入社後のミスマッチを防ごうとする企業が増えている。
ソウイチロウの名前で配属ガチャの経験をブログにつづった20代後半の男性は事務職希望で入った会社で、人手不足を理由に肉体労働の現場に配置され「気付いたら正式に現場管理の部署に異動になっていた」。
お盆休みもつぶれるような職場で、ワークライフバランスなんて考えられず転職した。
「何をしたくないかが理解できた」ことで、現在の会社では自分に合った環境を手に入れたという。
配属ガチャヘの懸念は入社前からある。
マイナビのキャリアリサーチLab研究員の長谷川さんは「自分の考えるキャリアと現実の差に不安を抱く学生は増えている」と指摘する。
インターンで仕事や職種の希望を絞る割合が高まっているためだ。
内定から入社まで1年ほど猶予があることも、学生が思い悩む一因とされている。
キリンホールディングス(HD)は2024年度新卒採用で、従来の事務・営業コースを、営業や経理など職種で細分化して募集。
担当者は「学生の間でどんな業界で働くかではなく、どんな仕事をするかが重視されてきている」と話す。
みずほフィナンシャルグループ(FG)は2024年度から、銀行や証券などグループ5社で一括採用する方式にした。
「自分らしさを発揮してもらうことが重要」として、学生が会社や業務内容を選べるのが特徴。
会社を問わず顧客の資産運用を担いたいと希望したり、勤務地は首都圏のみと伝えたりすることもできる。
職種別採用は応募者の増加につながると見込まれる。
一方、企業の人材配置は戦略的なもので、社会人経験の乏しい若者が早計に判断するのは危険がつきまとう。
長谷川さんは「職種別採用をしていない企業を含め、配属について社員に丁寧な説明を心がけることが重要だ」と話している。