新型コロナウイルスに感染歴のある人のワクチン接種について、厚生労働省は「可能」とするだけで積極的に勧めているわけではない。
しかし、国外の報告からは、接種した方がいい理由がうかがえる。
厚生労働省のサイト「新型コロナワクチンQ&A」では、「新型コロナウイルスに感染したことのある人は、ワクチンを接種することはできますか」という問いに対し、「感染した方もワクチンを接種することができます」との回答が掲載されている。
その後に、国外の推奨状況などが記載されているが、厚労省が感染後の接種を推奨するとは書かれていない。
一方、世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルスに関するQ&Aのサイトには、「すでに感染歴があってもワクチンを接種するべきでしょうか」という問いに対し、「するべきです」と書かれている。
米疾病対策センター(CDC)も、「感染の有無に関係なく、5歳以上のすべての人にワクチンの接種が推奨されます」としている。
WHOは、感染後でもワクチン接種を推奨する理由として、感染によってできる免疫は個人差が大きいものの、感染後にワクチンを接種することで、一貫して強い免疫を得ることができる点を挙げている。
米CDCが2021年8月に発表した報告によると、米ケンタッキー州の住民約740人を調べたところ、ワクチン接種を受けていない人が感染後に再感染するリスクは、ワクチン接種を完了している人の2・3倍高かった。
熊本大学医学部血液・膠原病・感染症内科の松岡教授も、感染後のワクチン接種を推奨する。
「新型コロナウイルスの場合、ワクチンの効果が半年ほどで減衰してくるのと同じように、感染してできた免疫も、時間が経つと弱くなってくる。 ワクチン接種によって、免疫を強化した方がいいと考えられる。」
新型コロナウイルスの表面にあるたんぱく質を標的にした中和抗体は、感染によってできるものより、ワクチン接種によって得られるものの方が多いとみられる。ファイザー社やビオンテック社などがワクチンが承認される前に実施した臨床試験では、1回50マイクログラムの接種を2回受けた人の中和抗体価は、感染した人の中和抗体価よりも3・6倍高かった。
詳細は、科学誌「ネイチャー」に2020年9月に掲載された論文で紹介されている。
感染経験があると、感染経験のない人よりも、ワクチンによって強い免疫ができる。
米マウント・サイナイ大学などが2021年4月に医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した報告では、ファイザー社製かモデルナ社製のmRNAワクチンを接種した110人の調査では、感染経験者のワクチン完了後の中和抗体価は未感染者の約6倍高かった。