経済産業省が、新型コロナウイルスの感染拡大で弱さが露呈したワクチンの国内生産体制を強化するため、企業への支援策を新たにまとめたことが12月8日分かった。
通常は他の医薬品を生産し、感染症の流行時にワクチン製造に切り替えられる両用設備の導入を補助金で後押しする。
輸入頼みの状況から脱却し、新型コロナの変異株や新たな感染症に備える。
ワクチン生産に向け、製薬会社が多額の投資をしても、感染症の収束時には設備が余剰となる恐れがある。
このため経産省は、設備を平時にも有効活用できるようにして、企業のリスクを軽減することが必要だと判断した。
新たな支援策では、がん治療などで使われるバイオ医薬品とワクチン製造の両用化に必要な既存設備の改修や新規設備の導入について、費用の9割を補助する。
パンデミック(世界的大流行)時には、ワクチン生産に切り替え、国内への優先供給に応じることを支援の要件とする方向だ。
岸田首相は12月8日の国会答弁で、両用設備を整備し「今後脅威となり得る感染症への備えに万全を期す」と語った。
また、ワクチン製造に欠かせない製剤化や素材生産の設備も、大企業では導入費用の3分の2、中小企業では4分の3を補助する。
経産省は支援を行うため、2021年度補正予算案に2274億円を計上した。
塩野義製薬は「企業の負担軽減のために平時と非常時を意識した新しい政策で、国産による安定供給の観点からも前向きな姿勢は評価できる」とコメントした。