東京海洋大の研究チームが、一生に一度しか産卵しないキングサーモンの「生殖幹細胞」をニジマスに移植し、成長したニジマスからキングサーモンを繰り返し産ませることに成功した。
ヒメマス(ベニザケの淡水型)でも同様の結果が得られており、高級なサケ類の養殖の効率化や、希少種の保護にもつながると期待される。成果は米科学誌に掲載された。
研究では、キングサーモン(和名・マスノスケ)の精巣から、卵や精子に分化する生殖幹細胞を取り出し、生まれたばかりのニジマスに移植。ニジマスは1~2年で成熟すると、キングサーモンの遺伝子を持つ卵や精子を毎年作るようになった。
サケ科で最も大きいキングサーモンは商品価値が高いが、成熟に3~7年かかり、産卵や放精は一生に一度だ。
通常は6~7年は生きる小型のニジマスを代理親にすれば毎年繁殖できるため、短期間で安定的な養殖が可能になる。
絶滅危機にある種類の生殖幹細胞を冷凍保存し、代理親に産ませることも考えられる。
太平洋のサケ類の多くは海での回遊生活の後、母川に戻り産卵を終えると死ぬ。
ニジマスはキングサーモンやヒメマスと同じタイヘイヨウサケ属だが、より原始的な種類だと考えられている。
代理親の技術はフグやサバなどで確立しているが、サケ類では初めて。
吉崎教授は「養殖の新しいスタイルになり得る。
地球環境の急変で苦しい状態にある魚を守るためにも重要な技術だ」と話した。
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