コンピューター断層撮影(CT)などで浴びる弱い放射線の人体への影響には個人差があることが、広島大原爆放射線医科学研究所の田代・教授(放射線生物学)たちの研究で分かった。
患者の細胞をCT検査の前後で比べ、染色体異常の増え方が人によって異なることから突き止めた。
低線量の被曝による染色体異常の増加を示唆する研究は既にあったが、個人差まで実証したのは初めて。
研究班は、広島大病院の30~80代の患者60人の協力を得て、CT検査の前後に血液を採取。
短時間で染色体異常を判別できる独自開発の手法を用い、患者1人につき千個以上の末梢血リンパ球を調べた。
細胞千個当たりの染色体異常をみると、検査前後で平均5・6個から7・2個に増え、増加率には有意な個人差があった。
染色体異常の増加について田代教授は、「すぐにがんや白血病になるわけではないが、被曝への耐性が弱い人はCT検査の頻度を低くした方がよい」と指摘。
「研究手法を応用し、誰もが放射線への感受性の強弱を事前に調べられる仕組みができれば、個人の特性に応じた医療が可能になる」と話している。
また研究班は、健康な人のリンパ球に強さの異なる放射線を当てる実験を通じて、被曝線量と染色体異常の関係についても調べた。
CT検査の線量は1回10ミリシーベルト前後。
実験では80ミリシーベルト以下だと、線量に比例して染色体異常の数が直線的に増える群と、横ばいの群に二分された。
100ミリシーベルト以下の低線量被曝を巡り、これまで放射線影響研究所などは、広島と長崎の原爆被爆者の追跡調査に基づき「被曝線量とがん発症の比例関係ははっきりしない」としてきた。
田代教授は「放射線に強い人と弱い人を分けずに解析してきたことが、100、ミリシーベルト以下の発がんリスクが明確でなかった原因ではないか」とみる。
研究結果は、米科学誌「ラジェーションーリサーチ」今月号に掲載された。
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