政府は10月13日、中国の「南京大虐殺」に関する資料を世界記憶遺産に登録した国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対し、拠出金などの停止や削減を含めた対抗措置の検討に着手した。
同時に、登録制度見直しを重視し、ユネスコヘの働き掛けを強める方針だ。
菅宣房長官が記者会見で明らかにした。
国家安全保障会議(NSC)の谷内国家安全保障局長は10月13日、中国の楊国務委員(副首相級)と東京都内で会談し、登録申請に抗議した。
対抗措置検討は、日本側の意向を踏まえず中国の登録申請に応じたユネスコヘの反発だ。
一方、中国外務省の華副報道局長は記者会見で日本政府の対応について「脅迫する言動で、驚きを禁じ得ない」と批判した。
両国間の新たな火種になる可能性がある。
国際機関を巻き込んだ対立だけに、国際社会に波紋を広げる展開も予想される。
日本はユネスコの特定事業を対象に、任意の拠出金を出している。
これとは別に、ユネスコヘの分担金の停止、削減も検討。
外務省によると、日本の分担率は約11%で世界2位となっている。
菅氏は「事実をめぐり意見が分かれているのに中国側の意向に基づいてユネスコが指定するのはおかしい」と指摘。
中国側が申請した「大虐殺」関連資料についても「本物かどうか、専門家から検証を受けていない」と強調した。
登録制度に関し「政治利用されることがないように公正性、透明性を強く求めていきたい。 制度を変えていくことが大事だ」と述べた。
自民党の二階総務会長は会見で「一生懸命(拠出金を)納めて協力しながら、われわれの国の主張は一顧だにされない」と不満を表明。
公明党の山口代表は制度改正要求に賛同した。
民主党の細野政調会長は会見で「拠出金をいきなり停止することが良いかどうかは考える必要があるが、削減は検討してもよい」との見解を示した。
維新の党の今井幹事長も「歴史的検証がはっきりとされていない中での登録は間違っている。 対抗措置を講じるのは当然だ」とした。
共産党の山下書記局長は「日本政府の考えが認められなかったからといって、拠出金を削減するのは国際社会の理解が得れない」と述べた。