ロシアは10月7日、シリア領の過激派組織「イスラム国」に対する攻撃で、従来の空爆に加え、カスピ海から巡航ミサイル26発を発射したと明らかにした。
また、シリア人権監視団(英国)によると、アサド政権側の地上部隊が同日、ロシア軍の空爆と連携し、反体制派への大規模攻撃を実施した。
ロシアが巡航ミサイルを実戦で使用したのは初めてとみられる。
監視団代表は、9月末のロシアによる空爆開始以降、シリアとロシアによる初の大規模な合同作戦だとの見方を示した。
これまで反体制派に押されていたアサド政権が、ロシアの強力な軍事支援を得て攻勢に出た形だ。
ロイター通信によると、監視団代表は、ロシアが10月7日の軍事作戦で「イスラム国」以外の反体制派を攻撃していると非難した。
ロシアのショイグ国防相は10月7日、プーチン大統領と会談し「イスラム国」攻撃について報告、巡航ミサイル使用に言及した。
カスピ海に展開する4隻のミサイル巡洋艦が、約1500キロ離れたシリア領内にある「イスラム国」の戦闘指揮施設など11力所の目標に巡航ミサイルを発射。目標はすべて破壊したとしている。
昨年来のウクライナ危機で対立を深める米国主導の北大西洋条約機構(NATO)を意識した示威行動とみられる。
ロシア軍は今回のシリア空爆で、レーザー誘導ミサイルなど精密誘導兵器を使用していると発表し、通常兵器の精度を誇示してきた。
これまでロシアは通常兵器では欧米に劣るとされてきたが、ロシアの兵器の威力を示して、こうした評価を変える狙いがあるとみられる。
軍事アナリスト小泉氏は巡航ミサイルがイラク上空を通過したことに着目する。
米国と近かったイラクは今回のシリア問題で、ロシア主導の情報共有の枠組みに加わるなど対口接近を強めている。
今回イラクがミサイル通過を認めたことは「その傾向をさらに決定づける」と、ロシアが中東で影響力を拡大しているとの見方を示した。