政府が医療費抑制に向けて安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及率を2020年までに8割以上にする方針を打ち出したことを受け、大手製薬各社が対応を急いでいる。
後発薬メーカーは増産体制の構築を図る一方、後発薬の利用拡大でシェア低下が必至な先発薬(新薬)メーカーは特許が切れた新薬の事業をリストラし、経営資源を新薬の研究・開発に集中しようとしている。
ジェネリック普及の波は業界再編につながる可能性もある。
「国の目標が出たことで、(売上高の45%を占める)特許切れの長期収載品の売り上げは一層低下する」
新薬大手、田辺三菱製薬が11月末に開いた中期経営計画(2016~2021年度)を発表する記者会見。
三津家社長は危機感をあらわにした。
実際、国の後押しで大型病院や調剤薬局では特許切れ薬から割安な後発薬への処方切り替えなどが進む。
長期収載品の売上高割合が半減すると見込む田辺三菱製薬はコスト体質改善に向けて国内従業員の約2割(約1100人)を削減、事業の重点を新薬の研究・開発にシフトする方針。
計7000億円を投じて5年間で新薬10品の開発を目指すとともに、米国市場進出で収益確保を狙う。
新薬最大手の武田薬品工業はより踏み込んだ対応を打ち出す。
特許切れ薬の販売などの事業を後発薬世界最大手「テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ」(イスラエル)と設立する合弁会社に移管。
武田薬品本体は利幅が厚い新薬開発に集中して、京大iPS細胞研究所との新薬開発の共同研究などを本格化させる。
一方、後発薬各社は需要取り込みへ増産を急いでいる。
沢井製薬は11月、2カ所目となる研究開発拠点を稼働させた。
投資額は60億円で、多様な後発薬開発や生産能力の増強が狙いだ。
2017年度までの設備投資額(従来は約440億円)を200億円上積みするほか、新工場建設や既存の製薬工場の買収も検討する。
新薬開発にしろ、後発薬の増産にしろ、多額の投資が必要で、各社は厳しい体力勝負を迫られる。
厚生労働省は9月にまとめた「医薬品産業強化総合戦略」で、先発薬メーカーについて「M&A(企業の合併・買収)等による事業規模の拡大を視野に入れるべきだ」と指摘。
後発薬メーカーについても「集約化・大型化も含めそのあり方を検討することが必要」と分析し、業界再編の可能性を示唆した。
日本の後発薬の普及率は49%(2013年10月からの1年間平均)で、米国(92%)やフランス(64%)などと比べて低い。
厚生労働省の試算によると、普及率が8割になれば医療費を約1.3兆円抑制できる。