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全国一律の医師配置標準見直しへ

2005年07月01日 | こども・小児科
産科医引きあげ問題で注目を集めている地方病院の医師不足と、ここ1~2年摘発されて表面化した医師名義貸し問題は根っこは同じで、その一つの解決策として私たちも(県保険医協会を中心として)厚労省に強く働きかけていた配置標準の見直しがやっと実現されることになりました。これまでの医師や看護師が基準に達していなければ診療報酬もペナルティで下げられるというのは、流行目に祟り目というか、負け犬に小便というか、そういった制度だったわけで、これが改善されることは絶対に必要でした。

ただし、これで病院医師の不足や過労問題が解決されるわけではなく、一つには病院間の機能再編、もう一つは医師の絶対数の増加について今後も対策をとっていかなくてはいけません。自治体病院の再編と産科医問題については、下記のページでも触れていました。

関連ページ
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配置標準見直し/医師名義貸し是正へ一歩
 地方の実情に合わせて都道府県知事が医師や看護師などの定員を決めることができるよう、厚生労働省は全国一律の現行制度を見直す方針を固めた。
 現地事情と無関係に、医療機関の患者数に応じ医療従事者必要数を示す全国一律の「配置標準」規制は大学医学部、医科大大学院生らが常勤医として働いているように装い、病院から報酬を受ける「名義貸し」の根源とされる。
 厚労省がこの原則を修正するのは、戦後間もない一九四八年の医療法施行後初めてのことである。名義貸し根絶への現実的第一歩として早期具体化を期待したい。
 同省は、都道府県策定の医療計画で必要な医療提供体制が整備されている地域については、知事裁量で緩和を認めることを検討する。
 有力な緩和条件として(1)病院間の支援体制強化(2)テレビ電話を使った遠隔医療導入-などを考慮している。
 医療機関には人員配置数の情報公開を促し、患者が十分な情報から施設を選択可能な体制が整えば、将来的には「配置標準」の廃止も検討する、としている。
 「配置標準」というのは、全国どこでも適正な医療を受けられるよう、医療法が病院や有床診療所に配置すべき医師や看護師、薬剤師らの人数を定めた制度である。
 だが、医師の「配置標準」は医療法施行当時のままで、病院の一般病床では入院患者五十二人までが最低三人、それ以上は入院患者十六人、外来患者四十人増えるごとに一人以上増員する、となっている。
 現行制度は「医師らの配置数が標準の六割しかいない医療機関は診療報酬の支払いを減額する」としている。だが、東北、北海道の病院の半数近くは基準を満たしておらず、名義を借りて減額を免れる病院が数多くあった。
 これが問題化し、厚労省の政策自体が批判の矢面に立つことも少なくなかった。
 文部科学省が昨年初頭まとめた医学生らの医師名義貸し実態調査によると、〇二年四月からの一年半に全国七十九大学医学部、医科大の三分の二に当たる五十一医学部、医科大在籍大学院生ら延べ計千百六十一人が名義貸ししていた。
 国立大が最多で、四十二校中二十九校、延べ八百五十四人だった。北海道大が延べ百七十人で断然トップ。弘前大は一人もいなかった。
 厚労省が医療従事者の配置標準見直しを決めたことは、遅まきながら現実を直視した正しい方向への軌道修正、と言うことができる。
 そもそも、戦後の荒廃期に決めた医療法施行から六十年近い長期間、全国一律の同じ規制を今日まで維持してきた方がどこかおかしい。
 この間、地域によっては、医師不足や看護師不足で、現実に定員確保にどれほど苦労してきたことか。
 医師過剰が目につく大都市と、今なお医師確保が困難なへき地を一律に縛るような愚は、厚労行政以外でも早急に見直すべきである。