踊る小児科医のblog

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社会保障の財源にタバコ税大幅増税を:政府税調への意見

2005年07月16日 | 禁煙・防煙
政府・財務省の税制調査会のページから税制に関する意見を募集しているという情報をいただきましたので、タバコ税大幅増税についての意見を送付しておきました。
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税制に関する御意見の募集について
 税制調査会では、少子・高齢社会を支える税制などの課題について検討を行い、平成15年6月17日に、中期答申「少子・高齢社会における税制のあり方」をとりまとめたところです。この中期答申「少子・高齢社会における税制のあり方」について、多くの御意見をお待ちしております。
coo02tax@mof.go.jp
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これは一問一答で答えが返ってくるものではなさそうですが、活動の記録としてこちらにも掲載しておきます。

客観的にみてもタバコ税増税の環境は整ってきています。しかし、いつものような業界の抵抗による「小幅」の増税ではごく僅かに喫煙率を減らして税収もほとんど増えないことになり、意味は殆どありません。欧米並みの「大幅」値上げが絶対に必要(must)です。

(以下、送付した文章です)
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「社会保障の財源にタバコ税大幅増税を」

 報道によると社会保障費の大幅削減が計画されているようですが、生活習慣病の罹病率・死亡率を低下させ国民医療費を減らすと共に税収増をはかる手段として、タバコ税増税を早急に実施すべきです。
 タバコ税増税の意義については貴会では十分にご理解いただいているはずだと思いますが、これは発泡酒増税などとは全く意味の異なる総合的な政策であり、世界銀行の報告書でも強く勧告され、英米仏を始めとした諸外国でも既に取り入れられ、タバコ一箱が900~1000円のレベルにあることはご存じの通りです。
 タバコ税の段階的な大幅増税により、よく言われているような「一石三鳥」ではなく「一石五鳥」の効果が見込めます。例えば7年間毎年100円ずつ増税して一箱1000円にすることにより、

1)国民の喫煙率は大幅に低下し、一箱1000円になれば喫煙者の63%、1700万人が禁煙すると試算されています。(医療経済研究機構)

2)三大疾病を始めとした生活習慣病の罹病率・死亡率は低下し、タバコに起因する病気による死亡者数は10万人台から3万人台へ、7万人も減少し、8000億円も医療費を削減させます。

3)段階的に増税していくことにより、税収は減らずにむしろ増加し、1兆円の税収増が見込めます。(以上、同機構試算より)

4)さらに、タバコ税大幅増税は未成年の喫煙防止策として最も重要なものであり、タバコ一箱が1000円になれば現在のように気軽にタバコに手を出す中高生はほとんどいなくなります。本年発効し日本も批准しているタバコ規制枠組条約でも、最重要課題として取り上げられていることはご存じの通りです。

5)タバコ税の逆進性を解消します。タバコ税は現在、相対的にみて低所得者層からより多く徴収している仕組みになっています。タバコ税の段階的な大幅増税により、低所得者層でより多くの人が禁煙することが見込まれ、高所得者層が残ることから、この逆進性が解消されます。

 現在、このタバコ税の段階的な大幅増税政策を実施していないことは、むしろ行政の怠慢・不作為に属するものと考えられ、必要なタバコ規制政策を行わずに水俣病や薬害エイズ以上の被害(毎年11万4千人の喫煙による死者と2万人の受動喫煙による死者)を重ねていると判断されます。障壁となるタバコ農家対策として、この増加した税収の一部から、

1)タバコ農家の転作支援政策に一定期間十分な補助を与える

と共に、医療・社会福祉目的税として、

2)タバコ病・生活習慣病対策として社会保障財源に組み込む。その中で、禁煙支援治療を予防医学の一つの柱として、禁煙治療を保険医療に組み入れる

という2つの使途を国民に明確に示し、トップのリーダーシップで速やかに実施すべきです。

参考:
医療経済研究機構試算
関西学院大学経済学教授の河野氏によるタバコ1箱1,400円が適正価格という試算