レシピは豆腐とタラの椀盛二つと、タラの小鍋立てです。椀盛とは・・以下は辻嘉一著「あなたの
懐石」からの抜粋です。
椀盛は煮物とも言い、汁の多い煮物をたっぷりとお椀に盛った懐石料理の一品です。一重三菜
の一菜を占めるおかずで、腹ごしらえのための料理。それにふさわしい量と味わいが必要です。
普通の清し汁のような、汁のなかに中身がちらほら浮いているようなものではならず、中身は濃厚
なものと淡白なものをとり合わせ、これに色どりのための季節の青野菜と、吸い口を添えるのが
約束ごとです。
汁の仕立は、清し汁、薄葛汁、葛あん、すっぽん汁、潮汁など色々ありますが、清し汁仕立てが
代表的で、味つけは塩と淡口醤油にして、あまり手が込んだ細工をせず、季節の材料を持ち味
に、素直な料理にします。盛りつけは、予め椀に湯を張って温めておき、湯を捨てて布巾で水分
を拭きとって中身を据え、青野菜を盛り添えて熱々の汁をたっぷりと張り、季節感をだすために
必ず吸い口をあしらいます。「あなたの懐石・・72‐73P」より
椀盛は、蓋つきのお椀に汁と椀種が入っていますが吸い物ではなく煮もの・・とあります。椀盛は
ご飯のおかずなので、大振りなお椀をつかい、具沢山にします。これに対し、吸い物は酒の菜の
扱いで、箸洗い=小吸物は、料理と料理の間の口直しの位置づけと言います。
「日本料理の贅沢」の著者、神田裕行さんは次のように書いています。僕はお椀は日本料理の華
であり、象徴的なものであり、料理人の才覚を表すものだと思っています。ですから、椀ダネ=具
材は、事実と知識と見識の集大成だと思うのです。「日本料理の贅沢・・72‐73Pより」
「椀盛」と難しく考えず、日ごろ、おうちで作る吸い物と煮物を合わせたものと思えば取りつき易い
と思います。レシピは、素人の真似事ですが、家庭でも椀盛として楽しみたいと作ってみました。
どうぞ、お試しください。
奴に切った豆腐を主材に、生ワカメとおぼろ昆布を加え、茹でた菜の花をのせ春の雰囲気を
たのしむ椀盛にしました。おぼろ昆布のほかは持ち味が淡泊なので、濃い目の出汁にひたし、
下味をつけてお椀に盛ります。主材の豆腐選びと出汁作りにこだわりたいお椀です。
材 料
とうふ 1/2丁 160g
おぼろ昆布 一つまみ 6g
ワカメ 一つまみ 20g
菜の花 4本 30g
ゆず 少々
調味料
昆布浸け出汁 2カップ半 450cc
削り鰹 一つかみ 10g
塩 小さじ 1/2 2g
淡口醤油 小さじ 1/3 1.3cc
日本酒 大さじ 2 20cc
作り方
出汁をつくる
昆布の浸け出汁を温め、沸き立つ直前に削りかつおを加える。
フツフツしたら火からおろし、かつおが落ち着くのを待って、
ザルで漉したあと、さらにペーパーを使って漉します。
出汁に味をつける
漉した出汁を鍋にとり、塩を加えて中火にかけ、煮立ったら淡口を
加えたあと日本酒をいれ、吸い加減よりやや濃い目にする・・
・・普通は吸い加減にするが、豆腐から出る水分で出汁が薄まる
のを計算に入れ、少し濃い目にする・・
生ワカメと菜の花に下味をつける
生ワカメを適当な大きさに切り、適量の出汁で煮ておく。
菜の花は、塩一つまみ入れた湯で茹で、出汁に浸しておく。
豆腐を温めてお椀に盛る
奴に切った豆腐を出汁に加えて中火で温める。
沸騰させないで4~5分・・豆腐が十分温まったらお椀の中心に
豆腐を移して菜の花をのせ、ワカメとおぼろ昆布を両脇にそえる。
刻んだ柚子皮をのせ、熱い出汁を張ってできあがり。