仕事をしていれば、どうしても名刺が必要になる。
私の場合は記憶力の問題だと思うが、名刺をもらわないとその人の仕事や、どうかすれば名前すら忘れてしまう。
私の記憶構造は聴覚の刺激ではなく、視覚的刺激、つまり文字という図形で大脳が覚えるらしい。
だから、別に名刺でなくてもいいわけで、とにかく何かに書いてもらえばいいわけだ。
ただ後から整理する場合に名刺の形態の方が便利なのは間違いない。
一口に名刺といっても実に様々で、縦書きのものもあれば横書きのものもある。
以前は名刺といえば縦書きが一般的だったが、最近は横書きが主流になりつつある。
国際化社会の影響だろうが、インターネットの普及が横書き名刺を一気に進めたのは間違いない。EメールやHPのアドレスは横書きの方が見やすいからだ。
もう一つはカラー時代を反映してカラー名刺が増えている。
中には自分の顔写真を載せる人もいるが、あれもなかなか効果的だ。
ほかにも表に一杯書かれた名刺、裏表の名刺、二つ折りのもの、色紙のものなど実に様々で、暇な時はもらった名刺を眺めているだけで面白い。
じっと眺めていると、何となくその人の性格まで見えてくるような気がする。
中にはユーモアのセンスが感じられる名刺もあるもので、数年前、ある人からもらった名刺は肩書きの部分に「夢職」と書かれていた。
夢のある職業って何だろうと思いながら、もらった名刺を眺めていると、受け取った相手のそういう反応が面白いのだろう、しばらくこちらの戸惑ったような様子を見ながら「夢が一杯あり過ぎて困っているものですから、どの夢を実現するか、焦らずにじっくり行こうと思っています」と、ニコニコしながら答えるのだった。
「夢職」と書いて「むしょく」と読ませるのだった。
年の頃は50少し過ぎ。早期退職かなにかで永年勤めた会社を辞め、次の仕事先を探している時なのだろう。
中高年の退職といえば暗い影がつきまといがちだが、彼はそんなものを感じさせるどころか、底抜けに明るかった。
それからしばらくして私が主宰する会にも参加するようになったが、1年程して高校の非常勤講師になった。
高校でパソコンの操作を教えているらしい。
だが、1、2年契約で、その後はどこか他のところを探すと言っていた。
不思議なのは、その頃から彼の顔から笑顔が消え、いつの間にかユーモアのセンスまでもが消えていたことだ。
金はなくても夢が一杯ある「夢職」から、金の心配をしなくていいところに転職し、夢を失ってしまったのか、最近は音沙汰もない。
会社勤めは彼から夢さえも奪っていく「ベニスの商人」だったのかと思うと、会社とは一体何なのか、人が働くとはどういうことなのかと考えてしまう。
私の場合は記憶力の問題だと思うが、名刺をもらわないとその人の仕事や、どうかすれば名前すら忘れてしまう。
私の記憶構造は聴覚の刺激ではなく、視覚的刺激、つまり文字という図形で大脳が覚えるらしい。
だから、別に名刺でなくてもいいわけで、とにかく何かに書いてもらえばいいわけだ。
ただ後から整理する場合に名刺の形態の方が便利なのは間違いない。
一口に名刺といっても実に様々で、縦書きのものもあれば横書きのものもある。
以前は名刺といえば縦書きが一般的だったが、最近は横書きが主流になりつつある。
国際化社会の影響だろうが、インターネットの普及が横書き名刺を一気に進めたのは間違いない。EメールやHPのアドレスは横書きの方が見やすいからだ。
もう一つはカラー時代を反映してカラー名刺が増えている。
中には自分の顔写真を載せる人もいるが、あれもなかなか効果的だ。
ほかにも表に一杯書かれた名刺、裏表の名刺、二つ折りのもの、色紙のものなど実に様々で、暇な時はもらった名刺を眺めているだけで面白い。
じっと眺めていると、何となくその人の性格まで見えてくるような気がする。
中にはユーモアのセンスが感じられる名刺もあるもので、数年前、ある人からもらった名刺は肩書きの部分に「夢職」と書かれていた。
夢のある職業って何だろうと思いながら、もらった名刺を眺めていると、受け取った相手のそういう反応が面白いのだろう、しばらくこちらの戸惑ったような様子を見ながら「夢が一杯あり過ぎて困っているものですから、どの夢を実現するか、焦らずにじっくり行こうと思っています」と、ニコニコしながら答えるのだった。
「夢職」と書いて「むしょく」と読ませるのだった。
年の頃は50少し過ぎ。早期退職かなにかで永年勤めた会社を辞め、次の仕事先を探している時なのだろう。
中高年の退職といえば暗い影がつきまといがちだが、彼はそんなものを感じさせるどころか、底抜けに明るかった。
それからしばらくして私が主宰する会にも参加するようになったが、1年程して高校の非常勤講師になった。
高校でパソコンの操作を教えているらしい。
だが、1、2年契約で、その後はどこか他のところを探すと言っていた。
不思議なのは、その頃から彼の顔から笑顔が消え、いつの間にかユーモアのセンスまでもが消えていたことだ。
金はなくても夢が一杯ある「夢職」から、金の心配をしなくていいところに転職し、夢を失ってしまったのか、最近は音沙汰もない。
会社勤めは彼から夢さえも奪っていく「ベニスの商人」だったのかと思うと、会社とは一体何なのか、人が働くとはどういうことなのかと考えてしまう。