もう1点、新規顧客優遇策を販売店が止められない理由がある。それはケータイ分野に限ることではないが、販売店は常に新商品を数多く売りたいと考えている。新商品の方が売上高が上がるし、売上高が上がればそれに応じて販売奨励金(バックマージン)が増えるのはどの業界でも同じ。だから買い替え、買い増しを狙って様々な販売策を打ち出すのはやむを得ない。
また常に一定割合で新規顧客を増やさなければ企業は停滞あるいは衰退する。
故に、新規顧客優遇策がなくなることはないのだ。
このように新規顧客優遇策がなくなることはないのだから、仮に「実質ゼロ円」
みたいなことは止めろと規制したとしても必ずほかの方法が現れる。その度に規制をかけていくのか。発泡酒、第3のビールの酒税アップの様に。それでは消費者利益を守るという当初の目的から外れ、逆の結果になるだろう。
私のスマホ代・・・高すぎ!?月額972円(税込)からLTE高速通信が使える「OCN モバイル ONE」
3.ハードとソフトの徹底分離を
スマホ利用料で最も不満が高いのは30秒20円という通話料の高さだろう。フィーチャホン(従来型の携帯電話、いわゆるガラケー)の場合は平均的なところで30秒14円(ドコモのタイプMバリュープラン)。最も割高なタイプSSバリュープランで30秒20円だが、無料通話分1,000円が付くから、やはりスマホに替えた瞬間、通信料が跳ね上がったという印象は拭えない。
ところで、本稿で通話料を比較するためフィーチャホン、スマホの通話料を調べたが、いろんなプラン、いろんな割引制度があり、まるで迷路のようで非常に分かりにくい。各種制度に詳しくない人では販売店の勧められるままになってしまう。もっと分かりやすい、シンプルなプランに変えることこそ必要ではないか(公平感を保つためにも)と思ってしまう。
その点、SIMフリーを扱うMVNO(仮想移動体通信事業者)の料金体系はシンプルで、各社とも通信料は30秒20円。後は使える容量によって(月1Gまでとか3G、5Gというように)料金が違うだけだから非常に分かりやすい。
無料通話分などのサービスは一切ないが、楽天電話、FREETEL電話、Biglobe電話などの電話アプリを使えば通話料が半額(30秒10円)で使える。
今春以降、SIMロック解除が義務付けられたおかげでMVNO市場は2015年9月末時点で3,642万回線と前年比88.9%増と急速に拡大し、今年度末には4,000万回線突破が確実視されている。
SIMフリー市場が拡大しているのはキャリアの利用料が高いからに他ならないが、この先も市場が拡大し続けるかと言えば多少疑問符が付く。
それはパソコンのDOSV黎明期と似ているからだ。日本国内でPCといえばNECの98シリーズを指すほどNEC製PCが幅を利かせ、その頃の販売方法はハードとソフトのセット販売だった。OSはNEC用にカスタマイズされたMS-DOSを使うしかなく、ハードとソフトを別々に調達して使うなどというのは一部の先進的マニアの利用方法でしかなかった。いま振り返れば嘘のような話だが。
いまスマホも同じ過程を辿りつつある。にもかかわらずスマホの利用料が下がらないのはユーザーが自由にハード(端末)とソフト(SIM)を組み合わせられないからだ。
SIMロックは解除されたものの、相変わらずキャリアはスマホとSIMのセット売りをしており、単品売りに応じていない。要はハードとソフトの完全分離がまだ不十分なのだ。両者の完全分離を義務付ければほぼ間違いなく価格は下がる。
4.2年縛りの撤廃を
携帯電話(スマホ、フィーチャホン)の自由な乗り換えを妨げている最大の要因はキャリアによる「2年縛り」と高い解約料だろう。例えばMVNOへの変更を考えたとしても2年契約で縛られているため、期間途中の解約は違約金を科せられる。この金額がバカにならないのだ。
仮に契約満期前に他社への転出を考えるとどうなるか。
解約料:9,500円
転出手数料:3,000円が請求される。
さらに他社へ移動する場合は転入時の手数料(3,000円)を契約先に支払わなければならない。
そのため2年途中での解約、他社への転入時に必要な金額は
9,500円+3,000円+3,000円=15,500円(税別)
これだけが余分な出費になる。なかでも大きいのが解約料だ。仮に100歩譲って解約料を認めるにしても1年以内に限りとか、残月数により解約料が減少していくようにすべきだろう。そうすれば契約者の移動は楽になり、携帯電話利用料はぐんと下がることになる。
なにもキャリアに「通信量が少ない人向けのプラン」を導入しろなどと言う必要はないのだ。すでに1G、3GなどのプランはMVNOが導入しているのだから。
要はMVNOを利用しやすい環境を作りさえすれば済む話だ。それをせず、キャリアに「通信量が少ない人向けのプラン」導入を迫る今回の提言は方向がおかしい。
5.「かけ放題プラン」がMVNOに登場するか
以上見てきたように、ハードとソフトのセット販売、2年契約と高い解約手数料でユーザーは縛られ、自由にキャリア間、あるいはキャリアからMVNOへの移動がしにくい。これは裏を返せば一度ユーザーを取り込めば最低でも2年間は固定化できるわけで、そのためなら割引拡大をしてでもユーザーを取り込みたい(取り込んだ方がいい)と考えるのは道理だろう。かくして競争が「割引サービス」に矮小化されてしまう。
つまり競争原理を働かせるためには上記2点(特に高い解約手数料と「2年縛り」)をなくす、あるいは下げることだ。そうすれば、ユーザーは自由にキャリア間を、あるいはキャリアからMVNOへの移動がしやすくなる。
そうなればキャリアはユーザーを繋ぎ止めるためのサービス(価格、プラン内容)を多様化せざるを得なくなり、競争原理が働いてくる。
最後に、今回の「提言」で取り残された部分の問題。ライトユーザーへの対策のみが取り上げられ、長期利用者やヘビーユーザーへの対策が全くといっていい程触れられていない点をどうするのか。
月間通信量1G、せいぜい使っても3G以下というライトユーザーへの対策はキャリアが新しいプランをわざわざ作るまでもなく、すでにMVNOが実施しているから、MVNOへ任せればいい。後は移動しやすくするだけでいい。
何度も繰り返すが、障壁になっているのは「2年縛り」と高い解約手数料だ。これさえなくなればユーザーは各社の料金やプランを検討し、いつでも自由に移動できる。
それより問題は長期利用者や通信料が多いヘビーユーザーの負担をどう下げるのかだ。例えば利用年数に応じて通信料が下がっていくプランを導入するのはどうだろう。
これは比較的簡単に導入できるように思える。すでに固定電話等では似たようなシステムが導入されているではないか。
もう一つはMVNOが「かけ放題プラン」を導入できるかどうかだ。キャリアと違いMVNOは知恵を絞り様々なプランをすでに導入しているし今後も導入していくに違いない。「かけ放題」にしても完全定額制ではないものの一部似たようなプランを実施している業者もいる。キャリアとの接続料が下がれば、今後より本格的な「かけ放題プラン」を導入するところが、早ければ来年度中にでも出現するのではないかと私は読んでいる。
もし、そういう魅力的なプランが現れても、2年契約で縛られていると変更できないので、縛りがないSIMフリーを使いながら待っているのが今の私の現状である。
また常に一定割合で新規顧客を増やさなければ企業は停滞あるいは衰退する。
故に、新規顧客優遇策がなくなることはないのだ。
このように新規顧客優遇策がなくなることはないのだから、仮に「実質ゼロ円」
みたいなことは止めろと規制したとしても必ずほかの方法が現れる。その度に規制をかけていくのか。発泡酒、第3のビールの酒税アップの様に。それでは消費者利益を守るという当初の目的から外れ、逆の結果になるだろう。
私のスマホ代・・・高すぎ!?月額972円(税込)からLTE高速通信が使える「OCN モバイル ONE」
3.ハードとソフトの徹底分離を
スマホ利用料で最も不満が高いのは30秒20円という通話料の高さだろう。フィーチャホン(従来型の携帯電話、いわゆるガラケー)の場合は平均的なところで30秒14円(ドコモのタイプMバリュープラン)。最も割高なタイプSSバリュープランで30秒20円だが、無料通話分1,000円が付くから、やはりスマホに替えた瞬間、通信料が跳ね上がったという印象は拭えない。
ところで、本稿で通話料を比較するためフィーチャホン、スマホの通話料を調べたが、いろんなプラン、いろんな割引制度があり、まるで迷路のようで非常に分かりにくい。各種制度に詳しくない人では販売店の勧められるままになってしまう。もっと分かりやすい、シンプルなプランに変えることこそ必要ではないか(公平感を保つためにも)と思ってしまう。
その点、SIMフリーを扱うMVNO(仮想移動体通信事業者)の料金体系はシンプルで、各社とも通信料は30秒20円。後は使える容量によって(月1Gまでとか3G、5Gというように)料金が違うだけだから非常に分かりやすい。
無料通話分などのサービスは一切ないが、楽天電話、FREETEL電話、Biglobe電話などの電話アプリを使えば通話料が半額(30秒10円)で使える。
今春以降、SIMロック解除が義務付けられたおかげでMVNO市場は2015年9月末時点で3,642万回線と前年比88.9%増と急速に拡大し、今年度末には4,000万回線突破が確実視されている。
SIMフリー市場が拡大しているのはキャリアの利用料が高いからに他ならないが、この先も市場が拡大し続けるかと言えば多少疑問符が付く。
それはパソコンのDOSV黎明期と似ているからだ。日本国内でPCといえばNECの98シリーズを指すほどNEC製PCが幅を利かせ、その頃の販売方法はハードとソフトのセット販売だった。OSはNEC用にカスタマイズされたMS-DOSを使うしかなく、ハードとソフトを別々に調達して使うなどというのは一部の先進的マニアの利用方法でしかなかった。いま振り返れば嘘のような話だが。
いまスマホも同じ過程を辿りつつある。にもかかわらずスマホの利用料が下がらないのはユーザーが自由にハード(端末)とソフト(SIM)を組み合わせられないからだ。
SIMロックは解除されたものの、相変わらずキャリアはスマホとSIMのセット売りをしており、単品売りに応じていない。要はハードとソフトの完全分離がまだ不十分なのだ。両者の完全分離を義務付ければほぼ間違いなく価格は下がる。
4.2年縛りの撤廃を
携帯電話(スマホ、フィーチャホン)の自由な乗り換えを妨げている最大の要因はキャリアによる「2年縛り」と高い解約料だろう。例えばMVNOへの変更を考えたとしても2年契約で縛られているため、期間途中の解約は違約金を科せられる。この金額がバカにならないのだ。
仮に契約満期前に他社への転出を考えるとどうなるか。
解約料:9,500円
転出手数料:3,000円が請求される。
さらに他社へ移動する場合は転入時の手数料(3,000円)を契約先に支払わなければならない。
そのため2年途中での解約、他社への転入時に必要な金額は
9,500円+3,000円+3,000円=15,500円(税別)
これだけが余分な出費になる。なかでも大きいのが解約料だ。仮に100歩譲って解約料を認めるにしても1年以内に限りとか、残月数により解約料が減少していくようにすべきだろう。そうすれば契約者の移動は楽になり、携帯電話利用料はぐんと下がることになる。
なにもキャリアに「通信量が少ない人向けのプラン」を導入しろなどと言う必要はないのだ。すでに1G、3GなどのプランはMVNOが導入しているのだから。
要はMVNOを利用しやすい環境を作りさえすれば済む話だ。それをせず、キャリアに「通信量が少ない人向けのプラン」導入を迫る今回の提言は方向がおかしい。
5.「かけ放題プラン」がMVNOに登場するか
以上見てきたように、ハードとソフトのセット販売、2年契約と高い解約手数料でユーザーは縛られ、自由にキャリア間、あるいはキャリアからMVNOへの移動がしにくい。これは裏を返せば一度ユーザーを取り込めば最低でも2年間は固定化できるわけで、そのためなら割引拡大をしてでもユーザーを取り込みたい(取り込んだ方がいい)と考えるのは道理だろう。かくして競争が「割引サービス」に矮小化されてしまう。
つまり競争原理を働かせるためには上記2点(特に高い解約手数料と「2年縛り」)をなくす、あるいは下げることだ。そうすれば、ユーザーは自由にキャリア間を、あるいはキャリアからMVNOへの移動がしやすくなる。
そうなればキャリアはユーザーを繋ぎ止めるためのサービス(価格、プラン内容)を多様化せざるを得なくなり、競争原理が働いてくる。
最後に、今回の「提言」で取り残された部分の問題。ライトユーザーへの対策のみが取り上げられ、長期利用者やヘビーユーザーへの対策が全くといっていい程触れられていない点をどうするのか。
月間通信量1G、せいぜい使っても3G以下というライトユーザーへの対策はキャリアが新しいプランをわざわざ作るまでもなく、すでにMVNOが実施しているから、MVNOへ任せればいい。後は移動しやすくするだけでいい。
何度も繰り返すが、障壁になっているのは「2年縛り」と高い解約手数料だ。これさえなくなればユーザーは各社の料金やプランを検討し、いつでも自由に移動できる。
それより問題は長期利用者や通信料が多いヘビーユーザーの負担をどう下げるのかだ。例えば利用年数に応じて通信料が下がっていくプランを導入するのはどうだろう。
これは比較的簡単に導入できるように思える。すでに固定電話等では似たようなシステムが導入されているではないか。
もう一つはMVNOが「かけ放題プラン」を導入できるかどうかだ。キャリアと違いMVNOは知恵を絞り様々なプランをすでに導入しているし今後も導入していくに違いない。「かけ放題」にしても完全定額制ではないものの一部似たようなプランを実施している業者もいる。キャリアとの接続料が下がれば、今後より本格的な「かけ放題プラン」を導入するところが、早ければ来年度中にでも出現するのではないかと私は読んでいる。
もし、そういう魅力的なプランが現れても、2年契約で縛られていると変更できないので、縛りがないSIMフリーを使いながら待っているのが今の私の現状である。