声の仕事とスローライフ

ただ今、仕事と趣味との半スローライフ実践中。遠方の知人友人への近況報告と、忘れっぽい自分のためのWeb忘備録です。

TVデビュー

2013-01-23 16:28:54 | テレビレポーター、キャスターの仕事
私が自衛官から局アナになった30年前は、まだ「女子アナ」という言葉が
存在しない時代でした。

また、キャスターという言葉もチラホラ使われ始めた頃で、
今ならサブキャスターという表現になるのでしょうが、

私の呼び名は「アシスタント」でした。

そもそも、
自衛官からアナウンサーなんていう話は、その当時も聞いたことがありません。

アナウンス室長は、私に言いました。

「変わった新しモノ好きな県民性でね。」

その言葉に、なぜ、自分が選ばれたのかが分かりました。

先輩アナウンサー達から
室長は口うるさく厳しい人だという評判を聞いてはいましたが、
中には、やや反抗的な態度を取る先輩もいました。

例えばラジオのワイドが終わって
帰って来た一年先輩のMアナに対し

「 お疲れさん、Mちゃん。
あの表現は、ちょっと砕けすぎだね。もう少し慎重に言葉を選んで話しなさい」

と言われたMアナが
返事もせずに、不服そうな表情をあらわにして、

スッと無言で出て行くという具合いです。


そんな室長が何故か私には好意的でした。

TVデビューを控え
カメラテストを終え帰ってくると

「NHKのアナウンサーを見習って、髪を短くしなさい」

と命令口調で指示を出しましたが、
私には、嫌な気はしませんでした。

そして言われた翌日、
ロングからショートヘアに変わった私を見るなり

「 うん、いいよ。似合うよ。」

と、ご満悦の様子でした。

室長にしてみれば、
元自衛官の私には、何でも命令通りに従ってくれる、という期待感もあったのでしょう。


TVの初仕事は、
夕方のニュースワイドの中での
「お天気コーナー」
生放送は当然、生まれて初めての経験です。

何度もリハをやって、いざ本場、

メインキャスターから
「今日から新しいお天気おねえさんが登場します」

と紹介され、1カメから2カメに切り替わったとたん、

私は、固まってしまいました。

そして、カメラの上のON AIRランプが点灯しているのを見ながら、

一言も出て来ないという恐怖の瞬間を味わいました。

こう言う時の一秒はとても長く感じる
ものです。
数秒の間、無言でただボーッと突っ立っている私に
カメラの横に立っているディレクターから

( なんか喋って!)

という小さくも厳しい口調のカゲの声だけが、シーンとしたスタジオに響き渡り、
私はますますパニックになりました。

そうなのです、頭の中が真っ白け、

リハではツラツラ言えた
30秒程度の前振りが全て吹っ飛んでしまったわけです。

生来のアガリ症が、復活した瞬間でした。(~_~;)


清水由美 

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