声の仕事とスローライフ

ただ今、仕事と趣味との半スローライフ実践中。遠方の知人友人への近況報告と、忘れっぽい自分のためのWeb忘備録です。

180度の“とらばーゆ”

2013-01-20 11:49:11 | テレビレポーター、キャスターの仕事
私のアナウンサーとしての初仕事、
業界用語でいう「初鳴き」は、
ラジオの天気予報でした。

終わってアナウンス室に帰ってくると

「落ち着いた声だね、やっぱりニュース向きだね。」

とアナウンス室長が、笑いながら言いました。

ラジオ、テレビの両方を持つ局でしたので
その数日後にはTVのニュースワイドを担当する事も決まっていました。

発声と腹式呼吸だけは身についていると言われたものの、
アナウンスの基礎はアナウンス教室で学んだ半年程度では不充分、

原稿読みは何とかこなせても、
何よりボキャブラリーが貧困で話し下手、インタビューなどは全くの未経験、

同期入社で地元出身のK子さんのような大学の放送学科で勉強してきた人との差は
一目瞭然でした。

そのうえ、見ず知らずの土地へ来て、
局が用意してくれた社宅に入り、
距離にして片道15分の局と社宅の間を電車で往復する毎日…、

それは三カ月前、自衛隊を除隊した直後は予想もしていなかった生活でした。

自分の許容範囲をはるかに超える知識の習得が求められている事に、
焦りと戸惑いの連続でした。



入社して一週間の研修中の事です、
アナウンス室で机に座って次の指示を
待っていると、
当時の先輩アナウンサーSさんから
言われました。

「街へ出て季節ネタを探してくるのも仕事のうちだよ。
デパートのショウウィンドウや映画館での上映作品も観ておくこと。
それから、台風がきたら必ず川の水量
などをチェックすること!」

今のようなネットの情報もない時代です、
フリートークのネタ探しから、取材のアポ取り、原稿書きまで、
全て一人でこなす自主性が求められていたのです。

思えば、自衛官時代は、命令のままに行動するだけで余計な事は一切考えなくてもいい、
とまで言われた環境、

二年間その中に身を置いて、慣れきっていたわけです。


180度も違う“とらばーゆ"をしてしまった事に気づいたのは、
入社後間もない時期でした。(~_~;)

清水由美 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする