青柳いづみこさんの小説を読んだ。
音楽高校でピアノを専攻する女子高生がある日突然、声が出なくなり音声障害だと診断される。
グレン・グールドのように声に出さなくとも、ピアノを弾く時にも無意識のうちに声帯に負担をかけている…ことや、
声帯のメカニズムを、
耳鼻咽喉科の医師や音声学の専門家ら登場人物の言葉を借りて説明している行もあり、
2、3回読み返さないと私のような者には理解しづらい箇所もあったが、
読み応え充分な内容だった。
デルモナコやF・ディスカウなど有名なオペラ歌手の声帯のはなし、
それに同じ題材を扱った物語から、能とオペラの表現の違いや比較など、
音楽の研究者らしく興味深い内容をストーリーに盛り込みながら、
主人公のピアノを続ける事への葛藤などが描かれる…
とくに主人公を取り巻く家庭環境は複雑だ。
青柳いづみこさんの著書は何冊か読んでいるが、この
《水のまなざし》は初小説らしい。
早期の音楽教育に対して一石を投じている?と思えるような行もある。
音楽への鋭い洞察力や、きめ細かい取材に基づいたピアノを勉強する女子高生の描写が生々しい。
さすがの視点だと思いながら、3時間で読み終えた。
ベートーヴェンの《悲愴》が聴きたくなった。
明日からのゴールデンウィークは天気が不安定な日が多いようだ。
庭のクレマチスが咲きはじめた。