東京の地下鉄の象徴的な存在だった千代田線の6000系置き換え用として16000系がお目見えしたのは2010年の事で、在来車に於いても省エネルギー・快適性を重視した車両を製造して来ましたが本形式では新たなコンセプトとして「環境」を掲げています。車両デザインはJR東日本の旅客車両でお馴染みの奥山清行(Ken Okuyama)氏が手掛けており、先代6000系に劣らない斬新なイメージの車両に仕上がっています。走行機器については東芝製で全密閉構造のPMSM(永久磁石同期電動機)をJR東日本E331系に続いて採用しましたが、こちらがDDM(ダイレクトドライブモーター式)であったのに対し通常の歯車減速式駆動方式では日本初の採用例になりました。
最初期に登場した1次車(16101〜16105F)5編成は、プラグ式の非常用貫通扉が中央部に設置されている均整の取れたデザインでした。しかし乗務員サイドから運転席より前方右側の視認性に若干難ありとの意見が出たため、早くも設計変更されることになります。
2次車からは貫通扉が車掌台側にオフセットし、非対称の正面スタイルになりました。写真は小田急線の複々線区間を走行する姿ですが、2018年の複々線完成に伴うダイヤ改正以降日中の運用の大半が緩行線を走行する準急に建て替えられた関係で、昼間時の明るい時間に撮影出来る急行運用は土日祝日限定となってしまいました。
有楽町線・副都心線用の10000系で確立した強化ガラスを多用する車内は本形式にも引き継がれ、座席の大型袖仕切り部にもガラスが用いられるようになり白を基調にした化粧板と相俟って非常に開放的な空間に仕上がりました。
車内案内表示器は17インチワイド液晶画面でIPコアは三菱電機セサミクロが用いられており、高品質アニメーション表示を可能にしています。ドア点検蓋を兼ねる筐体はアルミ成型品ですが、内装に合わせて塗装を施すなど拘りが伺える部分です。
初期車の初登場から既に11年が経過した16000系ですが、現在は千代田線のワンマン化に向けての改造工事が開始され、16129Fが第一陣となり車内監視カメラやワンマン機器を搭載して出場しました。今後も長く千代田線の主力車両として君臨することでしょう。