町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

伝統を引き継ぎながらコスト適正化を図った新形式車・阪急電鉄1000系

2024年10月19日 | 阪急電鉄

阪急電鉄の神戸本線・宝塚本線は2010年代に入っても消費電力の大きい抵抗制御の5000・6000系が数多く在籍し、主力車両として運用されていました。これら旧来の車両の置き換えを実施すべく開発されたのが1000系で、2013年6月6日に導入計画が発表され、同年11月28日より営業運転を開始し2021年までに神戸線に8両編成11本、宝塚線に9本が導入されています。阪急電鉄による1000番台の車両形式は1954年に導入された本格的な高性能車1000形以来のことで、一部メディアでは識別のため1000系(2代)などとも表記されます。

2006年登場の9000系のコンセプトは引き継ぎながらもコストダウンを図った新しいデザインの車体となり、屋根上機器カバーの廃止や側扉間を3分割、車端部を2分割としドア窓寸法も8000系並みのサイズに戻した為、在来形式に近い雰囲気になりました。写真の1002Fはワーナーブラザース・ディスカバリー グローバル・コンシューマープロダクツとのタイアップ企画で2024年8月23日から「トムとジェリー号」として2025年3月27日まで運用される予定です。

阪急では長らく編成内に制御電動車が設定されていましたが、1000系では両端を付随制御車とし、1975年登場の6300系以来の仕様となりました。正面は定期列車で他車両の増結は行わないので、1960年登場の2000系以来引き継がれて来た銀の幌受けが廃止されています。

車内設備は在来車同様マホガニー木目調の化粧板にゴールデンオリーブの座席を引き継いでいますが、阪急では初めて大型袖仕切りとスタンションポールを新設しており、車内の印象は大きく変化しています。9000系で採用されたパワーウインドウや自動の妻面貫通扉は廃止され再び手動に戻りました。

車内案内表示装置は32インチフルハイビジョン対応の大型液晶画面を設置し、行先や路線図の他、駅間では画面の表示を分割してニュースや天気予報、広告の表示も行います。

登場後は在来車置き換えのため、相当数が増備されると思われましたが、2021年度の1019Fで増備は終了し、今後の神戸線・宝塚線の車両増備は新形式2000系に移行することが発表されました。

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関空アクセス急増を受けて登場、なにわ筋線対応型のJR西日本271系「はるか」

2024年10月17日 | JR西日本

京都・大阪と関西空港を結ぶ特急列車の「はるか」は6両編成を基本とし朝夕時間帯の一部の列車に付属編成の3両編成を連結し9両編成で運転しており、年末年始などの多客期には6両編成から中間車3両を外し他編成に組み込み、残り3両を付属編成として増結する変則的な措置をとっていました。しかし2010年代後半からの訪日外国人旅行客の急増や、2020東京オリンピック開催など更なる需要の高まりから全列車の9両編成化が計画され、付属編成が不足することから新たに車両増備が行われることになりました。この時点で281系の初登場からは20年以上経過していたため、新形式とされ3両編成6本の18両が新造されました。281系には2019年1月より株式会社サンリオとのタイアップでハローキティのラッピングが施工されており増結に用いられる271系も、2024年9月現在全車がラッピング編成として運用されています。

281系と併結で大阪環状線内を走行中の271系。同じくJR西日本管内の特急列車である「くろしお」「こうのとり」用に開発された287系をベースにしながらも281系との一体感を出すためカラーデザインなどは揃えられる一方、前頭部には両開き貫通扉と常用貫通路を備えており、271系同士で連結する際は幌で繋げられ編成間の通行を可能としました。メカニズム面では0.5M方式による全電動車方式で、VVVFインバータ制御は323系で実績のあるフルSiC-MOSFET素子(型式名:WPC16)を搭載しています。

はるか運転開始30周年記念ロゴが入った姿。現在では3両編成で普通車のみが在籍する271系ですが、将来的には6両編成の設計も視野に入れられている他281系も置き換え構想が発表(後に削除)されたことがあるため今後の本格的増備は、なにわ筋線開通の時期に合わせて開始されるものと思われます。

車内は281系の配色を引き継ぎながらも、JR西日本の在来線特急列車で初めて全席コンセント設置した他、多言語表示に対応する大型液晶画面、トイレ設備も車椅子対応とされ、洗面台は水とハンドソープが自動で出る方式になるなど接客設備は大幅にグレードアップしました。セキュリティ面でも防犯カメラを1両当たり8・9台に増やしています。

座席のどこからも見えやすくなった車内ディスプレイはデッキとの仕切り扉上に設置し、4ヶ国語(日本語・英語・中国語・韓国語)で表示し、情報量も一気に増えました。

前述した通り「はるか」運転開始から30周年を迎え、281系も経年30年で特急型電車としては古参の部類に入っています。一度は白紙になった置き換えが本格的に開始されるのも遠いことではないと思いますが、271系も増備開始時にどのような変更を盛り込んで来るか注目されるところです。

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登場から30周年目、関空アクセスから地域輸送までをこなすJR西日本223系0番台

2024年10月15日 | JR西日本

1994年9月4日の関西空港開港に当たり、鉄道による空港アクセスはJR西日本と南海電気鉄道の二社が担う事になり、JR西日本は特急型電車の281系と共に221系の実績を踏まえ快速用として223系0番台を新たに製造しました。開港間近となった同年2〜3月に掛けて6両編成9本と2両編成7本が日根野電車区に配置され、後に設計変更で大量増備され京阪神都市圏輸送の主力車両となる223系グループの初登場になり、1994年度グッドデザイン賞も受賞しています。今年で登場から281系と共に30周年を数えますが、置き換え構想が浮上している281系とは異なり、全車両が体質改善工事を施工され、後継の225系5000・5100番台の登場後も主力車両としての地位を守り続けています。

225系5100番台と併結し、関空・紀州路快速運用に活躍する0番台。本番台はビードレスのフラット外板に正面は丸型の前照灯で、207系1000番台と同様の1C1M方式のGTOサイリスタを素子に用いたVVVFインバーター制御方式を導入するなど他番台には見られない特徴を備えていました。また、編成組み換えの機会が多く1999年には紀州路快速の新設に伴い編成を5両+3両に組み換え、不足する車両数を補うため新快速用2000番台をベースに0番台に仕様を近付けた2500番台が初登場し先頭車4両が新造され0番台の中間車を組み込み、2008年には増発と増車に4両編成への統一のため2500番台3次車が5両から抜いたサハ223-100を組み込む為のクモハ+モハ+クハの3両と0番台3両に組み込むことを前提にモハ223型が単独でそれぞれ合わせて60両が登場。現在は0番台のみの4両編成(H401-409)と、モハ223型2500番台を組み込む編成(H410-416)、更に2500番台にサハのみ0番台を組み込んだ編成(H417・418・H422・423・H426〜432。それ以外は全車2500番台で組成)の3種類が見られます。

安全対策で先頭車への転落防止幌設置が2015年より施工されましたが、登場から25年前後が経過した2018年からは体質改善工事も開始され外観では種別・行先をフルカラーLED化、運行番号表示撤去、前照灯をシールドビームからLED2灯式に換装し従来の尾灯は撤去、排障器一体型の機器保護カバー新設と前面予備ワイパー設置、またVVVFインバーター制御装置の更新が施工され登場時とは印象を大幅に変えました。

空港アクセス主体になることからスーツケースなどの手荷物を持つ利用者が多くなることを考慮して2人掛け+1人掛けとされた車内。登場当時はノルウェーのエクネス社が製造した輸入品で、1人掛け座席には荷物固定用ワイヤーも備えていましたが2006年までに住江工業製に交換されました。座席モケット更新は2011年からで225系5000番台と同一品に改められています。なお写真は2021度以降に施工されたタイプで、吊り手の交換やトイレの車椅子対応化を実施する一方、床材更新や照明カバー撤去は見送られるなど微妙に簡素化されています。

東海道・山陽本線向けの223系グループはWESTビジョンと称する液晶画面に換装された編成が登場する一方で、0番台は登場以来のLED表示が存置されています。多種多様な情報を表示できる液晶画面の案内表示は空港アクセス編成にこそ必要な設備だと思いますが、この点は意外でした。

現在は205系と103系の置き換えも225系で行い、阪和線の一般車両が3ドアで統一されたことから時間帯を問わず普通列車運用にも充当され汎用車的な立ち位置になり、今後も相当長く活躍しそうな予感です。

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新形式の登場で今後の去就が気になる東武鉄道10030系(50番台)

2024年10月13日 | 東武鉄道

8000系の置き換えが進んだ現在の東武鉄道各線で主力車両として活躍しているステンレスの10000系グループの内、ビードプレス車体に設計変更した10030系は伊勢崎線・東上線の幹線での運用が長らくメインでした。しかし新系列の増備や運用変更などから野田線への転属が2013年に初めて発生、同年4月20日より10030系50番台(以下10050番台として記述)の11652Fが営業運転入りし同線の歴史では初めての軽量ステンレス車となりました。その後は中間に入る先頭車の付随車化や車内リニューアル改造、ワンマン対応化など大規模な更新を受ける編成が現れる一方で改造を受けず先輩格の8000系よりも先に廃車された編成もあり、明暗が別れた形となっています。野田線には10030系リニューアル編成と未更新のままの10050系がそれぞれ転入し、このまま安泰かと思われましたが、2024年4月16日に東武鉄道は新形式80000系の導入を発表し同時に既存の60000系も共に5両編成に減車することを発表し8000系と共に置き換えが決定的になりました。

野田線で急行に充当中の11651F。野田線転入に当たり帯色変更・ロゴマーク貼り付けと自動分併装置の撤去が施工されています。10050番台は1992年からの増備分で冷房装置のカバーが連続型になり車内にも補助送風装置を新設した他、途中駅での連結・切り離しを迅速に行うため先述の自動分併装置付き密着式連結器を装備し伊勢崎線系統に多く配置されました。

10000系グループの中でも経年が新しいグループですが、80000系への置き換え後は本線復帰も…と予想されましたがリニューアルも受けていない事や自動分併装置の再設置が必要になること、また2025年時点で経年も30年余に達するため直接廃車にされてしまいそうです。

東上線系統にも6両と4両を固定編成化した10030・10050系が数多く在籍し、VVVFインバーター制御への改造を受けた編成も存在しますが未更新のままの編成も数多く残っています。東上線では東京メトロ有楽町線・副都心線への直通運転対応車として9000系が在籍していますが、こちらは置き換えが発表されており未更新で界磁チョッパ制御のまま残る10030系グループも近い将来は確実に何らかの形で一部のリニューアル車以外は置き換えが進められることが想像されます。

車内は前回記事にした10030系と同じ配色、座席配置ですが天井に補助送風装置が設置されており若干印象が変化しました。さすがに車内案内表示・自動放送ともに未設置のため陳腐化している印象は否めないですね。

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