京都・大阪と関西空港を結ぶ特急列車の「はるか」は6両編成を基本とし朝夕時間帯の一部の列車に付属編成の3両編成を連結し9両編成で運転しており、年末年始などの多客期には6両編成から中間車3両を外し他編成に組み込み、残り3両を付属編成として増結する変則的な措置をとっていました。しかし2010年代後半からの訪日外国人旅行客の急増や、2020東京オリンピック開催など更なる需要の高まりから全列車の9両編成化が計画され、付属編成が不足することから新たに車両増備が行われることになりました。この時点で281系の初登場からは20年以上経過していたため、新形式とされ3両編成6本の18両が新造されました。281系には2019年1月より株式会社サンリオとのタイアップでハローキティのラッピングが施工されており増結に用いられる271系も、2024年9月現在全車がラッピング編成として運用されています。
281系と併結で大阪環状線内を走行中の271系。同じくJR西日本管内の特急列車である「くろしお」「こうのとり」用に開発された287系をベースにしながらも281系との一体感を出すためカラーデザインなどは揃えられる一方、前頭部には両開き貫通扉と常用貫通路を備えており、271系同士で連結する際は幌で繋げられ編成間の通行を可能としました。メカニズム面では0.5M方式による全電動車方式で、VVVFインバータ制御は323系で実績のあるフルSiC-MOSFET素子(型式名:WPC16)を搭載しています。
はるか運転開始30周年記念ロゴが入った姿。現在では3両編成で普通車のみが在籍する271系ですが、将来的には6両編成の設計も視野に入れられている他281系も置き換え構想が発表(後に削除)されたことがあるため今後の本格的増備は、なにわ筋線開通の時期に合わせて開始されるものと思われます。
車内は281系の配色を引き継ぎながらも、JR西日本の在来線特急列車で初めて全席コンセント設置した他、多言語表示に対応する大型液晶画面、トイレ設備も車椅子対応とされ、洗面台は水とハンドソープが自動で出る方式になるなど接客設備は大幅にグレードアップしました。セキュリティ面でも防犯カメラを1両当たり8・9台に増やしています。
座席のどこからも見えやすくなった車内ディスプレイはデッキとの仕切り扉上に設置し、4ヶ国語(日本語・英語・中国語・韓国語)で表示し、情報量も一気に増えました。
前述した通り「はるか」運転開始から30周年を迎え、281系も経年30年で特急型電車としては古参の部類に入っています。一度は白紙になった置き換えが本格的に開始されるのも遠いことではないと思いますが、271系も増備開始時にどのような変更を盛り込んで来るか注目されるところです。