石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油と中東のニュース(7月10日)

2020-07-10 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(コロナウィルス関連ニュース)
・ドバイ:エア・フランス、ルフトハンザ等13の航空便運航再開
(石油関連ニュース)
・リビア、石油の十字路Sirte攻防巡り、トルコと欧米が激しく対立。内戦から国際紛争に拡大
(中東関連ニュース)
・シャルジャ副首長、英国で死去。  *
・オマーン、技術者の50%以上が女性、米国の19%を大幅に上回る:UNESCO
*「シャルジャ及びラス・アル・ハイマ首長国系譜(アル・カシーム一族)」参照。

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見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(39)

2020-07-09 | その他
(英語版)
(アラビア語版)

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)


3.イラクのクウェイト進攻と湾岸戦争(西暦1990年、ヒジュラ暦1410年)
 ヒジュラ暦1400年、西暦1980年に始まったイラン・イラク戦争は、地上戦では一進一退の消耗戦の様相を呈し、またペルシャ(アラビア)湾では互いが相手の石油積出施設を空爆、さらにイランがペルシャ湾を航行する石油タンカーを攻撃し、ペルシャ湾の入口であるホルムズ海峡の封鎖をほのめかすなど事態はエスカレートしていった。しかしようやく1988年になって両国は国連の調停案を呑み停戦にこぎつけた。この時、イランのホメイニ師が停戦の受諾は「毒を呑むよりつらい」と語ったのは有名である。

 イラン・イラク戦争はイラクにも大きな犠牲を強いた。内政は崩壊の一歩手前であった。しかしフセインは一筋縄ではいかぬ独裁者である。彼は災いを逆手にとって権力保持に突っ走った。国内では強権的手法を一層強め、二人の息子を使って部下には忠誠を強要し、南部のシーア派、北部のクルド族それぞれの住民を弾圧した。フセインと彼の忠実な部下たちは国内では少数派のスンニ派である。彼らは権力を失うと過酷な報復が待っていることを自覚している。だから部下たちはフセインの命令に絶対服従を誓い、反政府勢力を弾圧した。絶対的独裁政権が意外と強固なのはそれなりの理由があると言えよう。

 対外的にもイラクはクウェイトやサウジアラビアに多額の負債を抱え財政破たんの状態であったが、フセインは両国からの借金返済要求も無視した。彼に言わせれば、今回の戦争はスンニ派を代表してシーア派のイランと戦ったのであり、イラクは兵力を供出し、スンニ派産油国が戦費を負担するのは当然である、ということになる。過去の歴史を見ても戦争に費やした金は常に戦勝国が敗戦国から搾り取るものであって同盟国が他の同盟国に戦費の返還を求めた例は無い。それが国際外交で通用しなくなったのは第二次世界大戦後、豊かで鷹揚な米国が敗戦国を搾取することを禁じたからである。そこには第一次世界大戦で戦勝国フランスが敗戦国ドイツを搾り取り、その結果がナチスの台頭を許し第二次世界大戦につながったという苦い経験もあった。フセインの言い分は無茶苦茶なものではあるが、それなりの理屈が無くはない。「盗人にも三分の理」とでも言うべきであろうか。

 停戦の翌年イランのホメイニ師が86才で波乱の生涯を終えた。イランはその後ますます国際的孤立を深める。フセインが次に狙ったのは南の隣国クウェイトであり、さらにアラブの覇者となるための絶対条件ともいうべきイスラエル打倒であった。彼はまず手始めにクウェイトを狙った。クウェイトは貸し付けた戦費の返済をしつこく迫っており(クウェイトにすれば当然の要求だったが)、また同時に当時のOPEC(石油輸出国機構)加盟国の中で安値販売の先頭を切っていた。戦災復興を急ぐためできるだけ高値で原油を販売したいイラクにとってクウェイトは目障りな存在であった。フセインは兵力をクウェイト国境に集結し圧力をかけた。

 しかし当のクウェイトを始め国際社会はこれを単なる脅しとみなし、フセインがまさかクウェイトに進攻するなどとは考えていなかった。アラブ連盟の緊急会議が開かれたとき、弁明に立ったイラク外相は極めて穏やな話しぶりであったと言われる。アラブ諸国は話し合いで事態が解決すると信じた。さらに当時の米国大使もフセイン大統領と面談したが、大統領の物腰は極めて紳士的であったため、大使はイラクに戦争の意思なし、と本国に誤ったシグナルを送った。

 状況を見誤ったのはフセイン大統領も同じであった。彼はイラクがクウェイトに進攻してもアラブや欧米諸国が強硬手段をとらないと踏んだ。こうして1990年8月未明、フセインは国境に配備した部隊にクウェイト進攻を命じた。寝耳に水で慌てふためいたのはクウェイトの支配者サバーハ家である。寝込みを襲われた首長を始めとする王家一族は命からがら国境の南サウジアラビアに逃げ込んだのであった。クウェイト国内では戦闘らしい戦闘もなく、わずか半日でイラク軍に制圧された。イラクのクウェイト占領は翌年1月の湾岸戦争まで約半年間続く。この間、日本人を含むクウェイト在住の外国人はイラクに拉致され「人間の盾」とされる災難に遭うのである。

 イラクのクウェイト進攻が国際社会の誤算だったとするなら、その後国際社会が一致してクウェイト解放を唱えたことはフセインの思わぬ誤算だったと言えよう。フセインはクウェイトがもともとイラク南部バスラ州の一部であったと主張したが、戦後半世紀が経ち世界各地に生まれた国民国家を尊重する国際社会の中にあっては力ずくの領土併合は到底認められないことであった。11月には国連安保理で武力行使を容認する決議が採択された。米国を中心とする多国籍軍が編成され、アラブ諸国からはサウジアラビアなど湾岸君主制国家やイラクと同じバース党が支配するシリアも連合軍に加わった。イラン・イラク戦争では巧妙な戦略で全世界を味方に引き込んだイラクが、今度は全世界を敵に回したのである。

 翌1991年1月多国籍軍はバクダッドを始めイラク軍の陣地を空からミサイル攻撃した。ミサイルが標的に向かう一部始終はテレビ中継され、世界中の人々はそれをまるでテレビゲームのような感覚で眺めていた。「湾岸戦争」の始まりである。2月には地上部隊がクウェイトそしてイラクに怒涛の如く進撃した。イラク軍は潰走、100時間後には多国籍軍は戦闘行動を停止し停戦を宣言した。

 この時多国籍軍はイラクの首都バクダッドを目前にし、あと一押しでフセイン政権を倒すことができた。敬虔なキリスト教徒であり十字軍気取りのブッシュ(父)米国大統領は異教徒の独裁者フセインを葬り去ることを強く願ったはずである。しかし国連決議はあくまでクウェイトの解放であってイラクのフセイン体制打倒を認めたものではなかった。イラクのことはイラク国民に任せるという内政不干渉の鉄則が戦闘を停止させた。付言するなら父ブッシュ大統領の悲願は10数年後に息子のブッシュ大統領が「イラク戦争」という形で実現したのであった。

 フセインはよくよく運の強い男である。彼は湾岸戦争を生き延びてさらに10年以上イラクで独裁者として君臨することになる。

(続く)

荒葉 一也
E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp
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中堅国家が軒並み格下げ、不吉な予兆?:世界主要国のソブリン格付け(2020年7月現在) (下)

2020-07-09 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0507SovereignRating2020Jul.pdf

 

3.2017年7月以降の格付け推移(続き)

(アブダビがAAに残りクウェイトは格下げ、ますます格差開くオマーンとバハレーン!)
(2)GCC6カ国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)
 GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2017年7月時点ではUAE及びクウェイトの格付けが最も高いAAであり、これに続きカタールがAA-に格付けされていた。サウジアラビアはこれら3カ国より3乃至4ランク低いA-であり、オマーンは投資不適格のBB+であった。有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がわずかなバハレーンのソブリン格付けはBB-にとどまっていた。

 経済力の弱いオマーンとバハレーンはその後下落傾向が止まらず、バハレーンは2017年下半期にBB-からB+に格下げ、またオマーンは2018年上半期にBB+からBBに落ちている。その後2019年下半期までは6カ国ともソブリン格付けに変化は無かった。しかし今年上半期には、アブダビとともに6カ国では最上位の格付けAAを保持していたクウェイトが1ランク格下げされカタールと同じAA-になっている。そしてオマーンは2018年上半期に続いて再び1ランク格下げされBB-になっている。

 この結果7月現在のGCC6カ国の格付けは、アブダビが最も高いAAであり、これに続いてクウェイトとカタールがAA-に格付けされている。サウジアラビアの格付けはこれら3か国からやや離れたA-であり、オマーンとバハレーンは上位4カ国に大きな差を付けられ、それぞれBB-及びB+の格付けである。GCCではアブダビ、クウェイト、カタール、サウジアラビアの上位4カ国が投資適格であるが、オマーンとバハレーンは投資不適格である。

以上

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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石油と中東のニュース(7月8日)

2020-07-08 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
(中東関連ニュース)
・UAE火星探査衛星、7/15日種子島での打ち上げ目指し準備進む
・世界遺産イスタンブール・アヤ・ソフィア宮殿のモスク改装計画にロシアが警告

・スエズ運河建設功労者レセップス卿銅像の移設で論争

・サウジSAMA:外国人の銀行口座凍結のうわさを否定
・NEOMとACWAPower/Air Products、自然エネルギーによる水素製造プロジェクト合弁事業を設立
・イラク:過激派スポークスマンのHashemi氏銃撃で死亡

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吸い上げる米国と中国、吐き出す日本:UNCTAD「世界投資レポート2020年版」(6)

2020-07-08 | その他
(世界ランクシリーズ その9 2020年版)
http://mylibrary.maeda1.jp/0509WorldRank9.pdf

(世界ランクシリーズ その9 2020年版)

(2017年までトップを続けた米国、対外投資額を競う日本と中国!)
(3) 2012-2019年の対外投資額(FDIアウトバウンド)の推移
(表http://rank.maeda1.jp/9-G03.pdf参照)
2012年以降の世界のFDI Outflows(FDIアウトバウンド)総額の推移を見ると、2012年の1.3兆ドルから2015年には1.7兆ドルに膨張している。しかしその後3年間は減少し続け、2018年には1兆ドルを割っている。2019年は回復して1.3兆ドルと2012年の水準に戻っている。

世界及び中東の主要7カ国(日本、米国、中国、ドイツ、インド、サウジアラビア及びトルコ)のこの間の動きを見ると、米国は2012年から2017年までの6年間、毎年3千億ドル前後の対外投資を続け2位以下を大きく引き離す世界一の対外投資国であった。2018年は▲900億ドルであり、これは2017年以前の投資の本国(米国)への還流が多く発生し、2018年の対外投資額を大幅に上回ったためである。2019年は再び対外投資が活発になり、日本に続く1,250億ドルのFDIアウトバウンドとなっている。

日本の2012年のFDI Outflowsは1,230億ドルであり、2013年から2015年までは1,300億ドル台を維持した。2016年、2017年は1,600億ドル前後のOutflowsがあり、世界のベスト5以内にランク付けされている。2018年は1,432億ドルに減少、2019年は過去8年間で最高の2,300億ドルに増加、両年とも世界一の対外投資国である。

中国の対外投資額は2012年に880億ドルであったが、2013年以降は1千億ドルを突破、2016年には1,960億ドルに達し、その後は減少しているものの、2019年は1,170億ドルで1千億ドル台を維持している。この間、日本と激しい順位争いを繰り広げており、2015年及び2016年の対外投資額は日本を上回る水準であった。ドイツは2013年の395億ドルから2017年の1,041億ドルまで金額的に振れがあるが、2013年以外は毎年世界の上位10カ国に入っており安定している。

インドとサウジアラビアを比較すると2012年のFDI Outflowsはインドが85億ドル、サウジアラビアは44億ドルであった。その後は両国とも直接投資は増加傾向にあり、インドは2017年以降100億ドルを超える水準で推移している。サウジアラビアは2017年まで毎年100億ドル未満であったが、2018年は230億ドルに急増、2019年は132億ドルのOutflowsを記録しており、インドを上回っている。トルコのFDI Outflowsは2012年がサウジアラビアとほぼ同じ41億ドルであり、その後2014年まではサウジアラビアと足並みを揃えていたが、2015年以降は減少傾向に歯止めがかからない。2019年には28億ドルにとどまっており、サウジアラビア(132億ドル)の5分の1にとどまっている。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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他を圧する三大産油国 米・露・サウジ:BPエネルギー統計2020年版解説シリーズ石油篇(7)

2020-07-07 | BP統計
BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
 *BPホームページ:
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-statistical-review-of-world-energy-2020-published.html

3.世界の石油消費量
(世界4位の日本に肉薄するサウジアラビア!)
(1) 国別消費量
(表http://bpdatabase.maeda1.jp/1-3-T01.pdf 参照)
 国別に見ると世界最大の石油消費国は米国で、2019年の消費量は1,940万B/D、世界全体の20%を占めている。第二位は中国の1,406万B/D(シェア14%)である。米国と中国を合わせたシェアは34%であり両国だけで世界の3分の1の石油を爆食していることになる。

3位はインドで前年比3%増の527万B/Dであり、これに対して世界4位の日本の消費量は381万B/Dで前年より1%減少している。2015年にインドと日本の順位が入れ替わったが(BPエネルギー統計2016年版参照)、両国の差は年々広がっておりインドが米国、中国に次ぐ世界第3位の石油消費国に定着している。

日本に続く世界第5位の石油消費国はサウジアラビアの379万B/Dである。サウジアラビアは人口・産業規模とも日本と大きくかけ離れた産油国であるが、発電・造水・運輸などで大量の石油を消費するとともに、大規模な輸出専用製油所が稼働しているため石油の消費量が多く、また年々消費量が増加、2019年の対前年増加率は0.5%である。従って今後も日本の消費減少傾向とサウジアラビアの増加傾向が続けばサウジアラビアの消費量が日本を追い抜く日は遠くなさそうである。

6位以下10位まではロシア(332万B/D)、韓国(276万B/D)、カナダ、ブラジル(各240万B/D)、ドイツ(228万B/D)と続いている。石油は日米などの先進国及びBRICsと呼ばれる中国、インド、ロシア、ブラジルの新興4カ国に大産油国でもあるサウジアラビアを加えた10カ国で世界の6割強を消費している。

上位10カ国の中で消費量が前年より減少した国は米国、日本、韓国及びカナダの4か国であり、その他の6か国は前年より増加している。6カ国の増加率は中国5%、インド3%の両国の伸びが大きく、ロシアは1%、その他サウジアラビア、ブラジル、ドイツは1%未満である。消費量世界一の米国は対前年比0.1%と減少しているが、生産量ベースでは11%と言う非常に高い伸びを示している(第4回参照)。これは米国でシェールオイルの生産が急激にアップし、石油の自給率が100%に近づいていることを示している(自給率については本章後段で説明)。

国別消費量を前章の国別生産量と比較すると興味ある事実が浮かび上がる。米国と中国は消費量世界一位と二位であるが、生産量についても米国は世界1位、中国は世界7位である。両国は石油の消費大国であると同時に生産大国でもある。そしてサウジアラビア及びロシアは生産量で世界2位、3位であり、消費量では5位と6位でいずれもベストテンに入っている。その他消費量8位のカナダは生産量世界4位であり、消費量9位のブラジルも生産量世界10位である。

このように石油消費量上位10カ国のうち6カ国は石油の生産量も多い国々である。一方、消費量ベストテンに入っていても生産量が皆無もしくは非常に少ない国はインド、日本、韓国及びドイツの4カ国である。このように石油を大量に消費する国といえどもその状況は各国によって大きく異なる。従って「消費国」と言うだけで結束して産油国(例えばOPECなど)に対峙することは容易ではないのである。

(続く)

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中堅国家が軒並み格下げ、不吉な予兆?:世界主要国のソブリン格付け(2020年7月現在) (中)

2020-07-06 | その他
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。 http://mylibrary.maeda1.jp/0507SovereignRating2020Jul.pdf

3.2017年7月以降の格付け推移
ここでは2017年7月以降現在までの世界の主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。

(1) 世界主要国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)
ドイツは過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を、また英国は米国より1ランク低い格付けAAを過去3年間続けている。中国及び日本はドイツ、米国、英国に比べさらに低い格付けである。中国は2017年上期まではAA-であったが、同年下期に下方修正され現在は日本と同じA+である。

新興経済国のメキシコ、インド、南アフリカ及びブラジルの2017年7月の格付けは、メキシコが投資適格のBBB+であり、インドは投資適格で最も低いBBB-であった。因みにS&PはBBBを「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」と定義付けている。

南アフリカとブラジルは投資不適格の格付けBBであるが、南アフリカはBB+、ブラジルはBBであり南アフリカの方が1ランク高い。格付けBBの定義は「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある。」とされている。

2018年上半期には南アフリカ及びブラジルが1ランク格下げされ、それぞれBB及びBB-とされ、メキシコとインドは格付けに変更はなかった。4か国はその後今年1月までは同一格付けを維持してきたが、今年上半期にメキシコはBBB+からBBBに格下げされた。また南アフリカも1ランク下に格下げされ現在はブラジルと同じBB-格付けである。

子ここでは触れていないが中東のクウェイト、オマーンも今年上半期に格下げされており、レバノンは高度なインフレと通貨危機に陥っているレバノンの格付けは昨年までのCCCから一挙に無格付けに転落している。これは新型コロナウィルス危機による世界的な景気後退の影響が経済のぜい弱な新興国に集中して現れたと見ることができる。今後その他の新興国、さらには欧米先進国の一部にも格下げが波及する可能性がある。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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石油と中東のニュース(7月6日)

2020-07-06 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(コロナウィルス関連ニュース)
・サウジ、外国人のビザ有効期間延長、期限切れの再入国ビザも
(石油関連ニュース)
・シェルトップ:本社のオランダから英国への移転を検討と発言
(中東関連ニュース)
・UAE内閣改造、経済関係に3閣僚任命
・トルコ、カショギ事件でサウジ人被告欠席のまま裁判継続。証人が死体焼却前後の様子を証言
・イラン、ナタンズ核濃縮プラント火災を認める。ウラン濃縮にかなりの遅れ発生
・サウジ、8千億ドル投じ首都リヤドを地域ハブの1,500万都市に改造
・クウェイト内務省、外国人削減の法改正案を国会に提出
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吸い上げる米国と中国、吐き出す日本:UNCTAD「世界投資レポート2020年版」(5)

2020-07-05 | その他
(世界ランクシリーズ その9 2020年版)

2.FDIアウトバウンド(FDI Outflows, 対外直接投資) (続き)
(資本の動きが活発なイスラエルとUAE!)
(2)主要国のFDI Inflows(FDIインバウンド)とFDI Outflows(FDIアウトバウンド)の差
(図http://rank.maeda1.jp/9-G02.pdf参照)
米国、インド、中国、イスラエル、サウジアラビア、ドイツ及び日本の7か国のFDIインバウンド(FDI Inflows、1-(1)参照)とFDIアウトバウンド(FDI Outflows、2-(1)参照)を比べると各国ごとの特徴が見受けられる。

米国、インド、中国、イスラエルの4カ国はFDI Inflows(FDIインバウンド)がFDI Outflows(FDIアウトバウンド)を上回っている。即ち資本の純流入国である。これに対してサウジアラビア、ドイツ、日本の3カ国はFDIアウトバウンドがFDIインバウンドを上回る資本の純流出国である。前者は直接投資を世界から吸い上げ、一方後者は世界へ向けて吐き出していると言えよう。

米国はFD Inflows 2,460億ドルに対しOutflowsはその半分の1,250億ドルにとどまっており、差引純流入額は1,210億ドルである。米国と対照的なのが日本であり、Inflowsが150億ドルに対し、Outflowsは2,270億ドルに達する。差引2,120億ドルの純流出である。ドイツも日本と同様OutflowsがInflowsを上回り620億ドルの純流出となっている。

FDI Inflowsが世界2位でOutflowsが世界4位の中国は両者がバランスしており241億ドルの流入超過となっている。インドはこれら3か国に比べてFDI Inflows(506億ドル)、FDI Outflows(121億ドル)とも金額は少ないが、InflowsがOutflowsの4倍以上であるため差引純流入額は384憶ドルで中国よりも多い。

中東の投資大国であるサウジアラビアとイスラエルを比較すると、イスラエルはFDI InflowsがOutflowsを上回る直接投資の純流入国である。これに対してサウジアラビアはOutflowsがInflowsを上回る直接投資の純流出国である。イスラエルには同国の先端技術を対象に外国資本が流入し、一方投資の魅力に乏しいサウジアラビアは外国からの投資が少なく、国内資本も外国投資に目が向いているようである。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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石油と中東のニュース(7月4日)

2020-07-04 | 今日のニュース
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
・コロナウィルス再拡大で原油価格下落。Brent $42.58, WTI $40.07
(中東関連ニュース)
・イラン、ナタンズのウラン核濃縮プラント事故による操業の影響なしと発表
・トルコ大統領、カタール訪問。Tamim首長とリビア、シリア、イエメン問題で協議
・イエメンフーシ派によるサウジドローン攻撃頻発
・クウェイト議会委員会で外国人労働者制限法原案可決。インド人は人口の15%以内。成立すれば80万人が出国
・オマーン、銀行団と20億ドルのブリッジ・ローン協議。  *
・トルコ:ゴーン日産元会長逃亡ほう助犯裁判でパイロットに懲役8年求刑

*参考:「世界主要国のソブリン格付け(2020年7月現在)」本ブログで連載中。
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