BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-statistical-review-of-world-energy-2020-published.html
2.世界の石油生産量(続き)
(2010年代に2倍になった米国、減少した中国とイラン!)
(4)主要産油国の生産量の推移(1990年、2000年、2010年及び2019年)
(図
http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-G03.pdf 参照)
1990年以降の各国の産油量の推移を見ると、長期的に見て生産量が増加している国がある一方、減少している国など種々のタイプが見受けられる。ここでは米国、サウジアラビア、ロシア、中国、イラン及びブラジルの6カ国について1990年、2000年、2010年及び2019年の生産量の推移を見てみる。
米国とサウジアラビア及びロシアは2019年の生産量がいずれも1千万B/Dを超えており、中でも米国が他の2国を引き離す圧倒的な生産量を誇っている。1990年以降最も目立つ動きを示しているのは米国である。同国の1990年の生産量は891万B/Dであったがその後長期にわたり生産量は減少し、2010年には756万B/Dに落ち込み、3か国の中では最も少なくなっている。ところが2010年代に入ると急激に生産量が増加、2019年の生産量は1,705万B/Dに達し、2010年に比べ2.3倍と言う驚異的な伸びを記録している。ロシアあるいはサウジアラビアと比べても1.5倍近くの差がある。
サウジアラビアは1990年の711万B/Dから912万B/D(2000年)→987万B/D(2010年)→1,183万B/D(2019年)と3カ国の中で最も安定した伸びを示しており、過去30年近くの間に生産量は700万B/D台から1,200万B/D弱まで増加している。
米国、サウジアラビアの2カ国に対してロシアの生産量は特異な変化を示している。即ち1990年の同国の生産量は1,030万B/Dで3カ国の中で唯一1千万B/Dを超えていたが2000年の生産量は逆に3か国の中で最も少ない660万B/Dにとどまっている。これは1991年のソ連邦崩壊による経済混乱の影響である。その後ロシアの生産力は回復し2010年には再び1千万B/Dを超え、米国およびサウジアラビアをしのいで世界一の石油生産国に戻っている。しかし2010年代の生産の伸びは低く、2019年の生産量は1,150万B/Dにとどまり、3カ国の中では最も少なくなり、米国との差は大きく開いている。
中国、イラン及びブラジル各国の1990年、2000年、2010年及び2019年の生産量の推移を見ると、中国は278万B/D(1990年)→326万B/D(2000年)→408万B/D(2010年)→384万B/D(2019年)、イランは327万B/D(1990年)→385万B/D(2000年)→442万B/D(2010年)→354万B/D(2019年)、ブラジルは65万B/D(1990年)→128万B/D(2000年)→213万B/D(2010年)→288万B/D(2019年)である。
中国とイランはほぼ同じような動きを示しており、両国とも2019年の生産量が2010年を下回っている点でも共通している。しかし減少の理由は全く異なっている。中国の場合はシェール開発を含め新規油田の発見が進まないためであり、イランは世界第4位の可採埋蔵量があるにもかかわらず(本編第1章参照)、米国の経済制裁で生産が大きく制約されているためである。ブラジルはここで取り上げた6カ国の中では生産量は最も少ないが、増加率では他の5カ国を圧倒している。即ち1990年から2000年の10年間で生産は2倍に伸び、また1990年と2019年を比較すると4.4倍に増加している。
(石油篇生産量完)
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