うちで今流行っているのはお餅。
一大決心して買った米国製のタイガー餅つき機が、使い始めて6回目に動かなくなり、迷いに迷って買い換えた日本製の象印餅つき機を変圧器につないで使っている。
それからはずっと餅を切らしたことがない。
焼き海苔で巻いてご飯代わりに食べていたら、わたしはみるみる太ったが、ガリガリの夫はまるで変化がない。
そこで泣く泣くわたしだけ、主食を黒豆玄米ご飯に戻した。
つい先ほども、つきたてホヤホヤのお餅で、これまたおやつ用に炊いておいた粒あんにアーモンドとパンプキンシードを混ぜたのを包んだ巨大おはぎモドキを、お彼岸は過ぎたけど〜、などと言いながら、夫は美味しそうにパクついている。
毎朝飲んでいる手前味噌をお湯に溶いただけの味噌汁に欠かせないのが刻みネギ。
なのでオーガニックのネギを買うのだけれど、なぜかこちらのネギはみな、先っぽがちょん切られている。
たまにその切り口から細かい砂が入っていることがあるので、洗い流すのに一手間かかる。
ほうれん草のナムル、ほぼ冬眠状態だったこの4ヶ月の間に何回も食卓に上った。
2週間に一度の割合で買い出しに行くコリアンマーケットで、元気そうなほうれん草が売られているのに偶然出くわしたら、ついニヤニヤしてしまう。
今年でこの家に移り住んでから丸12年になるのだけど、毎年中途半端に手入れをしたり全くしなかったりで、垣根がとんでもない状態になってしまった。
なのでとうとう決心して、今回はちゃんと作業をすることにした。
この玄関に続く階段も、もうだめだ危険だ限界だと思いながら、工事を頼める業者が見つからず、ずっとドキドキヒヤヒヤしながら過ごしていたが、昨日の3月末日にようやくやってくれる人が見つかりホッと一安心。
ちなみにこの作業中、しゃがんだまま変な角度で雑木を切り落とそうとしていた夫が、電動ノコギリで左手の人差し指の第一関節周りをザックリ切ってしまった。
悲痛な叫び声を聞いて振り向くと、夫が腰をかがめたまま家の中に入って行くのが見えて、なぜかすごく恐ろしくなって、彼の名前を大声で連呼しながら追いかけた。
台所の洗い場で身をガタガタ震わせながら、切れた部分を水洗いしたり消毒したりしている夫が、そばに近づこうとするわたしに「この傷口は見ない方がいい」と言う。
どれだけ強く押さえても血はいっこうに止まらず、傷口に当てたペーパータオルがみるみる赤く染まっていく。
右手の指先が白くなるほど強く握りながら、だけど夫はずっと小刻みに震えていた。
しばらく経つと、やっと出血の勢いが弱まってきた。
病院で縫ってもらった方が絶対いいって。
ああでも日曜だと救急になってしまうなあ…。
などとうだうだ思案していたら、夫はどこからかカプセル入りの漢方薬を持ってきて、この中身を傷口にかけてくれと言う。
いや、ここまで深く、それも指の周りをぐるりと切ってしまってるんやから病院ちゃう?と再度言いたいのを堪えて、言われた通りカプセルを割り、パックリと開いた部分に焦げ茶色の粉をふりかけた。
かけた粉がすぐに血と混じってしまうので、別のカプセルを割ってまたかけた。
結局治療はそれだけ。
傷はみるみる良くなり、痛みも消えて、翌日にはビニール手袋をはめて炊事までやっていた。
実はこの漢方の粉、ベトナム戦争中に、ベトナムの兵士が傷を負った際に治療に使われていたらしい。
止血と痛み止めに非常によく効き、抗菌の力が強力なのだそうだ。
恐るべし漢方…。
あと2週間ほどで誕生日が来る。
去年の誕生日祝いにと、夫と息子たちが共同で買ってくれた桜の苗のつぼみが、ポツポツとふくらんできた。
この子の葉っぱは病気にかかっていて、昨年は毎日ずいぶんと世話が焼けたのだけど、果たして今年はどうなるだろう…。
今日明日の夜はまた、気温が0度まで下がってしまうらしい。
それでも空気の粒には春のぼんやりとした優しさが混じっているから、あまり気にならない。
いつも一等先に姿を見せてくれるクロッカス。
根雪の下でずっと辛抱していたクリスマスローズ。
春は黄色から。
今年に入ってから急に、6歳以下の子どもが6人、20代の男性が2人、新しい生徒が増えた。
彼らは幼過ぎる、あるいは教えて間もないという理由で、うちに来てもらって直接教えている。
やっぱり直に教えられるのはいいなと思う反面、マスクを付けていなくてはならないことや空気感染の心配や消毒の手間を考えると、コロナ禍以前の世界が懐かしくなる。
夫は今日ワクチンを打ちに出かけた。
ジョンソン&ジョンソンのワクチンがとりあえず今のところは一番オーソドックスなタイプだと聞いているので、どうしても打たなければならなくなったらそれを選ぼうと思っている。
もう多分、少なくとも3割以上の人たちが、ワクチンの接種を終えた。
年齢制限も今月からは高校生以下にも解放される。
ファイザー、メデルナ、ジョンソン&ジョンソン…。
学校に通っている数すくない生徒たちは、週に1度(多くて週に2度)、無料のPCR検査を校内で受けている。
ワクチン接種の年齢が下がると、多分ほとんどの人が接種を済ませるだろう。
そんな中で接種を拒み続けることがいつまでできるのか、そんなことをふと考える。
もちろん無理強いはされないし、受ける受けないは個人の自由だし、どう決めようが誰にも文句は言われない。
新型コロナウイルスに感染したからといって、非難も差別もされないし、治ればこれまで通りの生活に戻ることができる。
だけど職業が職業だけに、実に悩ましいのだなあこれが…。