わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉の話 13 (乳濁釉、マット釉)

2010-03-13 22:55:21 | 釉薬の調合と釉を掛ける
透明釉と同じ様に、乳濁釉や、マット釉(艶消し釉)も、人気のある釉です。

透明釉でない、これらの釉を、失透釉と呼びます。失透には、釉のガラスの中に、微細な結晶が、

浮遊している物(マット釉)と、分相と呼ばれる、二つのタイプ(乳濁釉)が有ります。

その調合について、述べたいと思います。

1) ゼーゲル式で、「アルミナ」:「シリカ」は、透明釉で1:8~12モル、マット釉で、1:3~5モル

   乳濁釉で、1:12~14モル程度です。但し 「シリカ」を増やし過ぎると、不溶性のマット釉に

   成ります。

2) 乳濁釉を作る

  ゼーゲル式より、アルカリ成分より、シリカ成分を、増やせば、乳濁する事が、判ります。

 ① 分相(ぶんそう): 釉の中の、ガラス成分が、変化を起し、ガラスでありながら、互いに熔けて

   混ざり合わ無い、現象を分相といいます、その為失透する物を、乳濁と呼んでいます。

 ② 珪石、マグネサイト、タルク(滑石)、藁灰、土灰、骨灰、酸化チタンなどを添加する。

   分相を起す、添加物は、上記の物質です。

 ③ 乳濁剤である、ジルコン(酸化ジルコニウム、ジルコニア)、酸化錫、亜鉛華を、添加する。

   上記原料は、釉に溶け込み、冷却と共に、結晶を生成し、乳濁します。

 ④ 乳濁釉には、藁白釉(石灰系、灰系)、白萩釉、卯(鵜)の斑(ふ)釉、乳白釉が有ります。

  調合例 藁白釉 :) 三雲長石20、 土灰30、 藁灰50  (重量比)

           ) 三雲長石30、 藁灰30、 石灰石 40

     卯の斑 : ) 土灰30、   籾灰50、 長石 20

 3) マット(艶消し)釉を作る

  上記2)-③の乳濁剤は、少量ですと、結晶化せず、乳濁しますが、量が増えたり、焼成の仕方に

  より、微細な結晶が発生し、光が、結晶に当り、乱反射し、マット釉薬に成ります。

  粒子が細かく、屈折率も高く、反射が大きい程、白さが増します。

  ・ 光沢の無い釉を、マット釉と言いますが、光沢の無い、透明マットも、存在します。

  ① 良いマットを出す為には、窯の冷やし方(冷まし方)に、関係します。

   「ゆっくり」と、冷やす方が、良いマットに成ります。小さな窯や、壁の薄い窯では、冷却速度が

   早く、結晶が出来難いです。又、釉の厚みも、厚い方が、良い結果が出易いです。

  ② 微細な結晶が、大きく成長した物が、結晶釉に成りますが、後日述べる予定です。

  ③ マット釉には、カオリンマット、藁灰マット、チタンマット、タルクマット、亜鉛マット
 
    リチウムマット、バリウムマットなど、添加物によって、名前が付けられています。

    又、色相から、白マット、黒マット、クリームマット、鉄マット、白鳳マットと呼ばれる、マット釉が

    市販されています。

   調合例1 タルク(滑石)マット釉(重量比、外割り)Sk-9(1280℃)

     ) 長石30、 珪石50、 カオリン20の基礎釉に、タルクを10~50

     ) 長石50、石灰石50の基礎釉に、タルク20~50

     ) 長石50、滑石50の基礎釉に、タルク30~80

   調合例2 SK-8(1250℃)釉

     ) 長石30、珪石17、石灰石23、ロウ石30

     ) 長石55、いす灰30、藁灰10、酸化錫10

     ) 長石30、いす灰30、藁灰40、酸化錫5

   調合例3 SK-4a(1160℃)釉

     ) 長石45.5 石灰石20.4 カオリン21.1 亜鉛華9.9 酸化錫3.1

  ③ 不熔性のマットについて、

    一般のマット釉は、材料が十分熔けています。しかし、「シリカ」成分が多過ぎると、十分熔けず、

    マット化します。その際、釉の表面は、「ザラツいた」感じに成りますので、区別できます。

 以下次回に続きます。  

 乳濁釉 マット釉  
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