わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉の話 24 (銅釉1辰砂釉1)

2010-03-28 22:06:37 | 釉薬の調合と釉を掛ける
銅を使った釉について、お話します。

銅釉は、緑色(酸化焼成)又は、赤い色、ピンクや紫色(還元焼成)を出すのに、使いますが、

炎の状態によって、窯変が起こり易く、変化に富む釉と言えます。

銅は一般に、酸化銅や、炭酸銅を使用します。

1) 辰砂(しんしゃ)釉

   陶芸で辰砂と言うのは、基礎釉に銅を添加し、還元焼成で、朱紅色に発色する事を、言います。

   (本来の辰砂は、天然に産する、硫化水銀「HgS」の事です。)

   辰砂釉には、その色の違いによって、名前が付けられ、牛血紅(ぎゅうけつこう)、

   火焔紅(かえんこう)、桃花紅(とうかこう)が、有名です。

 牛血紅: 辰砂の代表的な、派手な色で、人造ルビーや、生血の色をしています。

     (鶏血紅とも言われます)

 火焔紅: 藍紫色が、煙の様に、真赤な釉の上に掛かり、まるで燃え盛る炎の様に、発色します。

      この煙の掛かった所は、白紫や、青味を帯びたりしています。

 桃花紅: 酸化第一銅の、赤を保ち、穏やかな、紅色をした色で、海棠紅(かいどうこう)とも

      言われます。還元焼成後、僅かに、酸化焼成し、発色させます。


 ① 青緑色の酸化第二銅(CuO)が還元により、酸化第一銅(Cu2O)となり、美しい赤に変化します。

   更に、還元が強くなると、金属銅(Cu)に成り、黄色味を帯びてきます。

 ② 紅色を出す為の、銅の量は、釉の0.3~0.5%程度と、少量で済みます。

   量が多くなると、色が濁ってきます。但し、銅は高温に成ると、どんどん揮発しますので、
 
   その分、多く入れる事に成ります。10%程度に成ると、黒色に成ってきます。

 ③ 銅及びその酸化物は、高温で容易に、揮発して消滅してしまいます。揮発を抑える為、

   釉を二重掛けする方法が、取られます。

   即ち、下層には、酸化銅と酸化錫を、添加した釉を使い、上層に、酸化銅を含まない釉をかけます。

   (尚、酸化錫は、高温で還元作用を、助けます。)

   ・ 銅の揮発を、抑える方法として、「さや鉢」に入れて、焼く方法が有ります。

     その際、「サヤ鉢」内に、1~2%の銅を含む釉を、塗ると良いと、言われています。

   ・ 釉中の酸化鉄は、辰砂釉を、紫色に発色させます。灰釉の場合には、灰の中に、鉄分があると、

     紫色に成りますから、注意します。又、灰の中の、他の成分も、釉の色に、変化を与えます。

     バリウムを添加すると、紫色が、より強く出ます。

 ④ 辰砂の赤い色を出すには、素地が白い物が、綺麗に発色します。

   出来るだけ、白い土を、使います。

 ⑤ 辰砂釉は、基本は還元で焼成しますが、強い還元炎ではなく、中性炎に近い、還元炎が良いと、

   言う研究も有ります。

 ⑥ 一般に、釉は良く熔かします。熔け過ぎると、釉が流れ、ムラに成りますが、やや熔け過ぎの状態

   に成ると、釉の粘性を弱くし、発色が良くなると、言われています。

 ⑦ 焼成後の、窯の冷やし方も、影響します。微結晶が生成する温度(700℃)で、

   一定時間、保持させます。

次回は、辰砂釉の調合例について、述べます。

 辰砂釉

 
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